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辰巳勇作が初めてパチンコ台の前に座ったのは高校三年の春だった。友人に誘われたことがきっかけだったが、当時は単なる遊びだと思っていた。
しかし、人生の転機は思いもよらない形で訪れる。大学受験に失敗した辰巳は浪人生活を送ることになった。家計の重荷になりたくないという思いから、アルバイトを増やしつつ自力での合格を目指していた。
そんな時に再会したのが、かつて誘ってくれた友人・健太だった。彼はすでに大学に合格しており、時間があるからと言って辰巳を連れ出した先は、以前とは違う大型店舗だった。
「ほら、これ新装開店のイベントだよ。一日30枚までタダ券配ってるぜ」
健太の勧めるままに入った台で、辰巳は信じられないような大当たりを引いた。五千円で始めた遊戯が、気づけば十万円を超えるジャックポットに繋がったのだ。
「おお、すげぇな辰巳!」
健太の称賛と周囲の羨望の眼差しに酔った辰巳は、その後も店に通い続けた。勉強する時間が徐々に減り、貯金も尽きていく。それでもパチンコの興奮からは逃れられなかった。
「もう一回だけ……次こそ大当たりが出れば、それでやめる」
この言葉を何十回も繰り返した末、辰巳はついに消費者金融から借り入れをするようになっていた。最初は数十万円。それが100万円を超え、一年後には優に1,000万円に達していた。
父からの仕送りも止まり、アルバイト代もすべて賭博資金に消えていく日々。大学入学を果たした健太からは連絡が途絶え、「浪人仲間」と自称していた人々とも疎遠になっていった。
孤独と焦燥の中、辰巳は借金取りに追われる毎日を送っていた。
そんなある日の夕暮れ、薄暗い飲み屋街で肩を叩かれた。
「お兄さん、困っているようですね」
振り向くと、スーツ姿の紳士が立っていた。見た目は誠実そうだが、どこか得体の知れない雰囲気を漂わせていた。
「大きな額を借金しているのでしょう? 私ならそれを解決できるかもしれませんよ」
怪しさ満載の申し出だが、辰巳に選択の余地はなかった。
「どうやって?」
「簡単ですよ。ギャンブルで勝つのです」
男はニヤリと笑った。
「ただし、通常のギャンブルではありません。サイコロによる生死を賭けたゲームです。あなたのような借金持ちが集まる地下組織が主催しています」
信じられなかった。そんな危険な賭博に誰が飛び込むというのか。しかし、既に法外な利息で首が回らない辰巳にとって、それは一種の救世主に見えた。
「どうですか? 参加資格がありますよ」
男の目が鋭く光った。
「あなたには才能がある。運よく勝てば借金は帳消しになります」
これが罠であることは理解していた。だが、背に腹は代えられない。辰巳は震える声で答えた。
「わかった。俺をそのゲームに連れて行ってくれ」
こうして、辰巳の命を賭けた闘いが始まったのであった。
コメント
1件
おお、第2話も重い展開だな…。お金に困った人間の心理描写がめちゃくちゃリアルで、特に「もう一回だけ」って後悔するやつ、わかる人にはわかるリアルさがあるわ。借金1,000万って具体的な数字が一気に絶望感を増してて、そこにスマートなスーツの男が登場する感じ、まさにダークファンタジーの入り口って雰囲気で痺れた。続きが気になるな。