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続きです
パラオ「…………〜、」
数十分経ってから、またドアの開く音が響いた
少年は、本棚の横に縦かけてある姿見に
手をかざしたり、覗き込んだり
声一つあげないものの不思議がっているのは明白だった
日帝「……」
そんな様子を横目で見る私に、きっと気づいてはいないだろう
少年が部屋を後にしている間に新しくした
お茶が入ったカップを手に取り、冷えた指先を温めた
カップの水面に映る自身の顔、表情
こんな無愛想な表情、怖がられても仕方がない
ずっと、私は変わっていないのだから。
変わる勇気なんてないのだから。
スッ…
目を閉じて、カップから目線をそらす
気づけば日は暮きり窓の外は暗かった。
(ガタッ
パラオ「!、」
ビクッ
椅子から立ち上がり、羽織っていたカーディガンとひざ掛けを椅子にかけ、こちらに目を向けた
……
コツッ、
コツッ……
パラオ「……ぁ、ッ、」ゾクッ
こちらに向かってくる足音に、脚がすくんでしゃがみ込んだ
パタッ、
いけない、怒らせてしまった、
謝らなくちゃ、
そうじゃ……ないと、……ッ
込み上げる焦燥感と心臓の音
真っ白になった脳内と、それでも染み付いて再生される雑言
違う、ッ、この人は…………
ギュッとまた、目を瞑った
僕は弱虫だ
すぐ怖気付いてなにも成し遂げられない
信じるべき人が近くにいても、きっと気づかないだろう
冷たい石壁に命を乞っていた日を思い出せば、これから何が起きたって大丈夫、……
きっと、
……
日帝「……!」
見下ろす私に、今にも泣きそうな瞳でこちらを見つめ返す少年
部屋の淡いオレンジの照明が反射するその金色の瞳は、棘のある薔薇のように美しい
私を見透かす目
誰かを信じようとする目
パラオ「!……ッ、、……」
……、ご、めん…な…さい
俯いてしまいそうな顔を、無理やり止め着けるように上にあげる
日帝「……どうして、謝るの」
差し伸べかけた手を引き、窓から入る風に靡く髪を抑えた
パラオ「!、……」
勝手に、……触った、から、……
日帝「…………」
少年、……いや、パラオは、
……
私と似ている。
フラッ……
しゃがみ込んだ少年に背中を見せるように振り返り、窓を閉め、カーテンをかけた
シャァッ……
暗い空に鍵をかけるように覆い被さるビジョンブルーのカーテン
難ありきな……いや、
なんとも言えない日だった。
日帝「立って。」
起きてても構わないけど、私は行くから。
パラオ「…………ぅ、ん、……」
日帝「……」
それと、パラオ
パラオ「!……ぇ、ぁ、」
日帝「部屋に戻ろう。」
廊下の明かりは消してしまうから。
僕にそう言い
少しかたい笑顔を浮かべながら手を差し出される
ピトッ、
その手先と、僕の指先が重なる
冷たいようで暖かい。
ほんのり赤く、細い指が僕の手首を掴み、
バッ
パラオ「わ、……ッ、」
タッ
足音を揃えるように体制を整える
やはりこの人は不思議だ
まるで、自我を持とうとするパペットみたいに
……
哀れんでいるような、それでも淡く解けてしまいそうな冷淡な瞳
こちらを見下ろすその瞳がそう見えるのは、僕の気の所為だろうか
パラオ「ぁ、……の、……」
日帝「……」
長い廊下を抜け、着替えた部屋に戻る
開けられていた窓を閉めて
立ち尽くしていた僕の横を通り過ぎようとした女の人に、声をかけた
自称するほど小さな声で
気づいてもらえるかさえ不安だったが、相手は意図を汲み取ってくれたらしい。
パラオ「あの、……」
その、……僕ッ、
どうして……、
日帝「……」
パラオ「僕、……」
何も、してない、……し、
なんで……
ギュッ
日帝「……!」
ビクッ
そう聞いたあと、込み上げる気持ちを抑えられなくなった身体が動き
長いスカートの裾を掴んだ
パラオ「僕、……捨てられちゃう、?」
何……すればよかった、……ですか、
……ッ
、
日帝「…………、」
数秒、同じ表情で固まってこちらを見ていた
僕にとってとても長い数秒間を終えたとき
そして、ゆっくり声を上げるように口を開けた
日帝「……」
好きにすればいい。
パラオ「!」
日帝「知りたい事があれば本を読んだって構わない。」
眠たければ寝ればいい
ここに居たいのなら……いればいい
パラオ「……ッ、ぇ…」
その言葉は
今まで僕が縛られてきた束縛を解くように、
僕を解放する言葉だった
日帝「私は君をこき使いたくて買ったんじゃないから。」
だから、君がここから出たいと言うのなら
私は君の意見を尊重する。
パラオ「僕の、……意見、?」
日帝「…………」
そう。
……
静かに首を振り、視線を奥のベッドにずらす
日帝「この話はやめにしよう。」
じゃぁ、私は出る。
パラオ「ぁ、……」
サラッ
そっと手から離れたあの人の裾
置いていかれたような。
もどかしさが胸に残った
バサッ
そっとベッドに上がると、まだひんやりと冷たいシーツと、布団にくるまる
まだカーテンが閉まっていない窓からは、微かに月光が差し込んでいた
“君の意見を尊重する”
胸に刻まれた音声が体を巡る
僕はどうしたい?
僕は、……
ここを出て、
新しい世界を見たい
いや、……
違う
僕は、……僕は、
瘡蓋が出来ている頬を撫でながら、脳裏にこびり付く苦しさに瞳を揺らす
そうだ、僕は
、信じたい人と、信じた人と
一緒に……
、
どっと出た疲れが、僕の睡魔を呼び起こした
数日前には有り得なかった目の前の暮らしで
僕は気絶するように眠りについた
いいねが沢山ついた、2、3日後に続き出すので待っててください🙇♀️
ありがとう、じゃあね!