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🌸第7話 重なり始める笑顔
最近のひよりは、ほんの少しだけ変わってきていた。
講義のあと、陽が声をかけると、
ひよりは前より自然に笑うようになった。
「春川くん、今日も図書館?」
「うん。レポート終わらなくてさ」
「……ふふ。分かる」
ひよりの笑い声は小さいけれど、
その柔らかさは陽の胸にじんわりと広がった。
(なんか……前より話しやすくなったな)
陽はそう感じていた。
🌙演劇部の帰り道
夕方、校舎裏の道。
ひよりが部活帰りに台本を抱えて歩いていると、
陽が自転車を押しながら追いついた。
「あ、小鳥遊さん。帰り?」
「うん。春川くんも?」
「今日は部室の片付けしててさ」
「……お疲れさま」
ひよりがふっと笑った。
その笑顔を見た瞬間、
陽の胸が一瞬だけ強く跳ねた。
(……あれ?)
夕方の光の中で笑うひより。
その姿が、
陽の記憶の奥にある“ひよりちゃん”と重なった。
(今の……なんか、昔の……)
でも、思い出せない。
ひよりは陽の視線に気づき、
少しだけ首をかしげた。
「……どうかした?」
「あ、いや……なんでもない」
陽は慌てて視線をそらした。
(気のせい……だよな)
そう思おうとしたのに、
胸のざわつきは消えなかった。
🌸ひより視点(揺れ始める心)
(はるくん……なんでそんな顔するの)
ひよりは胸がくすぐったくなった。
(私……そんなに変な顔してた?)
でも、陽の表情は
“驚き”と“懐かしさ”が混ざったような、
不思議なものだった。
(……気づいたの?)
(いや……気づくはずない)
ひよりは自分に言い聞かせた。
(でも……はるくんと話すと、笑っちゃう)
(昔みたいに……少しだけ)
その“少しだけ”が、
ひよりの胸を温かくしていた。
🌙陽視点(記憶の揺れが強くなる)
家に帰る途中、
陽はさっきのひよりの笑顔を思い返していた。
(あの笑い方……どこかで……)
夕方の光。
小さく笑う女の子。
砂場でうさぎを作っていた手。
(……ひよりちゃん?)
胸の奥が強く揺れた。
(いや、でも……)
陽は自分の記憶を疑った。
(まさか……そんな偶然あるか?)
でも、
ひよりの笑顔が記憶の中の“ひよりちゃん”と重なった瞬間の感覚は、
どうしても消えなかった。
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