ジミンside
僕はジミン。15才。生まれ付きの心臓病で、小さい頃から入退院を繰り返してる。
僕には二卵性の双子の弟がいて、名前はテヒョン。テヒョンは顔が彫刻みたいにイケメンで、健康で、明るくて、女の子にもモテて、いつも沢山の友達に囲まれてる。身長だって僕より高い。僕が2分早く生まれてきたから、本当は僕がヒョンなのに…。
僕は未熟児で生まれたから身体も小さいし、心臓以外もあちこち身体が弱くてすぐ体調を崩してしまう。病気の影響で左腕はうまく動かなくて、不自然に曲がってる。おまけに、なぜだか小指がすごく短いんだ。
双子なのに、どうしてこんなにも違うんだろう。オンマのお腹の中にいる時に、いいところは全部テヒョンに取られちゃったのかな…。
僕は学校にもなかなか行けない。たまに学校に行っても、人見知りで友達と上手く喋ることもできない。元気な同級生を沢山見ると、それだけで気持ちが疲れてしまうんだ。
毎朝、オンマが僕のベッドに来て、体温を計って、胸の音を聞いてくれる。僕のベッドは二段ベッドの下の段で、上がテヒョンなんだ。僕は上の段には登れないからね…。
「ジミナ、今日調子良さそうね。学校に行ってみる?」
「う、うん…」
珍しく平熱で、僕は久しぶりに学校に行くことになった。
「テヒョン、ジミナのことよろしくね。もしもの時の薬はテヒョンが持っていて。ジミナ、ちょっとでも苦しくなったり困ったりしたら、すぐに先生かテヒョンに言うのよ。車椅子からは絶対降りないでね。トイレも先生かテヒョンに言って連れて行ってもらってね。」
ああ、嫌だなぁ。オンマはいつでもテヒョンを頼りにする。トイレぐらい自分で行けるよ…。
久しぶりの制服に着替える。今は7月で少し暑いけれど、僕は迷わず長袖のシャツを選んだ。点滴や注射の跡がいっぱいある腕を、同級生に見られたくなかったから。それに長袖の方が、左腕が曲がってるのもきっと目立たない筈…。
心臓に負担がかかるから、外に出る時は車椅子に乗らなきゃならない。僕の左手はうまく動かないから、車椅子は右手だけで操作できるようになってる。でも長い距離を動かすのは結構大変で、学校に行く時はいつもテヒョンが車椅子を押してくれるんだ。
僕は車椅子に乗っているのが恥ずかしくて、外に出るといつも下を向いてしまう。僕は周りからどう見えてるんだろう。もしかして、車椅子を押してるテヒョンの方がヒョンに見えるんじゃ…。僕は、可哀想な子って思われているのかな。
学校へは、バスに乗って行く。朝のバスは混んでいて、今日は車椅子で乗り込むとチッと舌打ちしてきたおじさんがいた。そんな時テヒョンはすぐに相手を睨むんだけど、僕は俯いて気づかないフリをしてしまう。
テヒョンは舌打ちされたことも全然気にしない様子で、バスの中で「今日は数学の授業があるよ」「ジミナ、体育の時は保健室にいる?」とか色々話しかけてくる。僕は舌打ちされたショックと、それから久しぶりの学校が怖くて、答える余裕もなくて…。
バスから降りると、もう学校の目の前。沢山の生徒が歩いていて、緊張する…。
「テヒョンおはよー。今日はジミナも一緒なの?」
「そうそう。○○、ジミナと同じクラスだったよね?ジミナ学校久しぶりで不安だと思うから、色々教えて話しかけてあげてね。」
も〜勝手にそんなこと言わないで欲しい。僕が自分では何も出来ないみたいじゃん…。情けなくて、泣きそうになる…。涙ぐんだ顔を見られたくなくて、僕は下を向いた。
学校に着くと、テヒョンが保健室に連れて行ってくれた。保健室の先生はとっても優しい女の先生で、僕はようやくホッとして顔を上げることができた。
「センセー、今日はジミナ連れて来たから。よろしくね。何かあったらすぐ僕を呼んでね。」
「テヒョンくんありがとう。もう教室に戻っていいわよ。ジミンくんおはよう。ちょっとお熱計らせてね。あと胸の音だけ聞いちゃおうか。ごめん、シャツをめくるね」
「…うん、大丈夫そうだね。どうする?教室で授業受けれそう?」
「あ、はい…」
一限目は数学の授業だった。僕は車椅子が大きいし、すぐに保健室に行けるように席は1番後ろのドア側だ。最近しばらくお休みしていたせいで、授業の内容が全然分からない…。こんなんで、学校に来た意味なんて、あるのかな…。
休み時間、朝会った○○が僕のところに来て話しかけてくれた。でも僕が、質問の答えだけ言ってすぐ黙ってしまうから、なかなか会話が続かない…。そのうち諦めて席に戻ってしまった…。手持ち無沙汰になった僕は、携帯をいじる。
そこにテヒョンがやってきた。
「あー!ジミナのこと頼んだのに、なんでジミナを1人にするんだよ!」
○○「いや、話しかけてたんだよ?でもなかなか…」
ああ、クラスのみんながこの会話をきいてるじゃん…。僕は居た堪れなくなって、自分で車椅子を動かし教室の外に出た。
テヒョンが追いかけてくる。
「ジミナー、そろそろトイレに行ったら?連れて行ってあげるね」
「え、大丈夫だよ。それぐらい自分で行けるし」
「ダメだよ。オンマと約束したでしょ?学校のトイレは家のと違うし…」
「わかったよ…」
僕は諦めて、学校で1つしかないバリアフリーの個室にテヒョンと一緒に入る。誰かに見られたら変に思われるのではないかと心配でキョロキョロしてしまうけど、テヒョンはそんなこと全く気にしてないみたい。
「ジミナお尻浮かして?ズボン下げるよ」
テヒョンは僕のズボンと下着を下げると、僕の脇に手を入れて僕を軽く持ち上げ、便座に座らせてくれた。それぐらい自分でできるんだけど…。
「テヒョン、見ないでよ?」
「分かってるよー。早く終わらせちゃいな?」
座って用を足すと、テヒョンが僕のズボンを上げて、また車椅子に戻してくれた。
次の授業は体育だった。バスケの試合をやるみたい。僕は今まで一度もバスケなんてやったことないし、ボールに触れたことすらないんだ。見ていると悲しくなるから、保健室に行くことにした。
「あ、ジミンくん。体育の時間だったのかな?一回横になって休もうね」
先生が僕を車椅子から抱き上げて、ベッドに寝かせてくれた。
しばらく休んでいたんだけど、だんだん、心臓が痛くなってきてしまった。この感じ、まずいかも。嫌だなぁ。先生に言いたくないな。。
「く、苦しいよ…ゼーゼー」
「ハァハァ…息が…(泣)」
「ジミンくん大丈夫!?」
「先生、テヒョンが、、薬を持ってる筈…」
「わかった、先生すぐに取ってくるから、ちょっとだけ待っていてね」
先生は走り出すと、すぐにテヒョンと一緒に戻ってきた。
「ジミナー!大丈夫?苦しい?」
「センセー、この薬!」
「分かった、座薬なのね。ジミンくんすぐに入れてあげるからね。苦しいよね。少しだけ我慢してね」
「ジミナは座薬苦手なんだよ。いつもオンマに入れてもらう時泣いちゃってる。クリームを付けて痛くないようにしてあげて」
テヒョンは僕をうつ伏せにして、僕が暴れないように、さりげなく僕の足を抑える。
「わかったわ。ジミンくんごめんね。ズボンと下着下げるよ?」
僕は、胸が苦しくて返事もできない…。
先生は手早くクリームを手に取ると、左手で僕のお尻を開き、右手で肛門にクリームを付けた。お尻がスーッと涼しくなって、見られているんだなと恥ずかしくなる。先生はそのまま座薬をグッと中に押し入れた。先生の指が奥まで入ってくる。
「うぅー…(泣)」
「ごめんね、すぐに終わるから。お薬でてきちゃったら困るから、ちょっとだけこのままで我慢ね」
「ジミナー大丈夫だよー力抜いてな!」
2人が声をかけてくれるけど、僕はパニックになっていて返事もできなかった。ただただ、早くこの時間が終わって欲しいとだけ…。
その時、突然保健室のドアが開いて、誰かが入ってくる音がした。
「センセー、○○が転んでケガした!手当してあげてー」
それはよりによって、僕のクラスメイトの声…。
「ごめん!今ちょっと…。すぐ終わるから保健室の外で待っていてくれる?」
「あ、はい。すみません…」
あー、絶対今、僕のお尻見られた…。座薬を入れられているところなんて、1番誰にも見られたくないところを…。
やっと先生が指を抜いてくれたけど、気まずい空気が漂った。
僕はたまらずに、とうとう泣き出してしまった。
「ジミンくんごめんね。先生がカーテン閉めなかったせいだ。焦ってしまって…先生今の子たちに口止めしとくから…」
「うん、俺からも絶対誰にも言わないように言っとくよ。ジミナ、気にすんなよー」
「う…そんなこと言って…やっぱり見られたんじゃん。1番見られたくないところ…。先生もテヒョンも、僕の気持ちなんて分からないよ。自分が僕と同じ目に合っても、本当にそんな風に言える?いつだって恥ずかしくて情け無いのは僕で…。今日だってこんなことになるなら学校なんか来なきゃ良かったよ…。」
言っても仕方のない言葉が、どんどん僕の口から出てくる…。
朝からの小さな積み重ねが、僕をたまらなく惨めな気持ちにさせていた。
いつでも頼りになってカッコいいのがテヒョンで、僕は泣いてばかりで…。
僕はなんでこんな風に生まれてしまったんだろう。オンマのお腹の中で、この出来損ないの心臓が止まってしまえば良かったのに。
心臓も痛くて苦しかったけれど、僕はそのままふらつきながらもベッドから立ち上がり、保健室を飛び出した。
さっきのクラスメイト達が、あっけにとられたように僕を見ていた…。
すぐにテヒョンが追いかけてくる。
「ジミナー!ダメだよ。車椅子は絶対降りないでってオンマに言われたでしょ。」
「来ないでー!もういいんだよ。どうなったって。僕の心臓が止まったって構わない!」
「何言ってんだよ。みんながおまえのこと心配してるの、分からないの?」
「嫌なんだよ。心配されるのも、可哀想って思われるのも…。テヒョンに世話してもらうのも嫌!もう僕に構わないで。」
足がもつれて心臓は苦しかったけど、僕は自分にできる限りの全速力で走り続けた。
「ジミナー!お願いだから止まってよ!ジミナが倒れちゃうよー!」
テヒョンは泣きながら追いかけてくる。
ああ、苦しい…。もう限界かも。これで死ねるのかな。そうだといいな。
そう思った瞬間、僕は校庭に倒れていた。
コメント
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これで2回目! 主様本当にありがとうございます!
また最初から読んでます♡