普通の人間なら、呪いを持った者が住む家などいたくないだろう…。しかし、目の前にいる少女は、呪いのことを知って、そのうえでこの家に滞在し、住みたいとまで言っている…。
「どうして…。」
私がそう言うと、彼女は少し考え込んでから話し始めた。
「………貴方が私を助けてくれた時、私がどこで倒れていたか覚えているかな…?」
「確か…、田んぼが見える道…?」
「倒れる前にも少し見たけど、田んぼでは、作業している人も結構な人数いたし、あの位置ならきっと、背の高い稲に囲まれていても倒れている私のことは見えたはずだよ…。つまりあの人達は、倒れている人がいても、平気で見てみぬふりができるということ…、他の人達も、呪いを持っているというだけで、仕事すら与えない…、そんな人達よりも、私は貴方がいい。貴方と一緒にいたい。」
そう言って、彼女は私に暖かい笑顔を向けた。
それは、もう忘れかけていた、自分に向けられた暖かい感情…。
まるで、生きていて良いと言ってもらえたようでだった。
胸の奥から何かが込み上げてくる…。だんだんと視界はぼやけていき、目に溜まった水はとうとう溢れ出してしまった。
彼女は、暖かい笑顔のまま手拭いを私に差出し、ゆっくりと話を続ける。
「もう一度聞くね。…私をここに住まわせてくれないかい?」
それに対し、私が無言で頷くと、彼女はありがとうと言って、先程とは違う、嬉しそうな笑顔を浮かべた。
その時の光景は、それまでに見たどんなものよりも、美しく、輝いて見えた。
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