「それじゃあお義母さん、息子 を宜しくお願いしますね。」
そう言って母は急いで駅へと向かって行く。
今日から祖母の家で1週間泊まることになっている。
「さぁ、凸くん行きましょうか。」
「うん。」
従姉妹も来ていると伝えられているからつまらなくはないだろう。
蝉の聲が脳裏に焼き付く、生暖かい風が去っていく、
遠くから風鈴の音が聴こえる。
***
「お邪魔しまーす」
玄関を通る、古びた屋敷には似つかない揃えられた靴が置いてある。
遠くからどたどたと慌ただしい足音が向かってくる。
「凸さん久しぶり!今かき氷つくってるから食べよ食べよ!!」
そう言ってまた奥へと駆けていった。
手を洗い、部屋に荷物を置き静かに居間へと向かうと 従姉妹はゴリゴリと両手を回していた。
「あと少しだから待ってて!冷蔵庫に練乳あるから取ってきてくれる?」
少し古びた機械の周りには数種のシロップが置いてある。
了承の聲だけ伝え、冷蔵庫へと向かう。
冷蔵庫から練乳を取り出しついでで麦茶を注ぎ持っていく。
「練乳持ってきたよ、あと麦茶も。」
「ありがと〜!かき氷出来たから縁側で食べよ!!」
そう言って真っ白なかき氷とカラフルなシロップ達を持っていく。
「何味にしよっかな〜!」
「シロップって味全部変わらないけどね…」
「そう言うこと言わないの!」
彼女は少し迷ったあと、桃色のシロップを取り
真ん中から綺麗にかけていった。
そして練乳も。
「凸さんも早くかけちゃいなよ!!」
「う〜ん、俺はどれでもいいんだけどな。」
ふと目に付いた緑色のシロップを適当にかけていく。
甘ったるい練乳は無し。
「ふふ、それじゃあいただきまーす!」
ようやくよしと言われた犬のようにスプーンを口に運んでゆく、蕩ける様な笑顔をくっ付けて。
「ん〜、美味しい!やっぱり夏はかき氷だね!」
「うん、そうだね…いただきます!」
ようやく俺もスプーンを口に運ぶ。
全部変わらないと知ってからはどれもただの砂糖水のように思ってしまう。
正直、何もかけていない氷の方が美味しかったりする。
「凸さん凸さん」
「ん、どうした?」
「明日さ、この辺探索しに行かない?」
そう言う彼女の瞳は太陽が反射し、輝いて見えた。
「今更珍しいね、俺らもう小学生じゃないよ?」
「でもまだまだ子供だよ。」
「それはまぁ…確かにそうだけど。」
「じゃあ決まり!8時から行こ!!」
そう言った彼女は、皿を片付けに駆けていった。
まるで嵐のようだ。
「まぁ、楽しそうだしいっか。」
脳裏に鈴の音が過ぎる。
俺は残りのかき氷を食していった。
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