テラーノベル
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遊園地ロケは午後へ。
午前中だけで、予定していた撮影はほとんど順調に終わっていた。
残るメイン企画は一つ。
「観覧車」
────────
💜side
「最後はこちらです」
スタッフに案内され、観覧車の乗り場へ向かう。
ふっかは資料を見返した。
今日のページには、一文だけ。
『夕暮れの観覧車。二人きりの時間を過ごしてください。』
それだけ。
💜「ざっくりだなぁ」
💛「最近ずっとこんな感じだね」
💜「監督、俺らに任せすぎじゃない?」
照が笑う。
💛「その方が撮れ高あるんじゃない?」
────────
ゴンドラに乗り込む。
ドアが閉まり、ゆっくりと動き出した。
下ではスタッフが小さく手を振っている。
完全に二人きり。
💜「静か」
💛「うん」
遊園地の賑やかな音が少しずつ遠ざかっていく。
ふっかは窓の外を眺める。
夕日が街をオレンジ色に染め始めていた。
💜「きれいだな」
💛「今日天気よかったしね」
しばらく景色を眺める。
会話がなくても、不思議と落ち着いた。
────────
💛side
ふっかが窓に夢中になっている。
その横顔を何気なく見る。
風景を見て笑う顔。
子どもみたいにはしゃぐ姿。
昔から知っているはずなのに。
最近は、前より目で追うことが増えた。
(……何考えてるんだ)
自分で自分に苦笑する。
すると。
💜「照」
💛「ん?」
💜「今日さ」
💜「楽しかった?」
突然の質問。
💛「楽しかったよ」
💜「仕事だからじゃなくて?」
照は少し考える。
そして、素直に答えた。
💛「普通に楽しかった」
💜「そっか」
ふっかは嬉しそうに笑う。
💜「俺も」
────────
観覧車は頂上へ近付く。
ふっかが小さく息を漏らした。
💜「高いな」
💛「苦手?」
💜「いや、大丈夫」
少しだけ体勢を変えた拍子に。
ゴンドラが揺れる。
💜「うわっ」
ふっかの肩が照の腕へ軽くぶつかった。
💛「大丈夫?」
💜「びっくりしただけ」
照は何気なくふっかの腕を支える。
ほんの数秒。
それだけのこと。
でも。
ふっかは照の手を見つめたまま動けなかった。
💛「……ふっか?」
我に返る。
💜「あ、ごめん」
照もゆっくり手を離した。
そのあと二人とも、少しだけぎこちなく笑った。
────────
ロケ終了。
スタッフが拍手で迎える。
「お疲れさまでした!」
監督がモニターを閉じながら二人へ歩いてくる。
「今日の観覧車なんですが」
💜「はい」
「ほとんどカットしないと思います」
💛「そんなにですか?」
「自然だったので」
監督は少し笑う。
「最初の頃は”恋人を演じよう”としていました」
「でも今日は違いました」
「ただ一緒に楽しんでいましたよね」
照もふっかも返事ができなかった。
図星だったから。
────────
帰りの車。
スタッフは別の車両。
後部座席には二人だけ。
珍しく会話が少ない。
しばらくして。
ふっかが窓の外を見たまま口を開く。
💜「照」
💛「ん?」
💜「最近さ」
💜「仕事終わったあとも、この企画のこと考えちゃうんだよね」
照は黙って聞く。
💜「前はオンオフ切り替えられてたのに」
💜「最近できなくて」
少し笑って誤魔化そうとする。
💜「職業病かな」
照はすぐには返さなかった。
同じだったから。
家に帰っても。
ジムにいても。
気付けば、ふっかのことを考えている。
でも、それはまだ言えない。
💛「……企画終盤になってきたからじゃない?」
そう答えるのが精一杯だった。
ふっかは小さく頷く。
💜「そうかも」
窓へ視線を戻す。
けれど二人とも、本当は分かり始めていた。
“役”を家へ持ち帰っているんじゃない。
持ち帰っているのは。
少しずつ変わり始めた、自分の気持ちだった。
コメント
1件
あらすじ読んだよ〜🥀 観覧車、いいシーンだった。 ふっかと照、二人きりのゴンドラで『仕事の延長じゃない楽しさ』を確かめ合う感じ、すごく胸にきた。 『カットしない』って監督に言われるところ、自然体がそのまま映り込んでるって意味で切なかった。 本当はもう“役”じゃないのに、まだ言い出せないもどかしさがじんわり伝わってきたよ…。 続きが気になる🌙
yuka🌃🪽💎
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