テラーノベル
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2話目もよろしくお願いします!
スタートヽ(*^ω^*)ノ
金曜日
――ようやく一区切りついたキヨのデスク。
デスクトップには未読メールの山。
電話も鳴っていたが、今だけは無視する。
溜息ひとつ。目を閉じて、頭の中に浮かぶのはたった一人。
(……レトさん、元気にしてたかな。
全然連絡できなかった……)
スマホを手に取る。
最後のやり取りは、日曜の夜。「またね」って送られたスタンプ。
既読はつけたけど、返事できないままだった。
(……俺、最低だな)
そのあとの平日は怒涛だった。連日会議、出張、トラブル対応。
心のどこかではレトルトの存在がずっと引っかかっていたのに、
「今はダメだ」と押し込んで、気づけば5日も経っていた。
指先が震えるほど、怖かった。
(もしかして、怒ってるかな……
冷めたって思われてたらどうしよう)
けれど、やっぱり――
(会いたい)
その想いに、嘘はつけなかった。
ゆっくり、慎重に、けれど覚悟を持って、メッセージを打ち込む。
⸻
《キヨ》
「レトさん、今週ずっと連絡できなくてごめん。
仕事がバタバタで、やっと少し落ち着いたところなんだ。
……もしよかったら、週末会えないかな?」
⸻
送信ボタンを押す指に、ぎゅっと力が入った。
しばらく見つめたままの画面。既読はつかない。
キヨは深く深呼吸して、背もたれに倒れ込んだ。
「……頼むよ、レトさん……返してくれ……」
独り言みたいに呟いた声が、薄暗くなり始めたオフィスに吸い込まれていった。
『送った……』
小さく呟いて、スマホを机に伏せた。
見てしまうと、余計に不安になるから。
けれど、その沈黙は意外にも、すぐに破られた。
バイブが震える。
慌ててスマホをひっくり返すと、そこには――
⸻
《レトルト》
「……俺も逢いたかったよ」
「寂しかった。ずっと、キヨくんのこと考えてた」
⸻
(……!)
胸が跳ねた。
まっすぐすぎる、飾らない言葉。
一瞬、画面を見つめて固まる。
次に込み上げてきたのは、息を呑むような安堵と――
(……可愛すぎるだろ……)
張りつめていたものが溶けていく。
喉の奥が熱い。心臓が激しく脈を打つ。
頬を緩めたまま、キヨはそっとスマホを胸元に抱きしめた。
こんなにストレートに気持ちを言ってくれるなんて思ってなかった。
慎重で、臆病で、人に近づくのが苦手なレトさんが――
(……俺、絶対に手放さない)
その決意は、胸の奥で確かに灯った。
つづく
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