私はいつも、「優等生」の仮面を付けて過ごしている。そして、その事は私以外知らない。
しかし、1人だけ。たった1人だけ、そんな私を
見て怯える子がいる。
彼女の名前は、「鳳えむ」。
私と同じ宮益坂女子学園に通っている、私の後輩だ。
彼女は、いつも「わんだほーい!」という言葉を
よく言っている。その意味を聞いてみたら、
「こんにちは。」や「ありがとう」など様々な意味があるのだと言う。
私には、よく分からないけど。
彼女は、いつも笑顔で、予測不可能な行動をする。
彼女と会う時は大抵、彼女が廊下を走っている時だ。
それを私が注意する。もはや、当たり前と化した光景になっている気がする。
そして、今日も廊下を走っている彼女に会う。
私は、いつも通り注意をする、はずだった。
「朝比奈センパーイッ!」ギュッ!
「お、鳳さん? どうしたの?」
「朝比奈先輩、少し辛そうな顔をしていたので。
何か、あったんですか?」
「え?」
私が辛そうな顔をしていた? 何故?
もしそうだとしても、彼女は何故気づいたのだろう。
やっぱりだ。いつもそう。彼女には、鳳さんには、
私の、「笑顔で優しい優等生」の仮面が、意味を成さない。
そうでなければ、いつも私に怯えている意味が
わからない。
確かに、最近彼女を見かける度に、彼女の「笑顔」を
見る度にこう、胸が締め付けられるような、他の人からしたら「辛い」ような思いになる。
彼女を見る度に、「不思議な感覚」を覚える。
もし、この感覚が何かの感情だとするのであれば、
何という名の感情なのだろうか。
今の私には、分からない。
考えている内に、私は無意識に鳳さんを抱きしめていた。
彼女は少し驚いたようだが、そっと優しく私を
抱きしめてくれた。
「鳳さん、ありがとう。少し,スッキリ出来たよ。」
「少しでも、朝比奈先輩のお役に立てたようで
良かったです!」
「鳳さん、もし良かったら今日、一緒にお弁当
食べない?」
「え、良いんですか⁉︎ 朝比奈先輩と今日、一緒に
お弁当食べれるなんて、わんだほーい!」
「あ、でも、お友達とか大丈夫?」
「多分大丈夫だと思います! 聞いてきますね!」
きっと、鳳さんと一緒に居たら,私が感情を
取り戻すきっかけが見つかる気がする。
不意に私は、そんな事を思った。
コメント
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構成が凄く素敵です...✨ 続き楽しみにしてます!わんだほーい☆