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この街は平和だ。

最近起きた身近な事件と言えば、教室で飼っていたハムスターの脱走だ。ホームルームが潰れたほどの事件だった。

回覧板や都市のあちこちにある掲示板には色々な事件が載っていたけど、わたしの周辺では特別大きな事件が起きた事はなかった。

……けど、今、目の前でそれが起きてる。

大柄な男性が剣を振りながらこっちに向かって走ってきていた。

非常事態以外、街中での戦闘行為は犯罪だ。

よく見ると、男性の後ろの方で女の人が手を伸ばしながら叫んでる。


「誰か! そいつを捕まえてーーー!」


剣を持った男性がだんだんとわたしに近付いてきているけど、周りの人は男性を避けてる。

……当たり前だよね。剣を振り回している人に近寄ったら大怪我するかもしれない。だから、止めなきゃ!!


「止まってーーー!!!」


私は男の前で手を広げて叫んだ。剣を持った男の人が目の前に迫ってくる。

……怖い。わたしは思わず目をつぶってしまう。


「どけーー! クソガキィーーー!」


怒鳴られて体がビクッとした。その瞬間、すごい衝撃が横から襲ってきた。

何が起きたかわからなかった。目を開けると、さっちゃんに抱きつかれた状態で露店に突っ込んでいた。

……さっちゃん?

目の前を剣を持った男性が通りすぎる。わたしのことは気にしてないみたい……。

……止めなきゃ。


「アリアちゃん! 動かないで!!」

「でも、止めなきゃ……」

「駄目!!」


さっちゃんに押さえつけられるてる間に、荷物を盗られた女性が叫びながら近付いてきた。

……泣いてる。……泥棒を捕まえなきゃ。

私は立ち上がって追いかけようとするけど、さっちゃんに抱きつかれて動けない。


「アリアちゃん!! 駄目!!」

「でも!!」


次の瞬間だった。離れてしまった泥棒の目の前に玄関のドアくらいの大きさの土の壁が現れて泥棒が突っ込んで派手に転んだ。

……え、なにあれ?

呆けてると、泥棒の上から人が降ってきて泥棒を押さえつけて何か言ってる。この距離じゃ聞こえないけど、「観念しろ!」的な事を言ってるのかな。

女性が追い付いて何か話しあっていて、泥棒は捕まえた人ともう1人によって拘束されて地面に転がされている。


「あ、えっと、捕まったみたいだね……」

「……アリアちゃん、何であんな危ない事したの。死んじゃったかも知れないんだよ……」


さっちゃんが泣きながら怒ってる。ものすごく心配をかけたみたい……。


「……ゴメン、体が勝手に動いちゃった……。助けてくれてありがとう。心配かけてごめんね」

「アリアちゃんは何時もそう……でも、だから……」

「うん、本当にゴメン。ゴメンね……」


とにかく謝った。わたしが何も考えずに危ない事をしたんだから、とにかく謝る。さっちゃんが何か言いたそうに泣いてるけどとにかく謝った。


「……嬢ちゃん達、大丈夫かい?」


突っ込んだ露店のおじさんに声をかけられた。

周りを見ると、お店の商品がたくさん散らばっていて弁償ものだとわかった。

……謝って、片付けたら許してくれないかな?


「あの……ゴメンなさい。商品を散らかしてしまって」

「気にすんな。嬢ちゃん達が無事ならそれでいいんだ。正直ヒヤッとしたぞ」

「あの、ごめんなさい、片付け……」

「だから気にすんなって。片付けとか弁償とか気にしなくていいから、早く帰って休みな。お友達も泣きっぱなしじゃないか」「ごめんなさい、ありがとうございます。……さっちゃん、大丈夫?」


さっちゃんを抱きながら声をかける。落ち着いてきたみたいだ。


「アリアちゃん、ありがとう。もう大丈夫だから」

「うん、よかったよ。ホントにゴメンね。助けてくれて、ありがとう」

「……うん、アリアちゃんが無事ならもういいよ」


いつものさっちゃんに戻ったようで良かった。

今回は本当に迷惑をかけてしまった。こんなに泣かれたのも、怒られたのも初めてだ。

……ホントにごめんね。心の中でもう一度謝罪する。


「さっちゃん、泥棒も捕まったみたいだし、もう帰ろう」

「そうだね、帰ろうアリアちゃん」


泥棒と、それを捕まえた人達を見ると、まだその場で話し合ってる。

……衛兵さんを待ってるのかな?

泥棒を捕まえた2人の男の人達をよく見てみると、革っぽい鎧を着ていて、腕に黄色い腕章をしてる。民兵組織の証だ。

腕章には組織名や個人番号などが書かれてるって聞いたことがある。

……あの人達……民兵さん達にお礼を言っておいた方がいいよね。泥棒を捕まえてくれたんだから。こっちを見ながら何か言ってるし。

そう思っていたら2人の内の1人がこっちに来た。空から降ってきた男の人だ。

いかにも戦士って感じのおじさんに見える。動きやすそうな鎧にロングソードを腰に下げてる。

黒髪の頭の上に耳が見えていて、尻尾がある。……獣人さん、かな? ニコニコしながら話しかけてきた。


「嬢ちゃん達、無事だったか? 何処か怪我とかしてないか?」

「あ、えっと、大丈夫です。友達が助けてくれたので」

「本当にビックリしたぞ。丸腰の子供が剣を持った男の前に立ち塞がるもんだからな。少し距離があったから助けられるか心配したが……お友達に感謝するんだな。そっちの獣人の子、お手柄だった。よく守ってくれた、感謝するぞ!」

「私は友達を守っただけです。感謝される様な事じゃないと思いますけど……ありがとうございます」


さっちゃんが謙遜してる。

……感謝されて当然だよ! 表彰ものだよ!


「さっちゃんのおかげでわたしは無事だったんだよ、ホントにありがとう!」

「アリアちゃん、もういいよ。さっきも一杯言ってくれたから。ありがとうね」

「何度でも言うよ! ありがとう!」


民兵さんは、ずっと笑顔で頷いてわたし達を見ていた。

永遠のフィリアンシェヌ ~わたしと私の物語~

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