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ある日の練習終わり。
練習室横の更衣室で、いつものように話していた二人。
「やっぱり、こうしてる時が一番落ち着く」
長椅子に座る俺の隣に、ふっかがもたれかかってきた。
「お前さ、最近甘えすぎじゃね?」
「いいじゃん、別に隠してるわけじゃないし」
「いや、そういう問題じゃ……」
言いかけた俺の言葉を遮るように、ふっかがくいっと俺のシャツを掴み、そのまま顔を近づけた。
「……照、ちょっとだけ」
「ちょっとだけって、お前な……んっ」
文句を言いながらも、拒むことなくふっかの唇に軽く触れる。
ほんの数秒のつもりだったのに、ふっかが離れようとしない。
「……おい、調子乗んなって」
「もうちょい」
「バカ、誰か来たら――」
「お、お前ら何してんの!?」
突然の声に、二人は一瞬で体を離した。
ドアの前に立っていたのは、目をまんまるに見開いた佐久間。
「は?え?……いや、ちょっと待って!俺、見ちゃいけないもん見た!?えっ、マジ!?」
「……佐久間、お前」
「いやいやいや!嘘だろ!?俺、普通に着替えようと思って部屋来ただけなんだけど!!」
あたふたする佐久間をよそに、俺は静かにため息をついた。
「……今更隠すつもりもないけど、そんなに驚く?」
「驚くわ!てか、もっと慎重にしろよ!ていうか、俺が見たことはどうするんだよ!?」
「別に、いいだろ?」
「よくない!俺、どういう顔してお前ら見ればいいんだよ!」
「……じゃあ、忘れて?」
ふっかがニヤッと笑いながら言うと、佐久間は勢いよく首を横に振った。
「無理だわ!こんなもん、忘れられるわけない!!」
「じゃあ、もう開き直るしかないな」
「ちょっと照!?」
「だって、ふっかが隠してるわけじゃないって言ったんじゃん」
「いや、それとこれとは話が……!」
「もういいじゃん、佐久間にはバレたんだし」
「いやいやいや、俺一人ならまだしも、これメンバー全員に知られたらどうすんの!?ヤバくね?」
「もうバレても良くない?」
さらっと言う俺に、佐久間は絶句した。
「え、マジで?お前ら、そのつもりなの?」
「まあ……流れに任せる?」
ふっかが肩をすくめると、佐久間は頭を抱えた。
「……もう俺は何も聞かなかったことにするわ」
「いや、今さらでしょ」
「頼むから、他のメンバーがいる時は、もうちょっと状況考えろよ……」
呆れたように言いながら、佐久間はそそくさと部屋を出て行った。
そして残された二人は――
「……どうする?」
「どうもしねぇよ」
「また誰かに見られたら?」
「そんときはそんとき」
そう言って、俺はふっかの手を引き、再び引き寄せた。
「……バカだな、お前」
「ふっかがな」
そう言いながらも、ふっかが少しだけ、嬉しそうに笑った。