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「___という訳なんです!」 いつもの屋上、珍しい二人きり、あり得ない本人を相手にした恋愛相談。
情報屋として、ある程度は覚悟していたけど、このパターンは想像してなかった。
朝倉くんとデートしたけど、イマイチピンと来ない。それはきっと、佐伯先輩の事が好きすぎるからだと思う___
なんて話を、私、佐伯佳奈本人に持ってくるとは、めちゃくちゃ大胆なのか、めちゃくちゃ無神経なのか。
いや、両方かも。両方を足して、2で割らないタイプかも。
「いや……そのですね………」
力が抜けた手から、お弁当と箸が落ちそうになるのを、なんとか押さえながら、次の言葉を探す。
探しても探しても、解は見つからない。
私に相談するのはおかしいというのも、ミキちゃんが相談出来る女子が私くらいとか、恋のキューピットと呼ばれてるほどの相手なら、良い答えをくれるだろうと思ったとか、そういう健気な理由があったら、否定するのは良くない。
良くないだけに、私との恋愛相談が、私に持ち込まれてしまったという状況で、どう答えたら良いのか分からない。どう答えろと言うのだ。
「あっそうだ! 佐伯先輩!」
「は、はい!?」
なんか閃いたみたいだけど、ヒロインちゃんの閃きは、大抵碌なことが無い。
無茶苦茶な展開に持っていかれると、相場は決まっている。
「ボク、佐伯先輩とデートがしたいです!」
それ見たことか。案の定、突拍子も無い事を言い出したぞ……って、デート!? 私と!?
いや、今までも服を選ぶとか、お茶会に誘われるとかはあったけど、あれは友達とお出かけとか、お家に招かれたとかであって、デートとは違う。
言葉の定義がどうとかではなく、このギャルゲー世界でデートという言葉が出たという事は、つまりそういう事だよね。
「デート……で、ございますか。お出かけやお茶会ではなく……」
「はい! デートがしたいんです!」
私の確認に対して、ミキちゃんは目を爛々と輝かせて頷いた。藪蛇だったかもしれない、確認しなければ、ミキちゃんが言葉の意味を取り違えてた説も残ったのに。
というか、ミキちゃん。あなた相談しに来たんだよね? 全部一人で話進めちゃったけど。
「まあ、二人でお出かけするという事でしたら……」
ああ、流されるようにOKしてしまった。
ミキちゃんは、無邪気に喜んでいる。喜ばれた事自体は、とても嬉しいけど、なんか、後ろめたい気持ちでいっぱいだ。
********
当日、いつもの清桜駅前を集合場所にセッティングしたけど、ここにヒロインちゃんを呼ぶのは、毎回緊張する。
描画範囲外で、ヒロインが消えちゃう法則は、ぼんやり推測が出来るだけの経験を積めてきたけど、まだ確定してはない。
だから、今回こそ描画範囲外で消えたヒロインが、ここに現れないんじゃないかと心配になる。
私が考えている一説に『主人公が絡むイベントなら、描画範囲外でも消えない』というものがある。
#R15
(株)姫神V
377
シュメール
364
華
155
16
朝倉くんと一緒に居るとか、朝倉くんとのデートのために、買い物や下見に行ってるとか。変則的なのだと、女の子だけで集まってる所に、たまたま朝倉くんが通りかかったとか。
だから今回は、一段と心配。
朝倉くんとデートしたあと、なんか違うと感じて、私とデートしたら何か分かるかもと、そんな感じで取り付けられたデートだから、朝倉くんからは遠ざかる行為だ。
と、そんな杞憂は、スニーカーで駆けてくる、ミキちゃんの姿でかき消された。
今日のミキちゃんは、紺色のキャスケット帽に、白いTシャツ、カーキ色のショートパンツに、黒いハイソックス。ボーイッシュで、健康的な魅力溢れる格好だ。
「佐伯先輩! お待たせしました!」
「いえいえ、待つと言えるほどは、待っておりませんよ。私も今来た所ですので」
はー、ひとまず心配事が消えて、ほっとした。まあ、今日会えなくて、私がデートをすっぽかした事になっても、ミキちゃんの興味が私から朝倉くんに移るかもしれないから、それでも良かったかもだけど。
「佐伯先輩! 行きましょう!」
「ええ、今日はよろしくお願いしますね」
ミキちゃんに腕を取られて、駅前から出発した。
ふっふっふ、ミキちゃん、あなたの好きなものは、何もかも分かっているよ。朝倉くんにも教えたけど、朝倉くんの事だから、ものすごく素直に情報を使って、ものすごく素直に実践した事だろう。
だから、私はちょっとだけ捻って、デートプランを立てておいた。何はともあれ、喜んでくれるといいな。
あ、朝倉くんと言えば、今日どこかでバッタリ出会ったりしないかな? ミキちゃんが消えてない理由が、このデートに主人公が絡むという事なら、どこかで出会うはずなんだけど。
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