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「この取っ手を握っていれば、釣り用の魔道具も、何なら船も操作できる。使い方はエイダンなら握ればすぐに理解できるだろう。
それではまず、集魚用の灯火魔道具をつける。この灯火は一度点ければ、明示的に消す操作をしない限り点けっぱなしだ。強烈な明るさだから、魔道具を直接は見るな。エイダンなら魔法で確認できるだろうから、目で見る必要はなさそうだけれどな」
「わかりました。直接目で見ないようにします」
「ああ。それでは点けるぞ」
その言葉の直後、一気に明るくなった。
カラマロ釣り魔道具につけられた灯火魔道具が、強烈な光を発して海面を照らしているのだ。
通常の灯火魔法と比べると、段違いに明るい。
これだけの明るさを放ち続けるには、相応な魔力が必要だろう。
しかしこの船には、周囲の魔力を吸収する魔道具がついている。
急襲した魔力は基本的には船の航行に使うけれど、船が停止している間なら他の魔道具にも十分に供給できる。
だからマシューさん自身の魔力は、船と魔道具を同時に動かさない限りは、制御に必要な程度しか使用しない。
知れば知るほどこの船、釣り用魔道具としてよく出来ている。
「だいたいこの状態で30分くらいすれば、付近に魚が集まってくる。だから今のうちにエイダンも、カラマロ釣り魔道具を使用可能な状態にして、反対側の灯火魔道具をつけておいてくれ。やり方は今見たとおりだし、何なら反対側の取っ手を握ればわかる様になっておる」
「わかりました」
ということで船尾側を通って船の反対側へ。
取っ手を握ると、船の状態についての情報と、こちら側に接続されたカラマロ釣り魔道具の状態が、頭の中に流れてきた。
船は無動力状態で、船尾の帆を出して風に対して正面向きになるようになっている他、前方の海中に巨大な帆みたいなものを出して、船が波に対して正面を向き、また水中での位置が動きにくいようにしている。
船尾の帆も海中の帆も、この取っ手か船室内の操縦桿で巻き上げたり展開したり出来る模様。
更には海中の状態も、魔法的に見ることが可能だ。
カラマロ釣り魔道具については、収納状態で灯火魔道具も発動していない。
それでも仕掛けは巻き取られた形で準備出来ていて、魔道具を展開にしたらすぐに使用可能な状態になっている。
確かにこれだけ魔術でサポートできていれば、1人でほとんどの作業が可能だ。
もちろん陸にいる時に、仕掛けをセットしたりする手間は必要だけれど。
とりあえずカラマロ釣り魔道具を展開して、灯火魔道具を点灯。
そして反対側、マシューさんがいる方へと戻る。
「海上での作業がほとんど魔術で出来るんですね、この船は」
「ああ、船も釣り用の魔道具も、全部そう出来る様になっている。インガンダ・ルマなどを手持ちの釣り竿で使うときは、仕掛けの巻取りの補助だけだがな。
あとカラマロ釣りの場合、こんなものも用意する。ちょっと待っていてくれ」
マシューさんは船尾にある収納庫へ行って、そして小さめのバケツみたいなものを2つ、持ってきた。
中には濃い茶色の液体が入っている。
「釣れたカラマロのうち、手のひらを思い切り伸ばしたときの手首から中指くらいの大きさで形のいいものを、この中に入れる。釣れてすぐよりも外で軽く放置して水を吐いた後、入れてやる方がいい。そうして陸に帰った後に中から出せば、ちょうどいい味になっている。
汁がこぼれない程度ぎりぎりまでカラマロを入れてくれ。それでちょうどいい味になるようにしてある。だいたい100杯といったところだな。
ということで、こっちのバケツはエイダン用だ」
「わかりました。ありがとうございます」
マシューさんからバケツを受け取って、とりあえず魔法収納へ。
ついでに味と成分を分析しておこう。
今後、カラマロを釣る機会があるかどうかはわからないけれど。
とりあえずこれを作って食べるのが、猛烈に楽しみだ。
「さて、もう少ししたら仕掛けを海に入れて、カラマロ釣りを始める。カラマロを誘うために仕掛けを上下させたり、どのくらいで上に上げるかのタイミングがあるから、最初はこっちでやり方を見ていてくれ。エイダンならここからでも、魔法で海中の動きが見えるだろう」
「ええ、大丈夫です」
いよいよ釣りか。
本命のインガンダ・ルマ釣りではなく、そのエサにするカラマロ釣り。
それでももう楽しそうで仕方ない。
海中にも、かなり動きが出てきている。
光を放ったことで、まずは魚よりずっと小さな豆粒以下の生物が集まってきていて、今はその微小生物をエサにする小魚が少しずつ集まってきている状態。
もう少しすれば、今度は小魚をエサとするカラマロが集まってくるのだろう。
というか、既にある程度は集まってきている気がするけれど。
ただどの位から釣りを始めるかは、経験者に従った方がいいだろう。
ということで、釣り開始を今か今かと待っている状態だ。