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ジーク「結局あれから、荷物が出てきたのはポルポルが起きた1時間後…と。」
ポルポル「ギ?」
ジーク「お前あれだけ揺さぶられて、よく起きなかったな…。」
アリィ「セキュリティ性能はバッチリだね!」
アリィがジークに向けて、親指を突き立てる。
ジーク「アホか。それより、完成したんだろ?早く渡してきな。」
アリィ「ジークも手伝ってくれたんだから一緒に来て!」
アリィはそう言うと、ジークの腕を引っ張る。
ジーク「いででで、分かった分かった。」
マリア「動作チェックよし。問題ないわね。あ、そうだ1つ聞きたいんだけど、もう魔法は使えないかしら?」
アカネ「何度かやってみましたが、音沙汰ありません。もう出来ないかと…。」
マリア「そんな申し訳ないみたいな顔しないで。本当に気になっただけだから。でも、魔法がもう使えないなら排熱機能の改善は必要ないかしら…。いややっぱり必要ね。また設計図を書かないと…ベツ。」
マリアがベツレヘムを呼ぶ。しかし、返事は一向に返ってこない。代わりにアカネが答える。
アカネ「ベツさんなら、屋根に日向ぼっこしに行きましたよ。」
マリア「いつの間に…」
コンコンと扉をノックする音が聞こえる。
マリア「どうぞ入って。」
扉からアリィの頭がひょこっと出る。
アカネ「あ、アリィさん。」
アリィ「ジークもいるよ。ほら」
アリィの後ろからジークが除く。
ジーク「今時間あるか?」
アカネ「大丈夫です!たった今動作チェック終了したところです!」
マリア「そういえば荷物は出てきた?」
ジーク「何とか無事に…」
マリア「良かったわ。」
アリィ「アカネ君、はいこれ!」
アリィはしゃがむとアカネに、1枚の栞を渡す。それは四葉のクローバーの栞だった。
アカネ「栞?」
アリィ「うん!ジークと2人で見つけて栞にしたんだ!本当はアカネ君が起きる前に渡せれば良かったんだけど…四葉が見つけるのに時間かかって…あげる!」
アカネ「わぁ…ありがとうございます…!大切にします…!」
ジーク「喜んで貰えて良かったな。」
アリィ「うん!」
ジーク「そういえば、ノアは?」
カイオス「ノアなら、もう元気だから安心しな。」
カイオスが部屋に入ってきて、ジークの問いに答える。
ジーク「それなら良かった。…アリィ。」
アリィ「?」
ジーク「弓の修理が終わったから、そろそろここを出ようと思う。」
アリィ「…うんそうだね。何時までもここにお世話になる訳にはいかないもん。…いつかきっと気づかれる。」
ジーク「アカネ君のこともイニディア村のことも、一段落したしいい頃合いだ。ノアも元気になったし。」
カイオス「もうでて行くのか?」
ジーク「ああ。長居は出来ないからな。ほらアリィ。」
アリィ「…」
ジーク「アリィ?」
アリィは何も答えない。
ジーク「…分かってるよ。やっと出来た友達と離れたくないのは。でも分かってくれ。アリィの為でもあるんだ。」
アリィ「…うん。でもせめて明日の朝の出発じゃダメ?」
ジーク「分かった。それくらいならいい。今日のうちに挨拶をすませたり、遊んだりしてくるといい。」
アリィ「ほんと!?わーい!アカネ君、外に行こう!」
アカネ「えっ僕ですか?」
アリィ「うん!友達だからね!」
アカネ(友達だと思ってくれていたんだ…。)
「はい、一緒に行きます!」
アリィとアカネは、部屋の扉から外へ出ていく。しばらくして、マリアがジークに問う。
マリア「ジーク君は一緒に遊びに行かないの?」
ジークは答える。
ジーク「俺はいい。そもそも遊び方が分からないんだ。」
マリア「遊び方が分からない?」
ジーク「物心ついた時から、狩り仕事をしてて解体やら、町に行って売ったり時間がなくて遊んだことがないんだ。物心つく前は遊んでたのかもしれないけど…。」
カイオス「多少の隙間時間はあっただろ?」
ジーク「あっても警戒を怠る訳には行かなかったんだ。…なんせ俺らが住んでた村はセヌス国の端っこで、悪魔が来た時に備えなきゃ行けなかった。」
マリア「なるほどね…。」
ジーク「昔は、国からお金貰ってたから他の村に比べて生活水準が高かったけど今じゃタダ働きだ。」
カイオス「はぁ!?それ他の国が黙っちゃいないぞ…。だって民間人が討伐してるんだぞ!?」
ジーク「陛下が変わってからずっとこれだよ。よっぽど上手く行ってるらしい。」
カイオスとマリアはドン引きだとでも言うような表情を浮かべる。
ジーク「俺はアリィの様子を見てくる。」
マリア「遊ばないのに?」
ジーク「何かあってからじゃ良くないからな。」
カイオス「…少し過保護し過ぎないか?それにアカネが居るんだし…子供は少しくらい痛い目にあって覚えてくもんだぞ。」
ジーク「…何も分かっていないからそんなこと言えるんだ。アリィは他の子と違う。あの子は世間知らずなんだ。首と胴体が離れても死が分からない子なんだ。だから俺がついてないと行けない。」
マリア「…でもそれって今もなの?」
ジーク「え?」
マリア「今は流石に分かるでしょう?」
ジーク「まぁ…多少は…」
マリア「なら大丈夫よ。子供は成長し続ける生き物だもの。もう少し、君はアリィちゃんのことを信じてあげたら?」
ジーク「信じてないわけじゃ…」
マリア「なら、言い方を変えましょうか。そろそろ”子離れ”してもいい頃だと思うわ。もう君も疲れたでしょう?」
ジーク「…。」
カイオス「子離れ?何言ってるんだマリア…。どう見ても同い年くらいなのに子離れって…」
マリア「親子の形には色々あるのよ。ほら、産みの親とか育ての親とか。」
ジーク「なんで分かるんだ…超能力者?」
マリア「ふふっそんなわけないでしょう。同じ親だから分かるのよ〜。私もアカネが赤ん坊の頃、1回育児ノイローゼになったことあったし。」
ジーク「…育ての親って程じゃないけど…」
マリア「それに君達の距離感って親子に近い気がするのよね。」
カイオス「確かに距離感は近いな。」
ジーク「皆言うけどそんなに…?」
マリア&カイオス「そんなに。」
ジーク「そ、そうなのか…。」
マリア「否定はしないのね。」
ジーク「…言っていいのか分からないけど、アリィは親を亡くしている。だから代わりに色々教えたのは事実だ。」
カイオス「よく分かったな…」
マリア「ふふっ今度ベツに自慢しようかしら?ね、あの子は十分もうやって行けるわよ。自分のことも気にかけてあげたら?私、初対面の時に言ったわよね。あの時、君も休んだ方がいいって。」
ジーク「…だからそう言ってたのか。」
マリア「せめて今日だけでもね。アカネが付いてるから大丈夫よ。あの子は貴方達よりずっと年上だから。」
ジーク「そういう訳には…」
マリア「…君が何に責任を感じてるのか私には分からない。冷たいことを言ってしまうけれど、君にあの子を育てる義務はない。でも君のやり方を否定する気はないの。いい事だと思う。でも休憩くらいしたっていいんじゃないの?…私、1度だけ限界を迎えたことがあるの。まだ赤ん坊だったアカネを抱えたまま、豪雨の中川に行ったの。そこで飛び込もうと足を1歩進めた。そしたら寝ていたアカネが泣いてね、それでああ今私はなんてことをしようとしたんだろうって気づいたの。」
ジーク「それは…話しても良かったのか…?」
マリア「ええ。だからね、私他の人よりはもう限界だって人には気づきやすいの。」
ジーク「…心配してくれるのは有難いけど、そんな簡単な問題じゃないんだ。」
ジークはそういうと、顔を手で覆ってしまう。やがて小さな声で途切れ途切れに答える。
ジーク「…アリィの両親が亡くなったのは…俺のせいなんだ…。」
マリアとカイオスはただ静かに聞く。
ジーク「…俺の…親父が…殺したんだ…。」
そう答えた。