テラーノベル
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仙崎ひとみ/九龍
紙吹みつ葉
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Mバーガーに入り、二人はコーヒーを買って二階の席に座った。
「深夜までメールって、仲良いんだね」
席に座るなり、彩が嬉しそうに冷やかす。
「そんな、たまたまだよ。始めるのが遅かったからそうなっただけだよ」
「テレない、テレない。良くある事よね」
「彩も和也と良くあるの?」
拓馬は平静を装って聞く。
「私達はメールじゃなく電話だけどね。切る瞬間が一番寂しくて、つい伸ばしてしまうの」
彩はフフッと笑いながら話す。
「彩は和也のどんなところが好きなの?」
「えー、ストレートな質問ね。……そうだなあ、言葉にするのは難しいけど……」
難しいと言いながらも、彩は待ってましたとばかりに言葉を連ねる。やれ、優しいとか、バスケが上手いとか、勉強だけでなく、凄く頭が良いとか。拓馬が相槌を打ちながら聞いているので、気を良くしたのか、エピソードを含めたノロケ話まで始めた。
彩の和也への想いが想像以上に強かった事に驚いたが、拓馬はそれよりも、彩が昔はこんな風に笑っていたんだと感じた。陰りが一遍も無い、純真無垢な笑顔。彩は今、真っただ中の青春を謳歌していた。
――彩に妹が居たとしたら、こんな女の子だったんだろうか。もし、目の前の彩が義理の妹だったら、俺はこの笑顔を壊さないように見守っていただろうな……。
「じゃあ、今度は拓馬君の番ね。明菜のどこが好きなの?」
急にそう聞かれて、拓馬は言葉につまる。明菜は良い女性だと思うが、恋愛対象として見た事は無く、どこが好きかと聞かれてもすぐには言葉が出ない。
「あんな完璧な女の子のどこがって言えない。全部だよ全部」
「そんなのズルいよ」
あまり明菜との関係をアピールするのは得策ではないので、拓馬は今日の本題に移る事にした。
「それよりも、最近占いにハマってるんだ。ちょっと試させてくれない?」
「へえー、面白そう。占ってみて」
「じゃあ、左手を出してくれる」
拓馬は彩が占い好きなのを知っていたので、必ず乗ってくると思っていた。拓馬は本当に彩の手相を占うつもりではなく、これも作戦の一部なのだ。
「うーん、あなたは嘘が吐けないタイプですね」
拓馬は彩の左手を見つめながら。わざと雰囲気を出して言う。
「あっ、当たってる」
「それから、意外と映画や小説は、ホラーやサスペンスが好きですね?」
「ええっ、凄い! そんな事もわかるの?」
彩は驚くが、三年も付き合っていたのだから、拓馬にとっては朝飯前だった。
「あなたは今、恋愛中ですね?」
「はい……」
すっかり拓馬の占いを信じている彩が返事をする。
「ああっ! あなたの前に、今の彼氏よりもっと相性の良い相手が現れると出ている!」
「ええっ!」
「その相手は、あなたと趣味や考え方が同じで、一緒に居て癒される最適な男性になるでしょう」
「ええっ、それは違う! 間違ってるよ。絶対におかしい!」
彩は立ち上がって拓馬に抗議する。
「ごめん、ごめん。手相に出ていた事を言っただけだから気にしないでよ」
そう言われて、泣きそうな顔になりながらも、彩は椅子に座る。
「占いなんて何から何まで当たるものじゃないから、心配しなくても良いよ」
「ありがとう……」
拓馬がなだめても、まだ、彩はショックが治まらないようだった。
「彩と和也はお似合いの二人だと俺は思うよ」
二人の事を持ち上げるのに抵抗はあるが、拓馬は彩の悲しそうな顔を見ていられずにフォローした。
「明菜が拓馬君と付き合ったのもわかるな……」
気持ちが落ち着いてきた彩が呟く。
「えっ?」
「だって、拓馬君って大人っぽいよね」
「ええ、そうかな……」
――意識はしていなかったが、実際大人の俺は高校生の彩達からみればそう見えるのだろう。
「そうだよ。一言一言が落ち着いていて、凄くそう思う。明菜も私達の中では大人っぽい方だから、凄くお似合いだよ」
「そうか、ありがとう」
拓馬は作り笑顔で応えた。
「明菜の相手が拓馬君で良かった」
すっかり気持ちが落ち着いた彩が笑顔になって言う。
「まだ二回しか会っていないのに、そんなに信用して良いのか?」
「大丈夫! 私、人を見る目には自信があるの」
彩はそう言って胸を張った。
「私達四人で、このまま仲良く大人になれたら良いな……。きっと毎日が楽しいよ……」
「ああ、そうだろうな……」
「そうだ! 子供は同級生になるように産もうよ。同性だったら、親友に。異性だったら、許嫁に。お互いの両親が親友だなんて、子供達も嬉しいと思うよ」
「そんな、漫画みたいだな……」
夢のような話に夢中になる彩を拓馬は微笑ましく見ている。
「ごめーん、遅くなっ……」
その時、店の二階にやって来た明菜は拓馬の姿を見て固まる。
「あっ、明菜」
拓馬が明菜の姿を見て、軽く手を上げる。明菜は青の半袖オフショルダーに白いミニキュロットスカート、彩と比べて少し大人っぽい雰囲気の服装だった。
「遅いよ、明菜。でも、拓馬君といっぱい話せたから許してあげるけど」
「ごめんね、彩。そうだ、拓馬君も一緒に買い物行こうよ。良いでしょ? 彩」
「もちろん良いよ」
彩はそう言って階段に向かう。
「えっ? 俺も?」
予定では、ここで拓馬は別れる筈だったので、明菜の考えがわからなくなった。
「もう、そんな恰好で明日も行くつもり?」
明菜が声を潜めて、少し怒ったようにそう言った。
「えっ? 駄目か?」
今日は家にあった服を適当に選んできたのだが、元々お洒落に興味の無い拓馬は、明菜の目には野暮ったく映っていた。
「約束のお金あるでしょ? あれはもう良いから、あなたの服を買うのに使ってよ」
今日、彩と二人で会う作戦のお礼として、買い物のお金の半分を拓馬が負担する約束になっていたのだ。
「ありがとう、助かるよ」
こうして拓馬は、明菜と彩に明日着て行く服を選んで貰う事となった。
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