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私は再び、登山電車に揺られていた。座席にはミニポーチも置いてあって、死に装束を入れたトートバックも、ちゃんと棚に仕舞ったままである。

我に返った私は、そういったリアルな光景を確認して安堵出来たのだけど、さっきまで体験していた世界は愛おしく、あのまま夢の中で、目覚めることなく消えたかったとも思う。

車窓には、紅葉に染まる街路樹と、ゴシック建築の教会や丘の上の風車が映し出され、短いトンネルに入ると、色鮮やかに瞬く星々やロケットが流れていった。

私は何気に、この登山電車から見える景色に、何かしらの催眠作用があるのではないかと勘ぐっていた。

ところが、そんな推測は次の車内アナウンスで、木っ端微塵に打ち砕かれてしまった。


「次は停留所2番、ホームとの隙間がありますので、お足元にお気をつけください。傘の忘れものが多くなっています。降車の際にはお手荷物を今一度、お確かめください。次は、停留所2番です。今話題の小説・黒歴史のマダムたちはもうお読みになりましたか?上流階級の女たちが繰り広げる愛欲と憎悪、奈落に堕ちゆく女たちの過去に纏わる生き人形の呪い!新進気鋭のホラー作家、倉田まひろ邸宅へは、こちらの停留所が便利です。黒歴史のマダムたちの著者、倉田まひろの生み出す世界観は、こちらの停留所が便利です」


黒歴史のマダムたちは、私の商業出版デビュー作である。

短いトンネルを抜けるとそこは、私たち親子が暮らしていた団地の前だった。



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