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投稿頻度多くて助かります✨ ばうてる最高!!!
新学期の頃と比べててるとは学校の生活に段々慣れてきていた。勉強は中学の頃よりも難しくて着いていくので精一杯のところはある。成績は大体クラス全員のちょうど平均くらいで油断しているとすぐに順位が落ちてしまうだろう。相変わらず人見知りではあるが、クラスの子達とは数人と挨拶を交わしたり休み時間の合間は世間話する時もある。また、隣のクラスにはまひとくんがちょこちょこ顔を出してきてくれて昼食は一緒に摂ることが多い。
一方僕の隣の席のばぁうくんとは新学期の頃から特にこれといった接触はない。休み時間は席で寝ているか(授業中も寝てることが多い)すぐ教室を出て何処かに行ってしまうかで、クラスの子達と会話しているところもほぼ見ない。クラスの子の何人かは近寄りがたいや怖いという声を聞いていて、でも一部の女子生徒からはカッコいいと隠れて囁かれている。
授業も朝は見かけたのに夕方の授業の顔を出さなかったり遅刻を堂々として二限目、三限目あたりから登校してくることもあった。去年ばぁうくんが留年してしまったのはこれらの理由で納得が出来た。
僕も何度か話しかけようと試みたが、土壇場で勇気が出なくなってしまう。幼い頃の後悔と全く同じ現象が起きてしまっていて駄目だな、とは思いつつ今日も一言も話せなかった。
「てるちゃん?何ボーっとしてんの?」
「へ?別に?」
「なんか最近てるちゃんぼーっとしてること多いけど体調でも悪い?」
「ううん、そんなことないよ、まひちゃん」
今はちょうどお昼休憩の真っ只中でまひちゃんと僕で向かい合わせに座った状態だ。僕は食べ終わってて一方まひちゃんはずーっと何か食べてる。今はスナック菓子の袋を開けてポリポリと余裕で食べていた。
「まひちゃん食べすぎ!」
「えー!だってこのお菓子新作で出てさすっごく美味しいんだよー!?てるちゃんも食べてみて!」
「僕、もうお腹いっぱいだよ…」
「えー?美味しいのに…あ!今日の放課後、駅の近くにあるジェラート屋さん行きたい!」
「……」
「ね?行こー?」
目を輝かせて誘ってくるまひちゃんを断れるはずもなく了承した。もしかしたらまひちゃんは隠れ大食いなのかもしれない。と、てるとは密かに思っていた。
「おーい、今日の日直は誰だ?…てるとか?」
唐突に先生に呼ばれて返事をする。
「すまないが、この教材を片付けに行ってくれないか?」
「あ、はい。分かりました。」
「片付けだるいねー。手伝おうか?」
「ううん、大丈夫!すぐ片付けてくるから!まひちゃんはお菓子でも食べて待っててよ」
「分かったー!」
まひとに手を振って別れると先生から受け取った教材を持って教室を出る。
廊下では休み時間中なので生徒たちが楽しそうな会話や男子たちがふざけて追いかけっこをして先生に注意されたりと騒がしい日常だった。しばらく歩いて行き目的の教室の前には人気はなく静まり帰っていた。扉を開けた教材を元の場所に返していると、奥の倉庫の部屋から物音が聞こえた様な気がした。
近づいて見ると物音以外に人の声も段々と聞こえてきた。ドアの窓を見ると電気は点いておらず薄暗い部屋の中から、女の子の声が漏れている。近づくとドアの隙間が少し開いていてそこから動く影を捉えてしまった。それは紛れもなく男女が行為をしている最中で、脱ぎ捨てられている服装を見る限り学校の生徒だった。
てるとは見なかったことにしようと音を立てずに教室を出ようとしたが、男子生徒の存在に気付いた時に衝撃を受けて体が硬直してしまった。
「(…ばぁう…くん……?)」
女子生徒と体を重ねていた人物はてるとの初恋であるばぁうだった。信じられない光景でショックを受けて後退りをすると運悪く何か物に体が当たってしまい音を立ててしまった。
「…ーっ!っちょっと!だれか、居るじゃん!」
「は?……別に、いいじゃん。」
「やだ!もう!」
女子生徒は床に放り投げられた衣服を素早く着用し軽く身なりを整えてそそくさと僕の隣を通り過ぎて教室を出て行ってしまった。取り残された2人の間に気まずい空気が流れそこ無言を断ち切ったのはばぁうだった。
「…まだ、なんか用?」
「……いや、」
「はぁ……。別に先生にチクってもいいよ」
「…は?」
「どうでもいいし。」
「別に、そんなんじゃ…」
「じゃあなに?次はお前が相手してくれんの?」
「何言って…」
「俺は別にお前でもいいよ」
不適な笑いを見せるが目は笑っていない。適当な態度。彼が言うどうでもいいと言う言葉通り自分のことや他人のことに対して心を開いていないような冷たい目だ。目の前に居るのは本当にあの優しかった彼?とてるとも疑う程、知らない彼がそこに居た。ばぁうがゆっくりこちらに近づき顔を触れられそうになり反射的に手で弾いた。
「…やる気ないなら出てって。」
「………きみ、最低だ…クソ野郎。」
僕はそう言い放って彼を残して教室を飛び出した。教室から遠く離れた所まで行き、てるとは人気を避けて裏庭へと隠れて蹲った。ショックを隠せずに声を殺して泣き続ける。子ども頃の優しい彼はずっと僕の中で笑いかけてくれていた。でも、もう君は居なくなっちゃったんだね。これからもずっと遠い存在になって他人になっていくんだね。
あの女子生徒と付き合ってるのかな?
ばぁうくんはカッコイイからモテるだろうな。
嗚呼ーー。。僕は、、まだ君のこと好きだったんだね。
僕はしばらくその場から動けなかった。
「あれ?ばぁうじゃん」
「……そま」
「お前は留年したんだから下の階だろ?まーたサボってんの?笑」
「…まぁ、そんなところ。」
「お前なぁ……ずっとそんな訳にもいかないだろ?分かってんだろ?」
「………」
「友達として言ってんだよ?俺は」
「………」
「こら!無視すんな!」
ぷりぷりと金髪の長身男が説教してきても話が入ってこなかった。ばぁうは思い詰めた表情でてるとが出ていた廊下の先を見つめ掌を強く握っていた。
続く。