アリィが白髪の人の額に手を当てる。
アリィ「…今日は様子見するしかないかな…。かなり熱が上がってるね…。」
ベツレヘム「ここから次の町までは距離がありますよね…。」
アリィ「うん…万が一の為に今から移動しても…間に合わないかも…」
ベツレヘム「…。」
ジーク「ん… 」
傍で寝ていたジークが目を覚ます。
アリィ「あっ、起こしちゃった…?ごめんね。」
ジーク「いや…ん、どうしたんだ? 」
ベツレヘム「実は…この方の熱がかなり上がっていまして…」
ジーク「薬草は?」
アリィ「塗ったけど効いてないのか…まだ効果が出てないだけなのか…。」
ジーク「…。」
ジークが白髪の人間を見る。白髪の人間は熱にうなされ、苦しいのか息が荒くなり苦しそうな顔をしていた。
ジーク「…これは効果が出るのを待ってる暇は無いぞ…。間に合わない可能性も…」
アリィ「次の町までは遠いよ。なにか他にいい所は…」
ジーク「…そんなところ…地図にも載っていないのに…」
ベツレヘム「…あ、あの…!」
ジーク&アリィ「? 」
ベツレヘム「…一つだけ知ってる場所があります。私の友人が住んでる場所でここから近いんです。その…」
ベツレヘムが口をモゴモゴとさせていると、アリィが食い気味に答える。
アリィ「そこに行こう。」
ジーク「…俺も賛成だ。道案内を頼む。」
ベツレヘム「はい。でも一つだけ約束して貰えませんか?決してその場所を口外しないと。」
アリィ「もちろん。」
ジーク(…地図に載っていないのが引っかかったが、そういう事か。)
「ああ、約束しよう。」
ベツレヘム「では、道案内しますね。この方は私が運びます。」
ジーク「ベツさんは護衛に専念して。俺が運ぶから。」
ベツレヘム「いいえ。人を1人抱えても腕は落ちませんよ。安心してください。ジークさんは…体力が落ちているでしょう?今は。」
ジーク「ん……。それなら…頼む。」
ベツレヘム「はい!」
ジーク「アリィ、準備は…」
アリィ「へっ!?あ、ああ〜、だ、大丈夫だよ。 」
ジーク「…ポルポルは…?」
ジークがアリィに耳打ちをする。
ベツレヘムは何かを察したのか、少し離れた場所で2人を見守っていた。
アリィ「それが…見当たらないの…。もう少し探していたいけど、人命優先しないと…ことが終わったら…戻ってきて探そうと思う 」
ジーク「危険だぞ。」
アリィ「分かってる。あの日、あの夜から、私の覚悟はとうに決まってる。」
ジーク「…そうか。わかった。ことが終わったら俺も探すよ。」
アリィ「ありがとう。」
ベツレヘム「そろそろ行きますよー」
ベツレヘムが遠くからアリィとジークに呼びかける。
アリィ&ジーク「うん、ああ。」
ベツレヘム「…ここです。ここは『イニディア村』。…訳ありの人達が集まって出来た村です。」
アリィ「訳あり…」
ジーク「平和そうなとこだな。」
一行が、進もうとすると村人が話しかけてくる。
村人「ベツレヘム、外の者は入れられないぞ。」
ベツレヘム「本来はそうですがすみません。今だけは譲れません。人の命がかかってるんです。」
村人「はぁ…問題を起こすんじゃないぞ。」
それだけ言うと、村人はそそくさと帰って行った。
アリィ「歓迎されてないねぇ…。」
ジーク「仕方がないけどな…。」
ベツレヘム「おふたりとも気にしないで下さい。あの人くらいですから…。」
アリィ「そうだといいな…。」
ベツレヘムがふと、息を思い切り吸うと大きな声で誰かの名前を呼ぶ。
ベツレヘム「アカネくううううん!」
アリィ「わっ!?」
ジーク「うおっ!?ビックリした…。」
アリィ「今のは? 」
ベツレヘム「暫くしたら分かりますよ。」
そう言ってジークとアリィがそわそわしながら待っていると、村の奥から慌ててこちらに駆けてくる子供の姿が見えた。
ジーク「…子供?」
アリィ「私達よりも幼い…」
ベツレヘム「…。」
「大変お待たせ致しました。アカネです。どうかしましたか?」
ベツレヘム「アカネくん、久しぶりです。」
ベツレヘムが挨拶をすると、犬の獣人の様な子供が返事を返す。
アカネ「ベツさん、お久しぶりです。」
ベツレヘム「すみませんが、急患で…お母さんの元に連れて行って貰えませんか。」
アカネ「わかりました。こちらへ。 」
アカネに道案内され、移動中ふとアリィは疑問を口に出す。
アリィ「ねぇ、ベツさん。どうしてアカネ君を通して行こうとしてるの?直接いけばいいんじゃ…」
ベツレヘム「…過去に色々ありまして。直接だと会えないんです。」
ジーク「子供が通し役だなんて危険なんじゃ…」
ベツレヘム「問題ありません。…”ホンモノ”は随分前に亡くなりましたから。」
アリィ「…ホンモノ…?ううん…ごめんなさい。そんなこと聞いて。」
ベツレヘム「…構いません。…アカネ君は嘘を見抜くことが出来るんです。」
ジーク「…だから急患とだけ伝えたんだな。」
ベツレヘム「はい。ほら、見えてきましたよ。」
アリィ「…研究所みたいだね。」
ベツレヘム「みたいじゃなくて、研究所なんです。機械に触るとすんごい怒られますので気をつけてくださいね〜。」
ジーク「はは…。」
アカネ「着きました。…お母さん、急患です。診て貰えませんか。」
アカネが呼びかけると、研究所のドアが空く。研究所の中からゆっくりと、眼鏡をかけた犬の女性獣人が出てくる。
「みせて。 」
ベツレヘム「あっ、うん!えっとこっちの2人は…」
慌ててベツレヘムが紹介しようとすると、犬の女性獣人はベツレヘムの口に人差し指を当て、制止する。
「急患なんでしょう?紹介なら後でいいわ。アカネ、手伝って頂戴。」
アカネ「はい、母さん。」
ベツレヘム「でも…案内とかは… 」
「ベツ、貴方はこの家を知り尽くしてるんだから好きにしていいわ。その2人は通していいから。」
ベツレヘム「わ、分かった!ってことですので私が案内します!」
アリィ「お願い。」
ベツレヘム「とりあえずこの部屋で休みましょう。」
ジーク「道案内ありがとう。ベツさん。」
アリィ「後は…待つしかないね。」
ジーク「ああ。」
ベツレヘム「きっと大丈夫です。私は信じてます。彼女を。」
アリィ「あの人は…」
ベツレヘム「彼女の名前は『マリア』。見ての通り犬の獣人です。今のアカネ君はマリアに作られたアンドロイドなんです。」
ジーク&アリィ「アンドロイド…!?」
ベツレヘム「はい、人間と遜色ないレベルでしょう?…だから信じてます。 」
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