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すの短編

3 - 手術前夜 💛💙

♥

517

2025年02月25日

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病室に毎日青い花が届く。

これでもう1週間になる。

花の種類は様々だ。

届く時間も、色々。

朝早くのこともあるし、深夜の場合もある。

看護師さんが届けに来ることもある。



共通しているのは、花の贈り主が内緒だということ。

恥ずかしがり屋の贈り主は、明らかに俺が眠っている時を狙って届けに来ている。

目を合わせたら二度と花が届かない気がして、起きていても俺は眠っているふりを続けている。







今夜は手術前夜。

月も出ていない夜で、灯りを消して真っ暗な病室で俺は待つ。



日付が変わろうかという頃、音も立てずにドアが開いた。

俺は眠っているふりをして、いつもどおりに、その人物が出て行くのを待つ。



しかし

今夜はいつもと様子が違った。

花瓶に花を挿した後、人影は出て行かずに枕元に立ったまま。

やがて小さく啜り泣く声が聞こえてきた。

穏やかじゃないなと思ったが、目を覚まさない約束なのでしばらく我慢して俺は目を閉じていた。



決して大きくはない冷たい手が、俺の髪を撫でる。



俺は、そっと薄目を開けた。



小柄で華奢な体躯。

ウェーブがかった柔らかな髪が窓の外の街灯に照らされている。



💛…なんで泣いてるの


💙手術に絶対は無いって聞いた


💛大袈裟だな


💙照に何かあっても、俺には直接連絡が来ないから



翔太の頬を両手で包む。

包まれた手に、翔太の涙が零れる。



泣くほど好きで、心配してくれているんだと思ったら、翔太の涙を冗談にして笑えなくなった。



💛今夜は泊まっていけば


💙でも



翔太の目の奥の光が揺れる。



💛個室だし、俺、VIPだから



💙ふは、偉そうに



ふわっ、と病室が柔らかい空気に変わる。



翔太はしばらく迷っていたが、仔猫みたいに、俺の横に滑り込んで来た。



キスを交わす。


見つめ合う。


やがて翔太は眠りに落ちて、寝返りを打った。


俺はいつまでも愛しいその背中を抱きしめた。



一人じゃないんだと思える。

俺には愛する人がいるのだと。

この世の終わりみたいに、静かな夜だった。





おわり。

この作品はいかがでしたか?

517

コメント

10

ユーザー

やー切なさと温かさと混ざって とってもいいです💛💙 ニコイチ推しでしたが 最近はすっかりいわなべです💛💙

ユーザー

うわあいい…めちゃめちゃいいですね✨ やっぱ💛💙最高😆😆

ユーザー
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