病室に毎日青い花が届く。
これでもう1週間になる。
花の種類は様々だ。
届く時間も、色々。
朝早くのこともあるし、深夜の場合もある。
看護師さんが届けに来ることもある。
共通しているのは、花の贈り主が内緒だということ。
恥ずかしがり屋の贈り主は、明らかに俺が眠っている時を狙って届けに来ている。
目を合わせたら二度と花が届かない気がして、起きていても俺は眠っているふりを続けている。
今夜は手術前夜。
月も出ていない夜で、灯りを消して真っ暗な病室で俺は待つ。
日付が変わろうかという頃、音も立てずにドアが開いた。
俺は眠っているふりをして、いつもどおりに、出て行くのを待つ。
しかし
今夜はいつもと様子が違った。
花瓶に花を差した後、人影は出て行かずに枕元に立ったまま。
やがて小さく啜り泣く声が聞こえてきた。
穏やかじゃないなと思ったが、目を覚まさない約束なのでしばらく我慢して俺は目を閉じていた。
決して大きくはない冷たい手が、俺の髪を撫でる。
俺は、そっと薄目を開けた。
小柄で華奢な体躯。
ウェーブがかった柔らかな髪が窓の外の街灯に照らされている。
💛…なんで泣いてるの
💙手術に絶対は無いって聞いた
💛大袈裟だな
💙照に何かあっても、俺には直接連絡が来ないから
翔太の頬を両手で包む。
包まれた手に、翔太の涙が零れる。
泣くほど好きで、心配してくれているんだと思ったら、翔太の涙を冗談にして笑えなくなった。
💛今夜は泊まっていけば
💙でも
翔太の目の奥の光が揺れる。
💛個室だし、俺、VIPだから
💙ふは、偉そうに
ふわっ、と病室が柔らかい空気に変わる。
翔太はしばらく迷っていたが、仔猫みたいに、俺の横に滑り込んで来た。
キスを交わす。
見つめ合う。
やがて翔太は眠りに落ちて、寝返りを打った。
俺はいつまでも愛しいその背中を抱きしめた。
一人じゃないんだと思える。
俺には愛する人がいるのだと。
この世の終わりみたいに、静かな夜だった。
おわり。
コメント
8件
うわあいい…めちゃめちゃいいですね✨ やっぱ💛💙最高😆😆
あずきさんへ!! やっつけみたいになってない? 一応、テーマ的には書きたかったやつです💛💙