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外の世界ではすでに朝の光が差し込んでいるはずなのに、校舎の中はなお夜のままだった。
理沙は観察記録のノートを抱えながら、旧校舎へと足を運んだ。
「ここに……“影の住人”の秘密があるはず」
階段を下りるごとに、空気は冷たく、湿った匂いが濃くなる。
やがて、薄暗い地下室に辿り着いた。そこには長机が並び、古びた日誌や鍵の束、そして壊れた人形が散乱していた。
机の上のランプに火が灯る。誰かが先に待っていたかのように。
「……やっぱり来たんだね、理沙」
声の主は、黒い影に覆われた少女の姿だった。
だがその影の奥からは、どこか見覚えのある面影が覗いていた。
「あなた……真綾?」
理沙の手からノートが落ちる。
少女の影は淡く揺らぎ、確かに深沢真綾の顔を映し出した。
「ごめんね。犠牲になったのは、私じゃなかったみたい」
「……どういうこと?」
「この学校は“生贄”を食べて成り立ってる。外に出られるのは一時的で、結局は誰かが“影”になるまで終わらない。
そして、今回の犠牲者は……あなた」
理沙の胸を冷たい感覚が突き抜ける。
「じゃあ、私は最初から……」
真綾の瞳がわずかに揺れた。
「でも、あなたは特別。ここを終わらせる可能性を持ってる。“反逆者”って呼ばれる存在」
その瞬間、地下室の壁が軋み、鉄の扉がせり上がってきた。
中から、鎖に繋がれた“何か”が蠢いている。
真綾が囁いた。
「……逃げて。あれは“管理者”の試練。勝てなければ、完全に影に取り込まれる」
鎖が弾ける音とともに、闇そのものが地下室にあふれ出す。
理沙は震える手で懐中電灯を構えた。
「……逃げるだけじゃない。私は必ず、このゲームを終わらせる!」
光と闇がぶつかり合い、地下室は轟音に包まれた。