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「お前さえ、生まれてこなければよかった。」
実の母親から言われた一言だった。
これは珠奈が五歳の時だった。
「私を見るな! お前のその毒薬のようなどすぐろい紫の瞳はなんだ。顔も目付きも本当に気持ち悪い」
そういって華鈴は私に重湯が入った器を投げた。器は私の肩に当たり火傷を負った。
「早く食事を下げろ」
「ごめんなさい」
「ああ、声を聞くだけでイライラする」
食器をお盆に乗せて早く離れ部屋を出た。
もう華鈴は「麗しの花」と呼ばれる事はない。妓女は子供を孕ませれば価値は欠片もない。それが花街の決まりだ。
どうして私は産まれてきたのだろうか。
だけど、才能ある妓女になる必要がある。
煮込みがない女は禿を卒業するとすぐに体を売ることになる。私はそんな人生を送りたくなかった。
だから禿になってから人一倍努力した。
舞も二湖も努力した、綺麗な字も書けるようになった。
五年後10才になった日
私の実父を名乗る男が現れた。
男は華鈴と私を身請けした。
それも多額のお金を払ってだ、私は華鈴と共に実父の屋敷で暮らし始めた。
最初はなれない生活だったが1ヶ月くらいからは慣れだした。
問題もあった、腹違いの兄から汚い生まれとして私を嫌っていた。その時は実父が私を庇いいつも兄を叱ってくれた。それが私の記憶だった。
パチッ
「またか、やな夢だ。」
目を開ければ私の目の前には帝がいた。
それも全裸で寝ていた、だが下半身は布団で隠れていた。
まあ、それでも布団がないよりましだ。
帝の背中から両腕に麒麟の刺青がある。
国の頂点に立つ男がこんな罪人と夜伽とはなんとも馬鹿な事だ。
気づけば私は帝の刺青を撫でていた。
「おい、珠奈くすぐったいぞ。 」
「あ、起きましたか。」
珠奈が薄い寝巻きを身に纏うと外に出た。
庭園で自分一人で子守唄ホトトギスを歌う。
この歌は子供の頃華鈴が歌っていた歌だった、
だがこれは珠奈のためにではなく華鈴が自分の現実を遠ざける為に歌っていたのだ。