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7 - 〈一次創作〉追憶~其の壱~(前話は「霞」です)

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2022年11月28日

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雑音まみれのカセットテープ。


その子は、それを何度も回していた。


「どうかしたのか?」


後ろの子がそう問いかける。


「思い出だよ、霞との。こっちは優良ので、こっちは…誰だっけ。」


帽子に少し隠れる眼が少し曇る。


この子は自分の名前を知らない。


この子は、生まれた時から「団長」と名乗っていた。


本人は自負しているが、実際のところは違う。


団長は、憶えるのが極端に苦手で、1時間前に聞いた話も繰り返して聞く。


人の名前は時に三回、時に十回聞かないと憶えられないほどの軟弱な記憶力。


でも、そんな団長でも、絶対に憶えている二人がいた。


それが「霞」と「優良」だ。


聞いた話によると、霞は育ての親、優良は自分の生涯かけての友達らしい。


…本人の話なので信じないが。


「…って聞いてるの?…誰だっけ。」


「…全く。ギリアだよ、ギ・リ・ア。」


俺はその場でため息を吐き、バールを握りなおした。


「そうだったそうだった、悪いね、ずっと立たせちゃって。」


団長はそう言いつつも、俺の兄…レギアのカセットテープを探すのに必死になっていた。


「名前書いてるんだけどな~…。え~っと…あった!これだ!」


汚いカタカナで書かれた「レギア」という文字。


「じゃあ、はめてみるよ。」


カセットテープがぐっと押し込まれる。


その瞬間、鳴ったのは――――




「お前ら!すぐに取り押さえろ!」


鳴り響く看守の声。俺と兄ちゃんはその声に怯えていた。


「怖いよ…。」


「大丈夫、ギリア。僕らが二人でいれば怖いものなしだよ。」


兄ちゃんは俺をぎゅっと抱き寄せると、小さく固まった。


「いたぞ!こっちだ!」


「嫌だ!離して!」


「うるさい!大人しくしてろ!」


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」


俺はその会話を聞いて耳を塞いだ。


ここは実験施設だ。俺と兄ちゃんの親は、ここに俺らを置いてどこかへ行ってしまった。


そして今、その機密情報が漏れたため、こうして子供を殺処分しているらしい。


「生きて帰ろう、ギリア。」


兄ちゃんは小さい声で、だけど力強くそう言った。


「もう一体いたぞ!」


俺らを見つけた看守がそう叫ぶ。


そして、それと同時に兄ちゃんは俺を抱き締めていた手を離して、看守の前に立ちふさがった。


「兄ちゃん!」


「大丈夫、任せとけ。」


兄ちゃんはいつもと変わらない笑顔で言った。


そして、看守の方を向くと、大声で、力強い声で看守たちに言った。


「殺したいなら俺を殺せ!ギリアには手を出すな!!いいか、これは契約だ!!!」


この一室に音が反響して響く。


看守たちは一瞬手を止めたが、すぐに気を持ち直して向かっていた。


「…兄ちゃん。」


俺は泣きそうな声で言う。


兄ちゃんは、それに反応して後ろを振り返り、言った。


「ギリア、生きろ。」




「…ふーん、こんな過去があったとは…。」


「…思い出させんな気色悪ぃ。」


ここから先は記録されていなかったし、俺も憶えていない。憶えているはずがない。


ただ一つ、分かっていることは。


俺が悪魔の血を引いているってだけ。


「ま、こんな感じですわ。また迷ったらおいで。君も記録しておくから。」


「はいはい。あと、ギリアな。」


俺はそう言い残して、ここを出ていった。


出た先には、茶髪の女が待っていた。


「行こっ!ギリア!」


「はいはい、ちょっと待って。」


…空は、嫌味なほどに快晴だった。



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