テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
役員会議室に一歩足を踏み入れた瞬間、ジェニはすぐに気が付いた
何かがおかしい・・・今まで数々のプレゼンテーションを勝ち取って来たジェニにとって、周りの雰囲気を読むこと、ボディランゲージを読み解くことにかけて 自信があった
ほとんどの場合、相手の目の色や何気ない仕草から知る必要のある事を理解する能力、実に役に立つ実践スキルだ、ジェニはノートPCを抱えたまま、右側の列の席に勢ぞろいして座っている役員連中をゆっくりと、確認するように一人一人睨みつけた
今までずっとジェニの上司だった顔ぶれが並んでいた、中には亡き父の代からずっと仕事をしていた役員まで、ジェニが彼らの前をゆっくり通り過ぎて行くと、全員手元のメモをじっと見つめたまま動かない、誰一人ジェニと顔を合わさない、これから起こることが面倒な事になる兆候だ、そして今回の買収事件の首謀者と睨んでいる、企画部長の佐竹の前にゆっくりと立ちふさがった
佐竹も他の役員同様ジェニの顔を見ようとしない、一気に怒りがこみ上げてくる、彼らが平然と兄を裏切り、会社を捨てようとしていることが許せない、ジェニは佐竹の前のテーブルに手をバンッとついた
「今までどこにいたの?佐竹部― 」
「私語は謹んで、あてがわれた席にお座りなさい」
その声に驚いて振り返り、視線をコの字型になっている会議テーブルの上座に移した、今まで兄が座っていた席に今朝接触事故を起こした男性が座っている
ジェニは愕然として男性を見つめた・・・黒い瞳がジェニをハッキリ捉えている
人を射すくめる様な鋭い視線、逞しい肩を強調する紺色の仕立ての良いスーツ、いかにもビジネスの才能と優秀な頭脳を持ち合わせている雰囲気を醸し出している、きっと学位もそうとうなもののはず、思わずジェニは嫉妬してしまった、この期に及んで遠回しな言い方をしても無駄だろう、ジェニは深呼吸して言葉にした
「・・・・あの・・・ あな・・・た・・が松下竜馬?」
彼の片眉がピクッと吊り上がった
「そうだ、僕が松下竜馬だ、この「メビウス・ホールディングス」の 代表取締役で、鬼と呼ばれて、極悪非道で、非人情的で・・・ あと何だった?・・そうそう血が通っていない―」
隣の役員達は竜馬の事を「いったい何を言い出すんだ?」 とばかりに驚いて見つめている、そして何が面白いのか、ニヤリと両口の端を上げて竜馬が言った
「クビ切り社長だ」
―終わった―
ジェニは心臓がいったん胃まで落ち急激に飛び上がったような気がした・・・これで先行きが無残にも何もかもおじゃんになった
自分は買収されても少なくとも好印象を持ってもらおうと、ずっと考えていた人物の車を傷つけて、そして先ほども喫煙室で怒鳴り散らしたのだ
一気にジェニの気が沈んだ、だが二人の目が合うと彼はジェニを見て面白そうに瞳を輝かせて言った
「初めまして神崎ジェニさん、あなたのお兄さんがここにいないことを大変残念に思います。しかしあなたにはお兄さんの分もこの議会で可決した内容をよく理解して頂きたい、そちらの席にお座りください」
―と・・・言うことは 私には発言権は無いってことなのね・・・どうしよう・・・ このプレゼンテーションが無駄になるかもしれない・・・ ジェニは焦った・・・・ しかしこの会議の最中で必ずチャンスは来るはずだ、その時が来たら絶対―
ぎゅっと拳を握りしめた、松下竜馬はこの場の空気を完全に支配している、ジェニはとてもかなわないと感じた、ビジネスの才能と優秀な頭脳を持ち合わせている上に、これほどハンサムなんて・・・ 神様は本当に不公平だわ
ジェニは恨めしい気持ちでノートパソコンを抱えたまま竜馬が指定した席に座った、ジェニは父の代からずっと上司だった顔ぶれを眺めて一人一人殴ってやりたいと思った、そして役員の誰一人とてジェニと顔を合わせようとせず、まるで彼女が見えていない妖精のように扱っている、本当に先行き真っ黒だ
そして発言権を与えてもらえないなら会議中ずっと睨んでやる、なんてったってこの男達はジェニの人生にとってただ一つの生きがいであった父の会社をのっとり、バラバラに解体しようとしているのだ、これ以上好きにさせてたまるか
鳳 咲千愛@企画開催中
173
りすぐみ
36
なみ
28
コメント
1件
え、ちょっと待って待って待って!!😱💦 あの接触事故の相手がまさかのCEO・松下竜馬だったの!?!? しかも「クビ切り社長」って名乗るシーン、ヤバすぎでしょ…かっこよすぎて胸がギュッてなったんだけど!!💘 ジェニが会議室で必死に食い下がろうとする姿、めっちゃ応援しちゃうよ…! でも発言権もなくて、あの役員たち誰も目を合わせてくれないの、切なすぎる😭 次の展開、どうなるの!?早く続きが読みたいよ〜!!🔥