テラーノベル
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※自分の性癖をぶちこみました。本当にコンテスト参加作品なのかと疑うほど自分の地雷にしか配慮していません。ご注意ください。
淡い記憶の、古い君。
「オマエ、今日からオレの愛玩動物 な。」
抵抗する私の首を鷲摑みしながら不気味に笑う彼の姿が、涙で溶けていった。
8歳のころから同じシセツで共に過ごしてきた黒川イザナという男は、私のことをペットのように扱う。それも無理やり。あたしが嫌がるのを知っているというのに。
一度、どうしてこんなことをするのかと尋ねてみたことがあった。
「…別に気まぐれ。理由なんているか?」
自身の指にくるくると私の髪を絡めながら、イザナくんはそう言った。
幼く可愛らしい顔に似合わないあの心の中を簡単に見透かしてくるような笑みが苦手だった。あの笑みを浮かべたイザナくんは、決まって私の嫌がることばかりしてくるから。
きちんと「やめて」と言えない私も私だが、仕方がない。だって怖いんだもの。
私の首に重い首輪を巻き付けてくるイザナくんの手が、次の瞬間には私の首を絞めているかもしれない。今は上機嫌に私に微笑みかけているアメジストの瞳が、何かの気に障って今度は私のことを睨みつけてくるかもしれない。小さいころから喧嘩を繰り返しているイザナくんにとって、一般人の私を殺すなんて赤子の手をひねるよりも簡単なことだろう。
そう考えると、抵抗なんてできるはずがなかった。
─…だが、抵抗しなかったのがだめだったのだろう。
「オマエはどうすんの」
全てを溶かしてしまいそうなほどの高熱の籠る、8月の蒸し暑い日。ソーダ味のアイスを咥え、つまらなそうに外の景色を眺めていたイザナくんが突然、そう言葉を零した。
…どうする、とは?
彼に告げられたその問いが上手く理解できず、グルグルと頭の中を回る。
『えっと、どうする……って?』
困ったような音を乗せながら、私は彼の機嫌を損ねないよう慎重に言葉を選ぶ。
そして、困惑と動揺を隠すように冷凍庫から取り出したカップのアイスをスプーンですくい、口の中に放り込む。その瞬間、すっきりとした甘さが乾いた下に沁みこんでいった。
「オマエももう18じゃん、シセツ出たあとどうすんの。」
想像していたものよりも淡々とした口調で彼はそう答えた。
私たち孤児が暮らすシセツ───養護施設では、1歳から18歳までの児童が暮らしている。私とイザナくんは今年で18歳。一応法律では未成年と定められている年齢だが、世ではもう成人として扱われているようになる年。そして、シセツを出なければいけない年。
何らかの事情で必要がある場合は、20歳までの入所延長が出来るが、大体の子は18歳でこのシセツを出ていく。私や、恐らくイザナくんもそのつもりだ。
『…やっぱり、一人暮らしかな。一応先生と話はつけてるし、高校卒業したらすぐ引っ越しになると思う』
口に含んだ冷たい塊をゴクリと飲み込みながら、私はそう言葉を落とす。
クーラーの風が結ってない髪を靡かせ、どこか神秘的な雰囲気を保つ。
「ふーん」
毛ほども関心を持っていないような相槌が耳を通る。イザナくんが聞いてきたくせになんだその返事は、と言いそうになる自分の口を慌てて噛む。
だけどシセツを出ればイザナくんともしばらくお別れ。そうすれば必然的に“イザナくんのペット”としての生活も、今年でもう終わる。
そう考えると、体中の力がゆっくりと抜けていくような柔らかい安心感が心を包んだ。
そんな私を見つめるイザナくんの目が、不意に甘くなったような気がした。
「…一人暮らしするならさ、」
にこり。そう笑うイザナくんの不気味な笑みに、嫌な予感がする。
「オレと一緒に住もうぜ」
その言葉に、私は持っていたアイスのカップを落としてしまった。
この世のすべての闇を吸い込んだかのように真っ暗なクローゼットの中に自身の体を押し詰め、私は鼓膜に響いてくる足音と一人の男の声に全神経を集中させる。“いつ見つかるか分からない”という未知な恐怖でいっぱいになった頭では、普段は特に気にしない自身の呼吸音や、服の掠れる些細な音でさえも耳障りなノイズ音のように感じてしまっていた。
…本当はこんなはずじゃなかった。
彼が…イザナくんが出掛けた瞬間、すぐに“逃げ出そう”と思ったのに。
結局、恐怖に負けて逃げられなかった。体が思うように動いてくれなくて、咄嗟に近くにあったクローゼットに逃げることしか出来なかった。
こんなこと、ほんの少しの時間稼ぎにしかならないと分かっているのに。
『…くそ、』
血色の失った自身の唇を力いっぱい噛み、悔しさに眉を歪める。僅かに血の味がした。
ごめんなさい、新連載です
コメント
4件
くろと性癖が一緒かもしれない(( まじでこういう系書くの上手だね⁉️くろの書くドロドロ恋愛もの好きすぎるんだよ‼️ 8歳の頃からって言うのが、10年間イザナが積み上げてきた愛なのもあって、その分すっごい重いから年齢を重ねるたびにヤンデレさが増すんだろうなって勝手に解釈しちゃってます🫠 ほんとくろのストだけはヤンデレとか地雷がない🥹💗
うわん表現の仕方がほんとに だいすきすぎる😿💗 首輪要素とか監禁要素?とか もう普通の恋愛じゃ純愛じゃ 有り得ない雰囲気だから こ~ゆ~の本当に最高なの🥹🥹 ヤンデレってとこも安定に だいすきですっ ̫ ᴗ^♡