今、目の前で、走り回る夢。
昼間の真剣な顔が嘘のようで。
死が近づく音すら聞こえない。
なのに彼女の体は、刻々と崩れ始めている。
天魔として生まれた時点でこうなる運命だったのかもしれない。
あいつは、夢は見た目より長生きしている。9歳くらいの幼い見た目だが、中身は半世紀くらい生きている。
俺よりも前にこの世界に生まれた。
天魔となったのは40年前。
追い出されてから40年。
ギィと出会ってから5年。
夢は35年間、独りで生きていた。
そういえば、35年間あいつはなにをして生きてきたんだ?
夢「リムル、どうしたの?」
リムル「いや、お前天魔になってからギィに出会うまでの時間、何して生きてきたんだ?」
夢「ギィに会うまで?」
手に持った焼きそばと、かき氷を落とさないよう抱えながら「う〜ん」と声を出しながら悩む。
祭りの騒がしさと、独特のオレンジ色光で今にも消えてしまいそうだ。
夢「あんまり覚えてない。多分、ギィの方がよく知ってるよ」
夢「そういえばもうすぐワルプルギスだよね?その時に聞いてみたら?」
リムル「なんでお前と会う前のことをギィが知ってんだよ!!」
夢「ん〜、なんとなく?」
夢「あっ、かき氷溶けてきた!!リムル!リムル!」
リムル「はいはい、ルミナスもう戻ったかな」
夢「ギィと出会う前…か」
ルミナス「夢よ」
夢「ん?」
ルミナス「それを食い終わったら風呂に行こう」
夢「そういえばお風呂まだだった!」
リムル「大浴場に行くのか?」
ルミナス「個室の風呂に行こうと思ってな。」
リムル「ルミナスの部屋なら風呂は広かったと思うから、個室でも十分だな」
夢「私も一緒に行くの?」
ルミナス「妾と風呂に入るのは嫌か ?」
夢「入るー!」
ミリムもそうだけど、夢も50年も生きてる割に子供っぽいよな…
あれから数日後。
頭が…痛い。体が…だるい。
苦しい。
溢れ出る魔素が、魔力が抑えられない。
誰か…誰か。
???「 彼女は魔力と、魔素を多く持っているのだろう。」
???『な、なんと…』
???「このままではいずれ暴走し、我が一族は滅んでしまう…」
???『…早急に追い出さなければ。』
???「…よいのですか?」
???『魔素を持った者など私達の子では無い』
???「殺してしまおう。」
???「追い出すよりも手っ取り早いだろう。」
???「誰が殺すのですか?!!」
???「いくら魔力を持つものとはいえど、赤子を殺したくはありません!!」
???「……」
???『やはり、追い出すのが賢明かと。』
???「しかし…。」
寒い。お腹が減った。痛い。寂しい。
生ゴミの匂いとネズミ、子供を金としか見ていない大人達、そしてボロボロの子供。そんな場所で私は生きていた。
そんな状況だったからか、その場所で生きている子達は皆協力していた。
私もその中の一人だった。
ゴミの中を漁り、時に盗み、大人から逃げた。
そんなある日だった。
冬になり、皆凍え体力も尽きてきた。
私は店に盗みに入った。
生きる為、食べ物を盗んだ。
店主は追いかけてくるが途中で転んだ。走って、走って皆の元に帰る。
すると。
誰もいない。あるのは破けた服と、暴れた後。そして血。
皆、大人達に連れ去られたのだ。
それから記憶が無い。
気がつけば、ふかふかのベッドに寝かされていた。
顔をあげると綺麗な青い髪の女性が立っていた。
???「あら、起きられたのですね」
「あなた、だれ。」「みんな、どこ」「ここどこ」言葉を発した。
カタコトの言葉を。
聞かなきゃいけない。助けなきゃいけない。
そうすると、女性は言った。
???「ここは魔王ギィ様の領地。もう、なにも心配することはありませんよ。」
そう言った。
みんなは?みんなはどこなの?
私はなんでここにいるの?
なんで魔王様の領地にいるの?
そう言いたかった。
でも私の頭と口ではたくさんは喋れなかった。
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