【お願い】
こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります
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ご本人様方とは一切関係ありません
犯罪組織と戦うメンバーさんの、戦闘パロ のお話です
「…いくらなんでも遅くない?」
ないこがそんなことを口にしたのは、もうすぐ帰ってくるだろう子供組とあにきのための朝食を用意し終わってからだった。
予定ではこんなに時間がかかるはずがない。
それが連絡もなく遅くなるなんて、胸騒ぎがしたんだろう。
「あにきに連絡してみるか」
そう言って俺はスマホを取り出す。
だけど画面のロックを解除したまさにその瞬間に、外で車が停止する音がした。
ないこと顔を見合わせ、急いで玄関に向かう。
内側から鍵を解除するのと、外からそのドアが開かれるのが同時だった。
「…びっくりした!」
そこにいたしょにだは元々大きな目を更に見開いた。
そしてその一瞬後には我に返ったように顔を上げる。
「そんなことより大変なんよ! りうちゃんが怪我して…」
「え!?」
驚いたないこが声を上げるのと、しょにだの後ろからりうらを支えたあにきが姿を見せるのが同時だった。
「連絡する余裕なかった、悪い。まろ、りうら部屋に運んで」
ないこに謝りながら、あにきは俺にりうらを委ねる。
腹の辺りを怪我しているのか、押し当てられたタオルは血で真っ赤に染まっていた。
「急いで手当するから、その間にないこは本部に連絡。しょうとほとけから事情聞いて」
「分かった」
コクリと頷いたないこは、しょにだとほとけを引き連れてリビングへ向かう。
俺はりうらの体を担ぎ上げて2階の部屋へ向かった。
シーツが汚れるかもしれないけど今はそんなことに構っている場合じゃない。
「りうら、聞こえるか? ちょっとだけ我慢な」
そう言いながらベッド脇に立つあにきの前に、消毒やら包帯やらが入ったキャスター付きラックを転がす。
それを受けたあにきが止血のためにりうらの傷口をぐっと抑えた。
「…っ!」
叫びは声にならなかった。
苦痛に顔を歪めて唸るりうらに、あにきは「がんばれがんばれ」と穏やかに声をかけ続ける。
りうらを安心させようとしているんだろう。
そんな声音とは真逆に、表情は硬く手は休むことなくてきぱきと動いていた。
「まろ、ガーゼと包帯」
「ん」
指示される通りに道具を渡すだけしか役に立たなかったが、あにきはほとんど一人で作業を終えてしまった。
さすが医療員。
誰よりも1番体を鍛えているあにきが医療員だなんて、筋肉の無駄遣いだと思う。
フィジカルでならチームの誰よりも強固なのに。
「何があったん」
とりあえずの手当を終えてりうらの呼吸も落ち着いてきた頃に、俺はあにきにそう尋ねた。
残った包帯を片付けながら、あにきは苦々しい表情を浮かべる。
「今回の作戦、敵のアジトに侵入して壊滅させるはずやったやん」
あにきの言葉に、俺は頷く。
本来なら俺があにきの立場で赴くはずだった任務だから、作戦は頭に入っている。
「西側から侵入して、南にりうらを配置、やろ」
あのとき買い物に向かう途中の車内でないこと交わした議論を思い出しながらそう口にした。
「そう。まろの考えた作戦に落ち度はなかった。本来なら南に一人配置しとるなんて絶対気づかれへんはずや」
りうらの額に浮かぶ大粒の汗をタオルで拭いながら、あにきは続ける。
「それだけやない。全部読まれとった」
「…え?」
眉間に皺を寄せて、俺はあにきを見据え返した。
「読まれとったって…作戦を?」
尋ね返すと、大きく頷いて悔しそうに唇を噛む。
「…何でや。一体どこで……」
あにきがそう呟いたときだった。
「…あにき、まろ…」
ベッドの上のりうらが、掠れそうな声を出した。
「りうら! 無理すんな。ちゃんと寝とけ」
命に別状はないけれど、深手を負ったせいで熱までありそうだ。
胸を大きく上下させて呼吸をしながら、りうらはそれでも何かを言いたそうに俺たちを見上げた。
「…俺が…っ、やられたとき…敵は数人いたんだけど」
消え入りそうな声が、それでも何とか言葉を紡ぐ。
「…そのうちの一人…が、言ったんだ」
その時のことを思い出しているのか、りうらは途切れそうな声で続けながらわずかに唇を噛んだ。
「『ないこにすぐ報告しろ』って…」
りうらが継いだ言葉に、俺とあにきは思わず互いの顔を見合わせた。
「りうら、聞き間違いちゃうん?」
あにきの言葉に、りうらははっきりと首を横に振る。
その時の振動が傷に響いたのか、また顔を歪めてみせた。
「分かった。もういいから、お前はとりあえず体を休めろよ」
俺がりうらの赤い髪を一撫ですると、あいつは自分が耳にした事実を伝えられたことに安堵したのか、ゆっくりと目を閉じた。
「どう思う?」
すぐにでも眠ってしまいそうなりうらに背を向け、部屋の隅であにきと顔を突き合わせる。
「どうって…」
俺の問いに、あにきは当然言葉に詰まった。
困ったように後頭部をかきながら、吐息を漏らす。
「ないこが裏で敵と繋がっとるってこと? そんなん信じられへんやろ」
「……」
「でもりうらが嘘を言うとも思えん」
そう。りうらが嘘をつくメリットがない。
何かの間違いだとしても、そんな聞き間違いをするだろうか?
「とりあえず警戒だけはして、ほとけと初兎にはまだ黙っとこ」
あにきのそんな提案に、俺は大きく頷いて返した。
俺が部屋に戻ると、ほとけが先にリビングから帰っていた。
自分の机の前に座り、パソコンのモニターを凝視している。
ないこはほとけたちから受けた報告を組織本部に伝えるため、忙しなく動いているらしい。
「いふくん、聞きたいことがあるんだけど」
いつもテンション高めでふざけていることが多いほとけが、普段より低めの声で呼びかけてきた。
「何」と先を促すと、笑いもせずに俺の目を見つめ返す。
「僕のパソコン触った?」
ギクリと一瞬だけ肩を強張らせたのが分かったらしい。ほとけはその反応を受けて、小さく息をついた。
「…その顔はいふくんじゃないね」
キーボードをカタカタと操作しながらそんなことを言うものだから、思わず絶句してしまう。
「いふくんがやったんだったら、もっとうまくポーカーフェイスになるもんね」
一度言葉を切り、モニターを見据えたまま続けた。
「ないちゃん、この部屋に入れたの?」
直接的に問われ、今度は俺がため息をついた。
「…ん」と正直に答えると、画面を見ていたほとけが今度は俺をまっすぐ見上げる。
「本部管理のデータが抜かれてる」
「え…?」
「正確に言うと、抜き取られてるっていうよりはコピーして持ち出されたんだと思う」
「もうそこまで割り出せたん?」
「まぁね。足跡とか証拠とか消したつもりだったみたいだけど、ボクなら遡れるから」
また画面に向き直った後、苛立ちを表すかのように少し乱暴にエンターキーを押した。
「見る? ないちゃんが欲しがった情報」
一瞬息を飲んでためらった。
だけど目線だけで促される。
「見る?」なんて聞いておいて、言外には「見ろ」と命令されているようにしか感じない。
ゆっくりとほとけの方に近寄り、後ろからモニターを覗き見る。
その画面に映っていたのは、一人の男の写真とプロフィールを表すような箇条書きの文章。
「……」
画面を食い入るように見つめた俺に、ほとけが隣で続ける。
「ないちゃんの昔の恋人だよ」
「…え…?」
驚きを隠せずに、俺はバッと隣を振り返った。
それを気にすることもなくあいつは言葉を継ぐ。
「間違いないよ。プロフィールに、ないちゃんが前にいたチームのリーダーって書いてある。ないちゃんの元恋人って、リーダーだったって噂だから」
「この男が…?」
もう一度画面を注視する。
そこに映っていたのは、黒髪でピアスをつけた派手めの男。薄く色のついたメガネをかけていて、完全な素顔は伺えない。
「ないちゃん趣味悪」
不愉快そうに言って、ほとけは小さく舌打ちをした。
「でも一個気になることがあって」
「…何」
「この人、『除籍』になってんの。死んだって書いてないんだよね」
データの1番下までスクロールして、そう言う。
「噂では死んだって聞いてる。でも死んでない…としたら?」
這うような低い声で続けるものだから、俺は思わず息を飲んだ。
「この人が何で除籍になってるのか知らないし今どうしてるのか分からないけど、ないちゃんがこの人のデータを今更欲しがるってことは、まだ何らかの繋がりがあるか…」
一度言葉を切ったほとけが、一呼吸置いて続ける。
「これから繋がりを持とうとしてるか」
「…そんなわけないやろ。組織から抜けた人間とその後つるむなんて、聞いたことない」
ほとけの考えを否定する俺の声が、まるで自分のものじゃないみたいに低く響く。
「だから怖いんだよ。組織の外に出た人間と繋がりがあるかもしれなくて、更に今回、敵にこっちの作戦が全部筒抜けだったんだから」
「……」
「偶然かもしれないよ? 作戦が読まれたのはたまたまで、ないちゃんは単に昔の恋人を忘れられなくて彼の情報が欲しかっただけかもしれない」
「……」
「でも、警戒しておくべきだと思う」
ほとけの言うことは正しい。
そんなことは分かってる。
苦々しい表情で返事をしない俺に、ほとけは今までより深いため息をついた。
「…あのねぇいふくん。ないちゃんを信じたいのは分かるけど…」
「……」
目を逸した俺に、ほとけは続けようとした言葉を飲み込んだようだった。
同情するかのような静かな声で続ける。
「……ないちゃんの言葉が全部本当じゃないかもしれないって、警戒だけはしといた方がいいよ」
僕はこのことをあにきにだけは伝えとくから、と付け足して、ほとけはまたクルリと椅子を回転させてパソコンに向き直った。
コメント
3件
頭良さそうな作品に来てしまったと思ったらめちゃくちゃ面白いんだが!?頭が悪い僕からしたら( ᐛ )って感じだけど
桃さんの謎が多くなりましたね〜!! 元恋人は「除籍」で死んでいないからだから桃さんは水さんのパソコンを使って元恋人がどこにいるかや何をしているか調べたかったから青組の部屋に行った? 桃さん以外の人達、桃さんの事少しずつ警戒していますね˘𓂂- · -𓂂˘ 主様の小説の考察すごく面白いです◍˃ᵕ˂◍
桃さんの闇?謎?が深まるばかりですね…何が目的なのか……🤔 続きが楽しみです!!