「お前が職場で頑張ってる姿を見ていたし、不器用ながらガッツのある奴だなって感心してた。負けず嫌いで、悔しい事があったらすぐ目を潤ませるくせに、食らいついてくる。……まぁ、それを見て『泣かせてやりたい』って思ったのはまた別の話として」
「変態。最低」
私が文句を言って尊さんの胸板を押したあと――、二人で「ぶふっ」と噴きだして笑う。
「……お前の事が好きなんだよ」
少し笑ったあと、尊さんはしみじみと言う。
「……いつ頃から?」
すると彼は視線を斜め上に向け、考える。
「いつからだろうな? こういうのって、『この瞬間恋に落ちました』って、なかなかならないだろ。最初は普通に部下として見ていたけど、見守ってるうちに『あいつ面白いな』って思って、仕事以外の面でも気になっていった。俺、割とお前の事知ってるけど? コンビニおにぎりの具は、シーチキンマヨとしゃけが好きとか……」
「わっ、……わぁっ、キモッ」
そんなところまで見られていたと知らず、私は声を上げてまた尊さんの胸板を押した。
「キモいとか言うなよ。おっさんだから傷付く」
彼の言葉を聞き、私はとある事を思いだして顔面蒼白になった。
ある時、他部署の美人が尊さんに熱烈アプローチした。
私は『ふーん』と思って見守っていただけだけど、彼女を気にしていた後輩くんが『部長なんておっさんじゃないですか』と言っていたのだ。
(……まさか、あれを聞いていたなんて言わないよね?)
プルプルと震える私を見て、尊さんはニヤリと笑う。
「……まー、壁に耳あり障子に目ありだな。ちょっとやそっとじゃ怒らねぇけど」
そう言って、彼は羽布団をたぐり寄せて体に掛けた。
「……なんかすみません。途中だったのに……」
「いいよ。今日しかチャンスがない訳じゃないから」
彼はそう言ってくれるものの、一度お目覚めしてしまったモノ……、大丈夫なんだろうか?
「……あ、あの……。手か口で……しましょうか?」
「いいって」
彼が我慢してくれるほど、罪悪感がこみ上げる。
「あの、エッチはあまり慣れてないけど、手とか口でするのはそれなりに慣れ……ふがっ」
途中まで言った時、尊さんが私の鼻をつまんできた。
「……おい。まさか田村クンを悦ばせたテクで、俺を達かせようと思ってるのか?」
「えっ……」
テクなんて、そんな立派なもん持ってない。
……いや、じゃなくて。
「フェラしてくれるならしてほしい。でもその時は、俺がじっくり教え込む。……だから朱里からはするな」
一言一言、しっかり言い含めるように言われ、私はジワッと頬を染めて頷いた。
「……もしかして、妬いてます?」
小さな声で尋ねると、尊さんは私を睨んでから噛み付くようなキスをしてきた。
「んっ……、ん、ぅ、ぅ……」
口内を肉厚な舌でねっとりと掻き回され、私は無意識に彼の背中に手を回す。
――この人のキス、好きだな。
私は全身で尊さんのぬくもりを感じ、うっとりと目を閉じる。
「はぁ……」
唇の間で銀糸が引き、私たちは吐息を漏らす。
「……体、冷えてないか?」
尊さんが私の肩に触れ、尋ねてくる。
確かにお風呂に入って盛り上がったあと、ろくに髪も乾かさずにベッドにきてしまった。
「……ドライヤーは掛けたいかも」
「じゃあ、風呂に入り直すか」
尊さんは立ちあがって全裸のままバスルームに向かい、私はバスローブを羽織って彼を追った。
「これからどうするつもりですか?」
再びジェットバスに浸かった私は、後ろから尊さんに抱き締められ、温まる。
お酒を飲んだのと、深夜になってきたのもあって、かなり眠たくなってきた。
「ん? あー……。まぁ、十二月内には継母にお前を紹介する」
「……私はもう覚悟を決めましたけど、……大丈夫ですか? 社長夫人、怒り狂いそう」
彼の継母が、かなり面倒な人なのは今までの話を聞いて分かった。
尊さんを信じて愛そうと決めたのは私だけど、社長夫人の不興を買って会社をクビになったり、悪い噂を流されるのは避けたい。
「んー、まぁ、怒るだろうけど、俺もあの人の弱みを握ってるから」
「…………さすが……」
まさか社長夫人の弱点をすでに掴んでいたとは……。
「どんな……?」
コメント
2件
ジェラスィ~な尊さん🤭 そうそう....言われた通り、彼からいっぱい手ほどきを受けてね( *´艸`)♥️♥️♥️ いよいよ継母と対峙する日が近づいてきましたね.... 弱みも握っているようだし、二人共 負けずに頑張って✊‼️
ミコティ妬いてる🤭ジェラスィ〜🤭それは🍄手取り足取り尊スペシャル仕様を教えてあげてね♥️ それは継母に会う前?後? っていうより、朱里ちゃん堂々と戦ってらっしゃい!!!負けるな〜っ(๑و•̀Δ•́)و🔥弱みを握ってるって言ってるから大丈夫👌