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#ご本人様には関係ありません
𝕔𝕠𝕔𝕠
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「仁人…」
静まり返ったリビング。
灯りの落とされた空間に、勇人の声が響いた。いつの間に寝ていたのか、俺はソファの上に横たえていた体を反射的に強張らせた。
ずっしりと上に乗っかってくる相手の表情は、暗すぎて見えない。
「ごめん、、やっぱ我慢できない…」
「は、はやと!?…あっ」
耳元で聞こえた荒い息遣いとともに、無防備だった首筋にピリッとした微かな痛みが走った。水音をたてて何度も強く吸われる感覚に、身を捩って逃れようとするも、歴然とした体格差で簡単にねじ伏せられてしまう。両腕を頭上に纏められて、片腕だけで押さえられた。
「ちょ…、ぃやぁっ…」
「可愛い…、じんと…っ」
「ま、待って…、はやとっ、俺、できないって言った…!」
「あ、仁人の中気持ちいい…」
「えっ!?」
なんの衝撃も感じないままに勇人と俺は交わっていた。驚いて思わずその先を見れど、何かモヤのようなものがかかっていてよく見えなかった。
「あっ、あぁ…仁人…」
勇人の熱っぽい声だけが響く。
まるで俺の声は聞こえていないかのように、勇人は急速に自分の熱の解放に向かう。
「…っイク!」
短くそう告げられ、次の瞬間勇人の動きが止まったかと思うと、低いうめき声だけが聞こえてきた。押さえられていた腕が解放され、代わりに全体重が俺の上に預けられる。
訳がわからないままに、自分勝手に襲われてしまい、俺はしばらく反応を返すことができなかった。
汗ばんだ体、震える息遣い、勇人の匂いに、起き抜けの頭がクラクラと目眩を起こしている。
「仁人…好きだ…」
「ぁ…っ」
耳元で囁かれた瞬間、体に甘い痺れが走る。
その感覚に恐怖を覚えて、俺は咄嗟に大きな体を上からどかそうとがむしゃらに腕を突っ張った。しかしその腕はどこにも届くことなく空を切る。次の瞬間、どさっという衝撃が身体を襲った。
「………」
落ちた先は冷たいリビングの床。
カーテンから差し込む光で、明るくなり始めた朝の部屋、俺は状況が飲み込めずにしばしフリーズする。
周りには誰もおらず、寝た時のままのTシャツ、タイパンツは目立った乱れもなく、ただただじっとりと嫌な汗をかいた俺だけがいた。
「さいっあくだ…」
先程までの出来事が夢だったと気づいた時、俺は酷い自己嫌悪に陥った。
小さく言葉を漏らして、その場で頭を抱える。
昨夜、勇人のスマホに表示されたものを読んで、衝撃を受けたのは確かだった。
女の子のように、ただひたすら喘ぐ己の姿が数ページに亘って描かれていて、自分でも表現し難い感情に飲まれてしまった。
勇人が寝室に消えて以降も、目に飛び込んできた文字が脳内に浮かんでは消えを繰り返し、ソファの上で悶絶してはどんどんと思考が絡まってしまって、寝付けずにいた。
もしかしたら寝室の扉が開いてしまうのではないかと何度も目で確認しながら、いつの間にか緊張疲れで意識を失っていたらしい。
そんな意識下で寝てしまったらあんな夢を見てしまうのも無理はないと感じつつも、数時間前に自分から拒否したはずの行為に、夢の中の自分が拒絶しきれなかったことに愕然とした。
その時、短いバイブ音が鳴り、俺のスマホがメッセージを通知した。送り主は勇人。
『俺もう先に出たから、家出る時鍵はポストに入れておいて』
いつも通りのメッセージ。
ますます俺は居た堪れなくなってしまった。
「はぁぁぁぁー…、ごめん、、勇人…」
届くわけもないその言葉は、冷えた部屋に小さく消えていった。
最近5人で集まる機会が減ってきた。
「各々がそれぞれに独立しても仕事ができるレベルまで」
これは長年目指してきた目標でもあり、現状はありがたいことだと思っている。
一方で、今まで、いすぎなくらい一緒にいた反動で、少し顔を見ないだけで物足りなさや不安感が募ってしまうのも事実だ。
メンバーをテレビ越しに見る日々が続いている。
そこにはもちろん勇人も含まれていた。ドラマやバラエティに引っ張りだこの彼は、画面の奥で常にキラキラと輝いている。
「はぁ…」
あの日から調子が出ないでいる俺は、重い足取りでラジオの収録へ臨む。
いつもの時間、いつもの場所へ。
なんとか日常の自分を取り戻そうと、ルーティーンをなぞっていく。
見慣れた建物の前、涼しくなり始めた街の空気を吸い込んだ。まだ収録開始まではかなり時間がある。早くスタジオ入りはすれど、そこからはスタッフとだらだらと話しながらスロースタートで準備していくのが常だった。
ふと周りに目をやった時、見覚えのある姿を捉えた。
明るい茶髪に、長身、広い背中。
後ろ姿でも、見間違うわけない10年以上連れ添った相棒。あの日以来まともに話していなかった相手に、俺はそれまで抱えていた気まずさや憂鬱さを忘れて、つい声をかけようとした。
「はや…」
一歩を踏み出したとき、大きな体に隠されるようにもう一人いることに気がついた。見れば、女性が立っていた。女性にしてはスラリと長身なその人は、長い髪のせいで顔立ちはよく見えないものの、楽しそうに勇人と話している様子が伺えた。
(何かの打ち上げか?それにしては周りにスタッフらしい人がいないな…もしかして完全にプライベートか?)
いろいろな考えが頭を駆け巡る。
やけに近い距離の二人。
見てはいけないものを見ているような気分にさせられ、俺は動きを止めた。
ただの仕事仲間だけとは思えない、甘い空気感。
ふと、勇人の手が相手の肩に乗せられた。
慣れた手つき、とでも言うような自然なその行動に、しかし俺は言い得ぬ居心地の悪さが込み上がってくるのを感じていた。
ゆっくりと勇人の顔が相手に近づいていく。
「…っ」
その先を見続けることに耐えられなくなって、俺はくるりと踵を返した。その場から一刻でも早く離れようと足早にいつものビルに駆け込んだ。
乗り込んだエレベーターは幸い誰もいなくて、俺はどんっと壁にもたれかかった。
は?は?はぁ?
なんだあれ?
なにあれ?
なんであんなとこにいんの?あんな簡単な変装で、あんなとこで何してんの!?
頭を抑えながら、俺は思考を纏められずに目的の階まで運ばれる。
降りたエレベーターホールで、しばらく動けずにいた。
何回も何回も、脳内に今しがた見た二人の姿が蘇る。
え、あれ、やっぱりそういうことだよな?あいつ、俺のこと好きなんじゃないわけ?あれ誰?
いや、、やっぱり男なんかより女の子がいいよな?何もできない相手よりも、可愛く態度で示してくれる女の子の方が……
考えれば考えるほど、ズブズブと沼に落ちていく感覚。
同時に気分が落ち込んでいくのを止められないでいる。
あの日、俺が受け入れてたら違っていた?
行き着いた問いに、先日の淫夢も脳内再生を始めてしまい、俺はついにしゃがみ込んでしまった。
久しぶりの5人揃っての撮影日、俺はかなり緊張しながら現場に到着した。
どんな顔をして勇人に会えばいいか分からないでいた。
ガチャリと、通された楽屋の扉を開けると、勇人と太智が既に来ていた。
勇人と二人きりにならないで済んだことに少しの安堵と、悩みが解決できないという事実にもどかしさを感じる。
「…はよー」
出来るだけ普段通りを装って俺は座敷の隅に座り込んだ。
勇人と太智がそれに応えてくれる。
良かった、いつも通りやれそうだ。
しかし、落ち着いたのも束の間、次の瞬間、俺の耳に太智の衝撃的な発言が飛び込んできた。
「佐野さんさー、ちょっと言いづらいんだけどさー…、なんか、彼女できた?」
鞄からスマホを取り出そうとしていた俺は、太智の切り込んだ質問に思わず動きを止めてしまった。
「えっ…、えっと…なんで?」
否定も肯定もせず、しかし、勇人はちらりと気まずそうに俺を一瞬見た。
それだけで、俺は充分理解してしまった。思わず勇人から目を逸らして下を向いてしまう。
「なんかさー、こないだ一緒にいるの見かけちゃったんだよね、俺」
そうだったんだ。
太智もあの場面に遭遇していたことを知り、俺はいよいよこの場から逃げたい衝動に駆られた。
二人が一度きりの関係ではないことが分かってしまい、俺は目頭が熱くなった。
「あー、見ちゃった…?まぁ、ご飯とか何度か行ってるかなって感じ?」
本当に?ご飯だけか?いつからだよ?
とてもじゃないが信じられない。
込み上げる感情が目から落ちそうになるのを俺は必死に我慢する。
もう一度瞬きしたら溢れてしまうだろう。
ぎゅうっと鞄の取っ手をつかむ手に力が込もる。
「え、あ、そうなの?いい感じなんだー」
太智の声が楽屋に響く。
「え、吉田さんは知ってた?」
お願いだから、俺に振らないでくれ。
震える声が漏れてしまいそうで、俺は口をつぐむ。
代わりに、すくっと立ち上がり、足早に楽屋の扉に向かった。
「え、え??吉田さん?」
驚く太智の横を一瞬で通り過ぎた。
こんな顔や声を晒すくらいなら、意味不明だと思われてでもこの部屋から出ていってしまいたかった。
扉まであと数歩の距離で、しかし俺は勇人に腕を掴まれた。
驚いて振り返った瞬間、俺の目から涙がつっと落ちていった。
「っ!…どこ行くの」
一瞬勇人も驚いた表情を見せ、でも次の瞬間にはいつもの顔に戻っていた。
「仁人…も、見たの?」
その問いかけに、俺は素直に頷いてしまった。
ああ見たさ、見たよ。
お前と誰かさんが仲良さそうにしてるところをさ。お前、俺のこと好きとか言って、どういうつもりだったんだよ。
言ってやりたい言葉は、一つも口から出てこない。
代わりにぐっと睨み上げると、勇人は切なそうな表情になった。瞳の奥に、何か別の感情が見えた気がしたが、今の俺には読み取れなかった。
「今日さ、夜、俺ん家来れる…?」
勇人の言葉に、俺はまたも言葉なく頷いた。
コメント
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え、マ??3話まで一気に読んじゃったよ…😭💦 淫夢で拒否できない自分に自己嫌悪するとこから、勇人に彼女ぽい人がいるかもって疑心暗鬼になっちゃって、最後涙ポロリしながら素直に頷いちゃう仁人の心情描写がエモすぎて胸が痛い…。 太智の「彼女できた?」はマジ空気読めてなさすぎだけど、むしろその修羅場感が刺さるんだよな…。勇人の「夜来れる?」って意味深な誘いも含めて続きが気になりすぎる更新よろしくお願いしますマジで😭🌸