テラーノベル
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#正体バレ
#再会
図書室の空気が、少しだけ揺れた。
律は譜面から顔を上げる。
扉の向こうに、聖名が立っていた。
「律くん」
その声は、空気にやさしく届いた。
律の譜面が、彼女の気配に反応する。
「聖名……来たんだね」
律は立ち上がり、譜面を閉じる。
空気の端に、聖名の波形がふわりと浮かび始めていた。
「記録を、少しだけ……更新したくて」
聖名は、扉の前で立ち止まったまま言った。
「律くんの空気に、今の私を残しておきたいの」
律は静かに頷いた。
「うん。空いてるよ。譜面、開いてある」
聖名は一歩だけ前に進む。
制服の裾が揺れて、空気がそれを受け止める。
「図書室で、たくさん本を読んだから」
彼女は少しだけ笑った。
「言葉の置き方、少しずつ覚えてきたの」
律は譜面に指を置いた。
「聖名の言葉は、いつも静かで、ちゃんと届くよ」
「そうかな……」
聖名は、律の譜面を見つめる。
「届いてるなら、嬉しい」
律は一音を加えた。
聖名の波形が、空気の中心に静かに馴染んでいく。
それは、強い接続ではない。
でも、確かにそこにある記録だった。
「律くん」
聖名は、少しだけ声を落とした。
「もう少しだけ、話してもいい?」
律は、彼女の目を見て、やわらかく微笑んだ。
「もちろん。聖名がここにいてくれるなら、それだけでうれしい」
聖名は頷いた。
言葉はそれ以上続かなかったけれど、空気は静かに揺れていた。
譜面の波形が、二人の気配をやさしく包み込んでいる。
ねむるは棚の端で、記録の揺れを見守っていた。
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