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スカートに添えた手を下ろして、私はゆっくりと歩いた。
切られた糸のように、だらんと伸びる脚が目の前に迫る。
見上げたその顔は、逆光でよく見えなかった。
でも私は、そこに浮かんだ表情が手に取るように分かる。
愛する人を失ってから、少しずつ降り積もっていった愛情と狂気を大切に大切に抱えたパパは、最後まで、私の方を振り返ることはなかった。
「…っ…」
慈しみに満ちた幸せそうな微笑みを見上げながら、喉の奥から絞り出すように、震える唇からぽろりと言葉を落とす。
「ひとりに、しないでよ…」
それは今まで声に出来なかった、雪のように降り積もった私の思いの欠片だった。
終