大人になった世界線
侑
夏が過ぎ秋が来た。一際寒い日だった。手に取ったのは綺麗な文字で書かれた結婚式への招待状。そこには北信介とその相手の名前が書いてあった。高校時代よくお世話になった人だ。なんなら今もお世話になっている。”ちゃんと”というお米が俺の筋肉をつくっているのだ。そして大好きな人でもある。愛しているのだ。
少し見つめた後封筒に手紙も一緒に入っていることに気がついた。
北「侑へ。 最近忙しいか?時間があったらでええけど来てくれたら嬉しい。」
この人は俺が世界をまたいで活躍してるのを知っている。だからこそのいたわるようなメッセージなのだろう。愛する人の結婚式なのだ。行かないわけにはいかない。ただ胸が踊らないだけだ。この気持ちは絶対に言ってはいけない。あくまでも先輩と後輩。それを崩せばもう二度と彼に会える気がしなかったから。
プルルルル
サムからの電話だった。こいつは俺の気持ちを知っている。何故か分からないが知られていたのだ。治から言わせればバレバレだったそう。
治「明日、行くんか?」
侑「おん。先輩やからな。」
治「遅刻だけはすんなよ。」
侑「わかっとるわ。」
そこで通話は終わった。治は何も言ってこなかった。あいつなりの”気遣い”だったのだろう。今はそれがありがたく感じた。声がボロボロだったのだ。
夜の月明かりが俺の顔を濡らしていた。式は1週間後。相変わらず心は沈んだままだろう。きっとこの心はいつまでも報われない。1週間後がとても短く感じた。
続きます
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