2B視点
レジスタンスキャンプを出てパスカル村へと向かう
廃墟都市中央のビル群を走り抜ける度に擬似皮膚を撫でる風が心地よく感じる
周囲の崩れ落ちた道路の下には小川が流れている
穏やかという言葉に相応しい光景だ
今はまだ、この景色を堪能する猶予がある
だが、いずれこの景色は失われ、業火の巻き起こる赤き戦場となる
早く、早く…
未来を変えないといけない……
9S「ここは、植物の侵食が大分進んでいますね」
走る私の横で9Sは語り出す
9S「サイズもかなり大きいです」
9S「人類が月へ逃げ延びてからは各地で植物の肥大化が確認されているんですよ」
9S「それに伴う生態系の変化もあるんだとか…」
私に優しく微笑みかける9S
9S「もしかしたら…でっかい猪とかいたりいして……」
悪戯な表情を浮かべて悪びれる君を何度見てきただろう
でも、結局君は悪役になりきれず私にいつも___されていた
この記憶は私にしかない
今の君には無い、私と“君“の記憶
私のタカラモノ
2B「変なこと言わない」
いつものように返事を返す
9S「ハイハーイ」
抑揚のある声が返ってくる
そうこう話しているうちに私たちは遊園地廃墟に着いていた
ライトアップされたハートにくり抜かれた城を中心とした
ジェットコースターや、メリーゴーランドなどの遊具がある大きな遊園地
今では廃墟となり、城の内部にある劇場には恋焦がれる歌姫が眠っている
その歌姫は愛する人を振り向かせるため、自身を着飾っていた
振り向いてもらえるよう、キレイになろうとした
愛故に、キレイになるため藁にも縋った
挙句の果て…怪物へと成り果てた
遊園地廃墟入り口前で立ち止まった
9S「2Bー?」
2B「…」
私の顔を覗き込むように声をかけてくる9S
その仕草が愛らしく思う
私は彼女を見て、共感を抱いた
カタチは違えど愛するココロは変わらない
たとえ、それがどのようなカタチであったとしても
9S「それにしても…異様な光景ですね……」
9S「ポッド、ここの場所のデータを見せて」
ポッド153「了解、データの共有を開始」
ホログラム上に表示されたマップデータと、人類のデータから遊園地というデータを吸収していく
9S「ねぇ、2B」
2B「なに」
9S「遊園地という場所は人類の男女が訪れてデートする場所の定番だったそうですよ」
デート…いつかの君が言っていた
戦争が終わったら私と2人で買い物をしたい…と
その時、私は叶うはずもないのに…君と約束した
そして…私は君との沢山の約束を抱えたまま、君を置いて逃げてしまった
9Sが良いことを思いついたと言わんばかりの顔で私に笑顔を見せる
9S「そうだ!2B、戦争が終わったら2人でここに来ませんか?」
9S「きっと、戦争が終わったら僕たちみたいな戦闘に特化したアンドロイドはすることがなくなると思うんです」
9S「だから……」
最後になるにつれて声が小さくなっていく君はきっと私に断られることを恐れているのだろうか
私がそんなことを望むはずもないのに
私の答えは決まっている
2B「わかった」
9S「…!」
花が咲いたみたいにぱっと明るくなる表情
2B「2人でここに来よう」
私は、今度こそ
君との約束を守りたい
9S「はいっ!」
そうして私たちは遊園地廃墟へと足を踏み入れた
遊園地廃墟内のジェットコースターに乗ったり、止まってしまったアストロファイターを飛び越えたり…と遊園地廃墟内を探索していた時だった
(※アストロファイターとは…ゲームNieR:automataの遊園地廃墟内に登場する止まっている車の遊具の名称)
ポッド042「司令部より通信」
通信ホログラム画面がポッドより投影される
6O”オペレーター6Oより、2Bさんへ”
6O”定期連絡の時間です”
気まずそうに視線を泳がせる6O
2B「どうしたの?」
6O”休暇期間中の2Bさんと9Sさんに申し訳ないのですが……”
6O”緊急任務が入ってしまって……”
9S「緊急任務…?」
6O”はい…遊園地廃墟エリアで調査をしていた連絡係としばらく連絡が取れていなくて……”
6O”現在もブラックボックス反応が確認されていることから破壊はされていないと思うのですが……”
この話は…前回の任務でもあった遊園地廃墟で行方不明となったヨルハ部隊員とレジスタンスを捜索する任務……
私は不気味にライトアップされている城を横目に会話を続ける
2B「わかった、座標を転送して」
ポッド042「オペレーター6Oより、座標データの転送を確認」
6O”2Bさん…無理はしないでくださいね”
2B「あぁ」
ポッド042「通信終了」
ポッドが通信画面を消してマップを表示する
さっき6Oから送られてきた座標データの位置がマップにポイントされている
9S「この座標…」
9Sが横からマップを覗き込みながら言う
9S「あの城の内部ですか…?」
2B「そうみたい」
考え込むような仕草を見せる9Sを置いて私は君が余計なことを考え込むことのないよう急かす
2B「いくよ、9S」
9S「ちょっ…ちょっと待ってくださいよー2Bーー!」
私たちは城へと歩き出した
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