ジミンside
気付くと僕は、病院のベッドにいた。横にオンマとテヒョンが座っている。
「あれ?…僕…」
「学校で倒れて救急車で運ばれたのよ。ねぇジミナ、どうして走ったりなんかしたの?本当にもう少しで死ぬところだったのよ。」
僕は死ねなかったんだな…。死ぬことだって思い通りにはいかない、僕の出来損ないの心臓…。
テヒョンは横で怖い顔をしてずーっと黙っていて、一言も喋らない。
そこにジン先生がやってきた。僕が生まれた時から、僕の病気を診てくれてる先生。
「ジミナ!!起きたの?良かったーー。何やってんだよもう!!俺を心配させないで。なんで走ったりなんかしたんだよ?まずいって分からなかった?」
「ご、ごめんなさい…」
「おしおきに、お尻に注射するよ?ジミナが悪い子だからいけないんだよ。子供のくせに、勝手な真似をして!早くお尻出して」
僕は昔から、ジン先生にだけは逆らえない。厳しくても、いつも僕のことを思って守ってくれた先生。幼い頃病院の夜が怖くて泣いて家に帰りたいと言った時は、一晩中僕の病室にいて手を握ってトントンしてくれたっけ。
僕は諦めて、もぞもぞと自分でうつ伏せになる。左手はうまく動かないから、右手でなんとかズボンと下着を下げようとするんだけど、なかなか上手くできない…。いつもは何も言わなくてもテヒョンが手伝ってくれるんだけどな。結局見兼ねたジン先生がズボンと下着を下ろして、僕のお尻は剥き出しになった。
「あのね、ジミナよく聞いて。これからお尻に2本注射するよ。この注射は針も太いし薬液も多いから、刺すのも注入するのも正直すっごく痛いと思う。でもジミナの心臓は今とっても弱ってるから、これしか方法がないんだ。泣いてもいいけど、暴れたらダメ。分かった?」
「はい…(泣)」
「もう泣きそうじゃん。ほんとに子供なんだから」
「じゃあお母さんは、ジミナが動かないように足を抑えていてください」
「テヒョンー。僕の手握っててくれる…?」
僕は怖くて、思わずテヒョンに手を伸ばしてしまった。
「え?俺にお世話されるのなんて嫌だって、言ってなかった?もうジミナに俺は必要ないんでしょ?」
「ごめんテヒョン、僕…さっきは自分が情けなくて悲しくて、テヒョンに八つ当たりしてしまった…本当にごめん…。」
「オンマにも謝って。オンマが産んでくれた体を、粗末に扱っちゃダメでしょ。オンマがどれだけ泣いて心配してたか…。」
「オンマ、ごめんなさい…。僕、約束をやぶってしまった…」
「もういいのよ。オンマはジミナが生きていてくれたらそれでいいの。これからは自分の体を大切にして、絶対に無理はしないでね。分かった?」
「はい!じゃあそろそろ注射打つよ、いい?お尻出したままでそんなに喋らないでー!(笑)」
ああやっぱり注射は怖いな。しかも2本。でも僕にはテヒョンもオンマも付いてる。
「はい、最初は右のお尻に打つね。消毒するからスースーするよー」
「ジミナ〜力抜いて。動いちゃダメだよ。僕が手を握ってるからね!」
太い注射針が、僕の右尻に突き刺さってきた。「うぅぅぅぅ。い、痛ーい。(泣)」
覚悟はしていたものの、思っていたのの100倍ぐらい痛くて、僕は悲鳴をあげてしまう。
「今お薬注入してるからね。この注射は痛いって言ったでしょ。がまんがまん。」
「無理ー!早く終わってぇ〜(泣)」
僕は歯を食いしばって耐えた。
「はい、1本目終わったよー。」
ああ、やっと終わったけどまだ1本残ってるんだ…。僕は既に汗だくで、顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。
「い、痛かったよう…(泣)ハァハァ…」
「ジミナー大丈夫?ジミナはすごいね。こんなに痛いことに耐えられるなんて。僕が代わってあげられたらいいのに…」
テヒョンが泣きそうな顔で、僕の顔を覗き込んで、タオルで汗と涙を拭ってくれた。
「ジミナ、大丈夫?少し休憩しようか。準備ができたら2本目いくよ?」
僕はゆっくり深呼吸して、息を整えた。
「大丈夫。僕がんばるよ。早く終わらせてしまいたいし…。」
「ジミンえらい!昔だったら大暴れして逃げ回ってたのに。さっきは子供って言ったけど撤回するよ。」
「じゃあもう1本刺すよー。今度は左のお尻ね。消毒するよー」
さっきと同じ太い針が、左尻に突き刺さる。
「うー。痛ーーっ。うぅ…(泣)」
思わずまた声が出た。
「またお薬入れてくから痛いよー。ジミナあとちょっとだからがんばれ。」
「うぅぅぅぅ…」
僕はテヒョンが握ってくれる手をきつく握り返して、泣きながら耐えた。
「はい、終わったよー。ジミナえらかったね。」
ジン先生が僕のズボンを戻し、頑張ったねというようにお尻をポンっと叩いた。
「うわぁーん。めちゃくちゃ痛かったよう…(泣)」
涙が止まらない僕を、オンマが抱きしめてくれた。
僕はこの出来損ないの心臓と、これからも出来る限り長く生きていくんだと心に決めた。
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