うたくんから聞いた事実に、俺たち2人は驚いた。
あの時間の巻き戻りは__うたくんが起こしたものだった。
どういうことかと言うと__まあ端的に言うと、俺もじおるもそろもんが飛び降りて亡くなった世界線を経験しているということだ。
そしてその記憶を持ったまま、過去に戻ってきてしまった。
何故だろう…?
うたくんが起こした事らしいけど。 それじゃなんで俺らも…?
なんならそろあすも気づいてるっぽいし…
何はともあれ、そろもんが生きていてよかった。
あのまま時間が進んでいたら_
あすたも、みんなも、きっと…。
でも、時間が巻き戻り、そろもんが助かったのが事実。
ここは悪い夢でも見ていた…という事にしておこう。
本当に、よかった__
数週間後……
時計を見ると、今は9時前だ。
俺__あすたには、好きな人がいる。
そして今日は、勝負の日だ。
このご飯終わりに、俺は“彼”に告白するつもりだ。
付き合って欲しい、なんて贅沢な事を言うつもりは………まぁあるんだけど。
そう、僕の好きな人は男だ。
いつもはふざけていて、下ネタばかり言っているけど__
根はしっかりしていて、誰よりも人のことを見ていると、俺は知ってる。
みんなの期待を裏切らないようにいつも空気を読んで変なことを言うんだよな。
あいつの笑顔はキラキラしてる。大きく声を上げてケラケラと笑う。俺はその笑顔にも惚れたんだ。
「あぁ!!あすた〜っ!!」
「うわぁ!?ちょ、しーっ!」
俺の好きな人__そろもんは、慌てて口を抑える。
この公共の場で堂々と俺の名前を叫べるその勇気は一体どこから湧いたんだよ。
「ちょ、しっかりしてよ!俺ら一応YouTubeなんだよ!?」
「あっはは、ごめ〜ん!笑」
相変わらずヘラヘラしてるな、そろもんは。
まぁ、これが彼だ。
「それにしてもあすたから飯誘ってくれるなんて珍しいね!!」
「それは…その…気分だよ!そろもんとご飯食べたくなったの!」
「えぇ嘘ぉ〜!嬉しい〜!」
嘘だよばーか。お前に告白したいんだよ!!
あとは、あの件について…
(相変わらず反応かわいいな)
「よし!行こう!!」
えへへ〜と頭をかくそろもんの腕をぐいっと引っ張って、俺はお店の中に入っていった。
「__で、本当はなんで俺とご飯?」
ぎく。
「……あの時の話ね。」
やっぱりね〜とそろもんは腕を組んで、うんうんと首を縦に振った。
「そろもん、1回…飛び降りたよね」
「…そうだね。」
そう言ったそろもんはいつもより落ち着いた口調だった。
「1回、そろもん……」
その先は口に出したくない。
「うん、死んだ…ね。」
そろもんが代わりに言ってくれたから、俺は続きを話した。
「それで、俺は…なんと言うか、ヘラっちゃって…」
我ながら不甲斐ない。
「ご飯も食べてなかったの」
「うんうん。」
そろもんは相槌を打った。
「で、寝たの……それで、気づいたらあの日のあの時に戻ってた」
「そう、だね…それは俺も。」
曖昧な言葉でも、そろもんは理解してくれた。
「これ、俺ら…だけだよね」
「…多分ね!みんな何も言ってなかったし。」
俺らだけの秘密だねっ!と、歯を出して笑ったそろもんを見て、現実だと分かっていても改めて夢かと疑ってしまう。
でも、…とそろもんが俯いた。
「俺が死んだ世界線では…あすたは…みんなは、俺のために悲しんでくれたんだね…」
「そうだよ、張り合ってるわけじゃないけど俺自殺しかけたからね…?」
「え、そうなの?!!」
「2回死にかけたんだから笑」
「いやいや、笑い事じゃないよ?!笑」
「…だから、時間が戻った時はもうびっくりしたよ。そろもんを止めるのに必死だった…」
「俺もびっくりした…死んだはずなのに、生き返って…あすたに助けられて」
「今度は、助けられた…」
「本当に、ありがとね。あすた。俺の命の恩人だね」
そろもんは悲しそうな顔をしている。こっちも悲しい気持ちになってきた。
「ごめんね、あすた…俺、…」
珍しく凹んで戻らないそろもん。
俺は場を盛り上げようと、大きな声でこう言った。
「楽しい話しよっ!!」
とは言ったものの、話題は考えていない…こうなったら、秘密兵器だ。
「みて、っ!この子俺の実家の犬なんだけど…!めっちゃ可愛くない!?」
「えぇかわいい!!!」
…はしゃぐそろもん、ちょっと可愛い。
「お会計3800円になります」
俺は財布から5000円札を取り出してその金額を払おうとした。すると…
「7…8っと、これで!」
「3800円丁度お預かりします」
俺がお金を出す前に会計が終わった。
「え、そろもん?」
俺があわあわしていると、
「誘ってくれただけでじゅーぶん!!今日くらいカッコつけさせて。ね!」
と満面の笑みで言った。
「は、はぁ……?」
(ずるいって…)
余計惚れたんですけど!!
「あ、ありがとう」
店員さんは潮時を見極めるのが上手いようで、俺たちの会話をにこやかに見守った後
「ありがとうございました!」
と明るく言った。俺たちはぺこりとお辞儀をして店を出た。
もう辺りはすっかり夜だ。
居酒屋じゃなくて普通の飲食店を選んで正解だった…笑
あちこちのビルやお店の照明がキラキラと光り、まるでイルミネーションのようだ。
「すごいなぁ…綺麗だねぇ〜…」
そろもんもこの景色に見とれている。
告白するなら、今だ。
振られてもいい。自分の気持ちを伝えるんだ__。
「あのさ__っ!」
「ん〜?」
「そろもん…今から俺がそろもんのこと好き、……って言ったら…どうする?」
告白する勇気が抜けて行ったらしく、俺の告白は意味不明な語尾がついた。
もう訳が分からない。
(う〜、このあとどうしよ……)
そろもんは顎に手を当ててしばらく考えたあと……
「う〜んとね、ちゅーする!!」
予想外の答えに心臓が跳ね上がる。
(ちゅ、…ッ…はぁ!?)
「ぇ、ぁ、ぇ、…っ?」
何も言えずにあたふたしていると、
「なになに〜?あすた俺の事好きなの〜?w」
「は、ッ!?う、……す、好きだけど、っ何ッ!?悪い!?」
「え?」
「あ。」
つい口に出してしまった…!
慌てて自分の口を抑えたが、既にさっき、全て言い終わっていたのでだいぶ遅かった。
今ので確実にそろもんに自分の気持ちが伝わってしまったと気づいて、一気に顔が熱くなる。
(こんな顔…見せられないよ…)
ぎゅーっと目を瞑り、ぷいっと顔を背けていると…
ふと、唇に柔らかいものが触れた。
「んふぇ、!?!//」
くすぐったくて、つい変な声が出てしまった。
「かーわーいーいー!!」
驚いて目を開けると、目の前にはそろもんが居た。
…まさか。
「そろもん、今…何かした?」
「何もしてないよ?ちゅー以外!」
…え?
じゃ、じゃあ…さっきの柔らかいものは…
「口で、ちゅ、……キス…したの…?」
恐る恐る聞いてみる。
「…え、うん!」
…………え…
「えええええええ!?!」
「なになにwwうるさいw」
人に無断でキスしておいて、何がうるさいだ。
「俺…そろもんとキスしたの…?」
「えー?うん!w」
(ひゃぁぁぁ…まだ付き合ってもないのに…?!)
……けど幸せっちゃ幸せだ。
「でも…なんで?急にどしたの??」
「えーとね!俺もあすたのこと好きなんだ!!」
…え?
「…うそ、ほんと?」
「嘘つく訳ないじゃーん!!」
ずっと前から好きだったよ、とそろもんは言って、俺を正面から背中に手を回し__
_要するに、ハグした。
さっきキスされたという事実がありながら、ハグでもすっごく緊張する…心臓がバクバクする。心拍数500くらいだろうな。
だから、とそろもんは俺の手を取る。
「俺と、付き合ってくれない?」
「__ッ!」
いや、こんなことある?
俺から告ろうとしたのに…笑
でも、嬉しすぎる。
今までの事もあるのか…そろもんの元気で天真爛漫な声で「好き」そう言ってくれた事が何より嬉しくて、あの時みたいに自然と涙が溢れてきた。
「……ほんと意味わかんない…」
舐められてくなくて、強がってみる。
……が、どうやらそろもんは全てお見通しらしい。
「もー泣かないの!笑」
よしよし、と頭を撫でてくれるその手は温かかった。
「これ…現実?w夢なら一生覚めなくていいや…」
「現実なんだよなぁ〜!」
と言ってそろもんは俺のほっぺをふにふにしてくる。一応大人なんだからやめろ。
…そろもんだから許す。
「じゃ、これから恋人としてよろしく…でいいよね?」
「もちろん…!よろしくね!そろもん!」
そろもんは、俺を家まで送ってくれた。
「わざわざありがとね!」
「いやいや!俺ん家も別に遠くないし!」
そういう所も大好きだよ。
「じゃーね!バイバーイ!!」
「うん!気をつけてね!…あ、そろもん!」
帰ろうと後ろに歩き出していたそろもんが俺に呼ばれてくるっと方向転換してこちらを向く。
俺はそろもんに抱きついた。
「気をつけてね、おやすみ」
「うん、平気。おやすみ!」
__そう言って、2人は軽いキスを交わした。
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コメント
7件
口角上がりすぎてやばい好き あすたくんの「嘘だよばーか」がまた刺さった…… 本当に好きすぎる 告白する時にもう心の中で「きゃー!!!」って叫んだ
1000にしといたよ、、、、疲れた、、、、、、、、、好きっっっっ、もう好きよっっっ、結婚しろっっっっ、、、、、