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「ねぇふっか、消しゴムない?」
俺は同じクラスの深澤辰哉に声をかけた。
「阿部ちゃん忘れたの?」
ふっかはそう俺に聞くと、筆箱を探り始めた。俺は「そう」と一言だけ言うと、ふっかの手元を見つめた。ふっかは消しゴムを1つ机の上に置くと、また探り始めた。
「あー、1個しかねぇわ」
ふっかは俺を見上げてそう答えた。胸より少し高い位置で手を合わせて謝る彼を見て、俺には罪悪感だけ生まれた。
「大丈夫!ふっかは悪くないから!ありがとう。」
「高見さんに聞いてみたら?」
隣だし。と言う彼には悪意や冷やかしの心はひとつも籠っていないことだけが分かった。だけど俺は隣の席の高見さんが好き。誰にも言ってないし、本人にもバレていない。だからと言って、好きな人に消しゴムを借りられるほどの勇気が俺にはない。
それでも、俺が借りられる人は他に高見さんくらいしかいないし、もう時間も少ないため、ほかのクラスに行くには時間が無い。
「…うん」
ふっかには申し訳ないけど、少し素っ気なく返事をし、自分の席に座った。隣に座って本を読んでいる高見さんの横顔を意識して見てしまう。
「…なんか付いてる?」
「あ、ううん。大丈夫だよ」
見つめすぎてしまった。あと5分で授業は始まるし、もう席に着いてしまった。
どうしよう、と悩んでいると、授業が始まってしまった。