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ここ壁の先に。

幸せが待っているんだろうか。どんなに乗り越えても走っても永遠に立ちはだかる壁。辛くて悲しくて何度も流した血。汗。それら一滴一滴が僕を奮い立たせる。血走ったような目でも良い。変な顔でも良い。まだ走っていたかった。この狭い世界を。僕のちっぽけな足で。折れてでも。動かなくなっても。無我夢中で走りたい。前だけを向いて、まだ負けたくない。まだ、出来る。まだ、やれる。


大丈夫、大丈夫、大丈夫、


そう言い聞かせてきたのに。やっぱり僕は無能だった。あれが出来なきゃ、これができなきゃ、きっとリーダーにはなれない。皆が信頼してくれるリーダーには決して。皆の優しさに甘えられない。

人それぞれ得手不得手があるのは分かっている。それでも、僕には出来なきゃいけない。僕が皆の重りになってはいけない。どれだけ頭が良くても。英語が喋れても。アイドルとしての最低限が無いとこの世界では生きていけない。分かっていたはずなのに。自慢の脳で考えて考えて導き出した答えなのに。


メンバーが得意なものを、出来ることを増やしていく。それが怖くなった。良いことなはずなのに。どんどん皆から離れていっている気がする。どんなに手を伸ばしても届かない場所に居る皆にただ追い付きたかった。皆が出来ることは僕が当たり前に出来ないと駄目なんだ。そんなわけない、と分かっているけれどやっぱり比べてしまう。周りの目が痛い。リーダーの癖にって言われ慣れていたはずの言葉は僕の心にずんっと重くて黒い何かを置いていってしまった。


僕はちゃんとリーダーになれているだろうか。

貴方はこの問いに頷いてくれるだろうか。

疑問が雪のように降り積もる。冷たいなかで暖かい愛情をくれる貴方が居る。触れたいのに触れられなくて。僕は貴方と見えない壁を作った。分厚く硬い壁を。声も聞こえないぐらい高くて越えられない壁を。僕がこの手で作ってしまった。


今日も僕の中には誰もいない。誰の声も聞こえない。この壁の向こうに皆の笑い声が響く日常が僕が居ない日常が繰り広げられているのだろうか。どんなに足掻いたってもう僕の中に人が入ってくることはない。


僕から突き放したのだから。今更「おいで」なんて自分勝手すぎる。自分の行動に責任を持たなきゃ。それでも、貴方に会いたい。声が聞きたい。笑顔が見たい。そんな思いが降り積もる寒い寒い雪の中、僕の思いは叶うことなく永遠に溶けないのだろう。


叶わないなら、意味がないなら、もう忘れさせてほしい。

溶けない欲望を背負いながら生きていくのはどうにも息苦しい。


この壁を越えるにはどうしたらいいですか?


🐱「ナムジュナ、ナムジュナ!」

🐨「…あっ、はい!どうしました?ユンギヒョン。」

🐱「そりゃこっちの台詞だ。大丈夫か?ボーッとしてたが。」

🐨「あぁ~最近、不眠気味で。」

🐱「…はぁ、頑張るのは良いが自己管理もちゃんとしろよ。」

🐨「…はい、すみません。」


ユンギヒョンの言葉が僕のなかに突き刺さる。「自己管理もちゃんとしろよ。」この言葉の裏側に「リーダーのくせにそんなこともできないのかよ、」という思いが見えた気がした。ユンギヒョンがそんなこと言う人じゃないのは知っている。優しくてしっかり周りを見てるユンギヒョンの僕への気持ちは凄く暖かいものだと言うことも知ってる。だけど、やっぱり怖い。


「リーダー」という肩書きが怖い。「頼られる」ことが怖い。これで失敗したら?もういらないって言われてしまうかもしれない。そんなの、そんなの、


嫌だ。

失望させたくない。僕がこのグループの柱になりたい。僕が折れちゃ駄目なんだ。このグループごと崩れてしまう。期待に応えなきゃ。もっと壁を越えなきゃ。舞台にたってこのグループの中に僕も入りたい。幸せな時間を共有したい。


幸せを見つけたい。

幸せを探したい。


僕に出来るだろうか。こんなちっぽけな僕に。


この壁を越えることは出来ますか?


______________________________________



外はまだむし暑い。それでも僕の心に降る雪は止まない。窓の外で光る太陽は僕の中の雪を溶かしてはくれない。遠い遠い所に居る貴方も同じ空を見上げているのでしょうか。


この青空は僕にはもったいないぐらい広い。

この青空は君には足りないぐらい狭い。


お気に入りの珈琲を一杯飲んで本を読む。頭に入ってこない沢山の言葉たちが僕を狂わせていく。自慢の脳が機能しない。もう僕になんの意味もない。部屋の片隅にある皆で撮った写真も埃を被っている。思い出に蓋をする。もう会えないのだから。会いたいなんて思っちゃ駄目だ。僕が彼と壁を作ったのだから。

この大空に光る幸せに貴方がいてほしいなんて願っちゃ駄目なんだ。

貴方の居る美しい世界に僕がいちゃいけない。

僕が居る醜い世界に貴方がいちゃいけない。

広くて狭いこの世界のなかで考える。幸せってなんだろう。幸福ってなんだろう。僕が幸せって感じても誰かにとってはそれは幸せではないのかもしれない。皆が幸せになれる幸福はあるのだろうか。僕は貴方の幸せを願っちゃいけないのだろうか。意味のない言葉を並べてはまた自己嫌悪。


この壁を越えた先に貴方との幸せを見つけられますように。

溶けない雪の中、光輝く幸せに僕はまた蓋をした。


幸せ探し1 終わり

お姫様ソクジナがただ単に愛される短編集。

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