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瑠璃マリコ
29,906
桜井 かな
327
この事件の根源の常務企画部長の佐竹を、目から光線が出るなら焼き殺している勢いでジェニは睨んだ、途端に佐竹が彼女から目をそらした
お酒でシラフの時も赤ら顔だ、でっぷりとしたおなか、冷房が効いているのに彼は必死で汗を拭っている、今まで接待で高級な食事ばかりして、これほど肥えまくっている、その佐竹が口を開いた
「いや~!松下社長!彼女はご存じないかもしれませんが、先代の娘さんで元神崎社長の妹さんでしてね 」
「知っています」
竜馬がジェニから目を離さずに答える、さらに佐竹が竜馬のご機嫌を取るような口調で続ける
「ですから彼女は元神崎社長に、是非にと頼まれて雇っていましてね、会社の事はほとんど何も知らないんですよ~!ですから彼女に発言権を与えるのはどうかと・・・」
バンッ
「何ですって!!」
もう我慢できない!ジェニは反撃の時が来たと思った
「よくも人のことを無能なごくつぶしみたいな言い方が出来るわね!さんざん会社のおかげで贅沢出来ていたのに、あなた達がどれほどこの会社の甘い汁を吸っていたか、そしてそのせいでこの会社が傾いたらまた違う会社に乗り移って、甘い汁を吸おうっていうのね! ハッキリ言うわ!松下社長! ここにいる役員を残して私の社員の雇用削減をしたら、あなたの会社も近いうちに同じ運命を辿るわよ!」
ジェニは立ち上がってずらりと座っている役員に、これ以上ないぐらい軽蔑のまなざしを向けた
「証拠は?」
松下竜馬が冷淡な声でジェニに問いかけた
「あるわよ! このプレゼンテーションを見てもらえばわかるわ、我が社の経営負債の原因は組織の硬直化なの、うちは若くて才能あふれる社員ばかりよ! だけどせっかくその才能あふれる社員が良い仕事をしても、役員が搾取してるからダメなのよ、彼らは会社の利益を全部自分達の私利私欲のために使ってしまうクズ豚なのよ!!」
ガタンッ
「いっ・・・言いがかりも甚だしいっっ」
佐竹が怒りに顔を真っ赤にして立ち上り、ジェニと指さして叫んだ
「前から思っていたが、君のお父さんとお兄さんはしかるべき年に君をきちんと躾けなかったのが残念だよ、子供の遊び場のように会社に来させて、私は言ったんだよ!先代にも君の兄さんにも、君を花嫁修業に外に出させて世間の厳しさを学ばせた方がいいってね、 おかげで井の中の蛙状態で育って、会社の利益を自分の手柄だと思い込んでいる!」
「私はちゃんと仕事しているわよ!当然でしょう!パソコン一つ扱えない上司が、会社の経費で仕事もしないでキャバクラ遊びしたり、ゴルフ旅行ばかりしているんですもの、その証拠も用意しているわ!だからこの場でちゃんとプレゼンテーションさせてよ!我が社のこれまでのビジネス戦略のメリット・デメリットをまとめて来たわ、そして今後半年間のビジネスイノベーションの傾向と対策も、ここ3ヶ月で4つの案件をものにしてるわ、ここの役員達も知らない大口よ!」
佐竹と役員の顔に、驚愕の色が浮かぶ
「よ・・・よくもそんなでたらめが言えたものだ、いい加減にするんだ!君には可哀そうだが、もう君のお兄さんはこの会社の社長じゃないんだよ!今日だって本当ならお兄さんはこの場に居なければならない立場の人間だろう、それを何もかも投げ出して逃亡するなんて」
痛い所をつかれてしまった、これを言われれば、さすがのジェニも黙るしかない、さらに佐竹が言う
「我々役員も、やはり株の売却は正しい決断だったようだ、こんな素晴らしいメビウスホールディングスの傘下に入れてもらって、心から喜んでいるんだ 」
他の役員もウンウンとみんな頷く、佐竹はさっきから黙って話を聞いている松下竜馬にへつらうように笑顔を向ける
「よくもそんな口が叩けるわね・・・」
ジェニが怒りに奥歯を噛み殺した声を漏らす
―ああ・・・ 兄さんの事を出されると絶望的だ・・・ 兄さんがここに居てくれさえすれば・・・―
「新しいクライアントを獲得できたのは、我が社の優秀な社員のチームワークのおかげよ、それ以外の何ものでもないわ 」
「ほら・・・君には休暇が必要なんじゃないのかね?退職金を貰って買い物にでも行って来なさい、昼寝をしてもいいし、若い女の子がストレス発散したい時にすることなんでも、君は素晴らしいプロポーションをしている、プールサイドでくつろいでいたら、きっと素敵な男性との出会いがあると思うよ」
佐竹が「なぁ!みんな!」とでも言いたげに手を振って他の役員に同意を求める、すると役員達はいやらしい笑いを浮かべてうんうん頷く、みんなの視線はジェニのミニスカートから伸びている見事な脚に注目する、ジェニの怒りが爆発する
「私はストレス発散のために買い物などしないし、お昼寝も好きじゃないわ、必要なのは損益計算を公平に見てもらえる目よ!」
もう一人の役員も調子にのって話し出す
コホン・・・・
「それにその服装もどうかとずっと思っていましたよ、もし君が社長の妹さんじゃかったら、とっくにクビにしていましたね、態度の悪さといい・・・ その服装といい・・・水商売に行かれたほうが良いのではないですかね、美人だしね、結婚でもして子供を産めば落ち着きますよ、もっとも結婚は・・・・おや失礼、もらってくれる人がいればの話ですがな・・・ 」
ぐへへへと役員達が笑った、まるで最高の冗談でも聞いたみたいに、役員達から同意の声があがった、再びジェニがバンッと両手で机を叩いた
「今の発言は女性蔑視の発言として許せないわ!裁判にかけてやる! 」
「いいかげんにしなさい、いったい自分を何様だと思っているんだい?君はもうこの会社では用無しなんだよ 」
佐竹が明らかにトドメを刺してやったと言う顔をしている、こみ上げてくる怒りに全身が震える、社員を救うつもりがプレゼンテーションも見てもらえず、自分の服装をいじられるなんて、これでは逆効果だ、役員達が各々にしゃべりだしている、お昼のランチがどうとかジェニの耳に聞こえて来た、ジェニはしばらく何か反撃できないか考えた、が ・・・やがて惨めさに打ちひしがれた
「神崎ジェニさんの意見に同意します」
その一言に会議室がシン・・・となった、その声の主は松本竜馬だった
「社・・・社長~・・・ な・・・何をご冗談を・・・・ 」
佐竹の顔が青ざめた
「わが社にはあきらかに女性蔑視の発言をする時代遅れの社員はいりません、セクハラ訴訟でも起こされたら社の信用に欠けます、それこそ人員削減の条件になります、神崎さんには我が社の弁護士を紹介しましょう」
ザワッと役員と佐竹が青ざめた
「たしかにさっきのは酷いな」
突然松下竜馬の右隣にいる男性が口を開いた
「文也」
竜馬が静かに右隣の彼を戒めた、竜馬の隣の男性はジェニに向かって眉毛と手を少し上げ、「やぁ」と指をヒラヒラした、その彼は竜馬と並んで座っていても、ゴージャスさは竜馬と引けを取らないほど、体格が良かった
何かスポーツでもやっているのだろうか、短髪で茶目っ気溢れる瞳を、好奇心満々でジェニに向けている、そして彼がニッコリ笑ったら両端にえくぼが現れた
―あら・・・可愛い・・・―
ジェニはお愛想程度にその文也とか言う男性に会釈した、どうやら彼はここにいる人達で、唯一ジェニに対して好意的のようだ
コメント
1件
いやー、第7話、めっちゃ熱かった!ジェニの反撃は気持ち良かったけど、役員連中のクズっぷりがエグすぎて腹立ったわ。特に佐竹の「花嫁修業」発言とかマジで吐き気する。でもそこからの松下社長の「同意します」、最高のカタルシスやった!文也ってイケメンも気になるし、続きすぐ読みたいわ。星キラリさん、ジェニに感情移入しまくったわ、ありがとう!