テラーノベル
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翌日、学校の廊下を歩く姬愛の耳に、昨日の少年とのやり取りを想起させる囁きが届く。
「ねえ、あの子、また変な服着てるよ……」
「見て、昨日のあの子、変な人と一緒にいた」
姬愛は無言で歩き続ける。
声は届くけれど、感情は揺るがないふりをする。
でも、胸の奥に小さな違和感が芽生えていた。
放課後、姬愛は昨日と同じ古書店へ向かう。
角を曲がった瞬間、少年がすでに本棚の前に立っていた。
「……来たんだ」
無表情で、でも少しだけ安心した気持ちが混ざる声。
「うん、昨日の続きでも読もうかなって」
姬愛はそっけなく答える。
しかし、心の奥では、自分でも驚くほど少年と過ごす時間を楽しみにしていた。
そのとき、店の外で誰かが声を上げた。
「ねえ、あの子、またあんな格好して!」
姬愛は本をぎゅっと抱きしめ、少年の方をちらりと見た。
少年は眉ひとつ動かさず、静かに姬愛の背中を見守る。
その視線に、姬愛は心の中で小さく安堵した。
しかし、心のどこかで警戒も消えていなかった。
昨日のような安心は、一瞬で崩れるかもしれない。
誰も信じられない自分が、少年にだけ少しずつ心を許していく――それは、危うくも温かい感覚だった。
「……今日は、何か読んでみる?」
少年の問いかけに、姬愛は一瞬ためらい、そして頷いた。
その小さな行動が、姬愛にとっては大きな一歩だった。
孤独を抱えたまま、姬愛は少しだけ前に進む。
それは、まだ完璧な信頼ではない。
けれど、誰かに心を少しだけ開くこと――それだけでも、姬愛にとっては勇気のいる挑戦だった。
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