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#R15
(株)姫神V
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シュメール
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華
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16
時は流れて、私達は2年生になった。 ギャルゲーとしては、このあたりから、誰を狙うか、誰が落とせそうか、というのが分かって、攻略の方針を決めるタイミングだ。
それなのに、この世界と来たら、もう好感度100%が二人居る。
朝倉くんと、たまたまお喋りしたら惚れちゃったスーパーチョロイン小鳥遊このみちゃんは、二回目のデートで100%になった。いくらなんでもチョロすぎる。
元々スポーツ選手として、朝倉くんとお互いリスペクトし合っていた橘さやかちゃんは、デートしたり、彼女が好きなカワイイ物を贈られる度に好感度が上がっていき、年が開ける頃には100%になった。チョロすぎる。
とはいえ、恋人になるのは、最終イベント『2人でお参り』が終わった後だけだから、100%でもまだ友達止まり。
私の所感だと、もう結婚の約束をしてていいレベルだけど、最終イベントが終わるまでは、朝倉くんとヒロインは恋人になれない。二人と結婚したら重婚罪だけど。
他のヒロインはと言うと、マヤちゃんは46%、友達上位恋人圏外くらいで停止中。
その原因は、マヤちゃんが、さやかちゃんにデレデレすぎて、朝倉くん、というか男子を恋愛対象として見てないから。
ギャルゲーとして、これが正しいかは置いといて、さくハイはハーレム物でもないし、全員が朝倉くんに惚れる必要は無いわけで、まあいいかと思っている。
まあ、このみちゃんもさやかちゃんも朝倉くんのことが大大大好きだから、今の状態もハーレムと言えなくもないけど。
で、難攻不落の鉄壁要塞こと、メインヒロインの藤原桜子ちゃんは、20%前後を行ったり来たり。
単純に、好きなものを贈れば良いという訳でもなく、お喋りすれば良いと言う訳でもない。
流石、可愛らしい女の子らしからぬ二つ名を持っているだけのことはある。私は今、切実に攻略本が欲しい、というか攻略本無いと無理でしょ、桜子ちゃんの攻略。
とはいえ、ハーレム物じゃないという話ではあるから、桜子ちゃんまで落とす必要はない。100%が二人居れば、それで十分と言えば十分。攻略が見たいという欲はあるけど。
それに、学園物のギャルゲーで、二年生に上がったという事は、当然起こるイベントがある。
そう、後輩ヒロインの登場だ。ギャルゲー界隈において、後輩ヒロインと言えば、元気で甘え上手な妹系ヒロイン。
その後輩ちゃんは、色んな謂れを持ってる事が多い。例えば、登場人物の妹とか。
誰かの妹の場合は、友人兼情報屋キャラの妹というパターンが多いけど、その情報屋は私、佐伯佳奈だ。
私に妹は居ないので、このパターンは無い……とも言い切れないんだよなぁ。
この世界、突然机が生えてきたりするし、突然生えてくる妹が居ても不思議じゃない。
後は、子供の頃の友達パターン。
主人公が小さい頃、仲良くしてあげた年下の子が、大好きなお兄ちゃんを追いかけて、同じ高校に入った的な。
まあ、特に謂れの無い、単なる後輩というパターンも多いけど。
まあ、待ってればどこかでやってくるか、誰かが紹介してくれるか。
あるいは、私が知らない所で、朝倉くんに直接会うかもしれない。その場合は、私に相談が持ち込まれるだろうから、やっぱり待ってればいいか。
********
二年に上がって、一カ月ほど経った頃の昼休み。
例によって、屋上にお弁当を持って集まった。
今日のメンバーは、このみちゃん、マヤちゃん、そして私。
他愛もない話をしながら、みんなでお弁当を食べる。
情報屋として、この席を朝倉くんに譲るべきな気もするけど、この楽しみは手放せない。許せ、主人公。
「そういえば」
このみちゃんが、思い出したかのように切り出した。
「みんなもう、後輩ちゃんとは知り合った?」
「いえ、まだです」
「マヤも、まだ」
そのうち、後輩ヒロインと相まみえる事になるだろうと思ってたけど、まだ会えてない。
部活をしてれば、正式入部の前に見学に来た後輩と、知り合う機会はあるだろうけど、帰宅部に部の後輩などというものは無い。
「そういう、小鳥遊さんはどうなんですか?文芸部なら、帰宅部よりは出会いがあると思いますけど」
文芸部に、そこまで人が集まるかと言えば、微妙なところだけど。
「うん、昨日女の子が見学に来たの。それと、その子が佐伯さんに会いたいって言ってたよ」
「へ?」
私!? なんで私!?
このみちゃんの事だから、朝倉くんの事を所構わず褒めまくった結果、その後輩ちゃんが朝倉くんに憧れて……って流れはありそうだけど、なんで私に会いたいの?
「佳奈さんに? どうして? このみさんが、その後輩さんに佳奈さんを紹介したの?」
マヤちゃんも、同じ疑問を持ったみたいで、首を傾げながらこのみちゃんに聞く。
「ううん、そんな事ないよ。見学に来た女の子に、部の案内をしてあげたんだけど、その後『小鳥遊先輩は、佐伯先輩と仲が良いって本当ですか』って、急に聞かれたの」
なんで。なんでモブキャラなんかと会いたいの、その後輩ちゃん。
やっぱり、誰かの妹とか、そういうパターンなのかな。
「それでね、会いたいって言うから、お昼休みに教室、教室に居なかったら屋上に行けば会えるよって教えてあげたの」
え、てことは来るじゃん。今、この場に後輩ヒロインちゃんが来るって事じゃん。
会話の流れからして、そういう事だよね?
「さ……左様ですか。しかし、その後輩さんはどうして私を___
言いかけた時、後ろでドアが開く音がした。
振り向くと、女の子が居た。
茶色いセミショートの髪、瞳は濃い緑色、マヤちゃんよりちょっと高いくらいの背丈の女の子が、私を見るなり、輝くような笑顔を浮かべた。
「佐伯先輩!」
待って、あなた誰? 状況的に後輩ヒロインなんだろうけど、私、あなたのこと知らないよ?
後輩ちゃんは、こっちにトテトテと走ってきて、私の目の前に座り、私の手を取った。
「佐伯先輩ですね! 会いたかったです!」
「は……はあ、確かに私は、佐伯佳奈でございますが………」
後輩ちゃんは、私と目が合うとにっこりと花が咲くような笑顔を見せた。
「ボク、後藤ミキって言います! お兄ちゃんから、佐伯先輩の事、たくさん聞いてます!」
後藤……? 後藤の妹………。え! この子、後藤ケンジロウの妹!!??!?
いや、似てな……くもないな。目元の造形とかは、割と近いような気がする。立ち居振る舞いが真逆かってくらい違うから、そっちの印象に引っ張られてるだけだ。
だけども、後藤ケンジロウの妹が、どうして私に、キラキラお目々を向けてくるのか分からない。私は、お兄ちゃんの生き恥を大声で晒したアレな人よ?
恨まれてないのが、不思議なくらいよ?
「お兄ちゃん、この前まで、すっごく暴れん坊だったんです。そのお兄ちゃんが、真面目に学校に行くようにしてくれたのが、佐伯先輩だって聞いて! ずっと会いたかったんです!」
「そ………、その話は誰から……」
まさか、後藤ケンジロウ本人ではないだろう。私の行為は、ほとんど脅迫みたいなもんだったし、感謝なんてする訳がない。
「お兄ちゃんの先輩です。去年、直接清桜高校まで謝りに行ったって言ってたので、佐伯先輩も知ってますよね?」
後藤くんの先輩……、多分、あのド派手な特攻服を着てた、暴走族のリーダーだろうな。
あの人、私がどうやって後藤くんを大人しくさせたか知らないから、私の事を大女傑か何かと勘違いしてるっぽい。
で、そのリーダーから話を聞かされたミキちゃんも、お兄ちゃんを真人間にしてくれた徳の高い先輩だと、盛大に勘違いしているって事?
「あの人ですか、ええ、存じております。……で、彼が一体どのような話を?」
ああ、聞くのが怖い。
どれだけ美化された話が出てきても、訂正したら、後藤くんの尊厳を破壊する事を漏らす羽目になる。
「ケンカばっかりしてたお兄ちゃんを、一喝して諭してくださったって! しかも、最後は泣いて反省するまで、お兄ちゃんのそばに寄り添って、根気強く話してくれたって聞きました!」
違う! 何もかも違う!
一喝なんてしていない、ネチネチ黒歴史を暴露しただけ! 諭した覚えもない。そして何よりも、寄り添いなんて一切していないの!
ああ、訂正したい。
訂正しないと私が不味い。けど、訂正すると、せっかく更生した後藤くんが、また荒れる原因になりかねない。
私が神格化される事と、後藤ケンジロウが不良に戻る事、どっちが不味いかと言うと、当然後者だ。
「やや大げさですが、おおよそそんな所です。ですが、そこまで大層な事をしたつもりはございませんので、無闇に持ち上げる必要はございませんよ」
一応の肯定をしつつ、ミキちゃんが過剰に信仰してしまうのを防ぐための回答をする。
あっ、マヤちゃん、そんな軽蔑の目で見ないで。
仕方無いの、これは仕方無い嘘なの。後藤くんを守るための嘘なの。
ああっ、ミキちゃんとこのみちゃん、そんな羨望の眼差しで見ないで。
これは嘘なの、仕方無いとはいえ嘘なの。人を守るためとは言え、嘘をついているの。私が一番つらいの。胃が痛いの。
「謙遜なんてしないでください! お兄ちゃんが真面目になった事は、全部本当ですから!」
ミキちゃんは、ぱあっと目を輝かせて、身を乗り出してくる。
眩しいよ、無垢な笑顔が眩しいよ。真昼の陽光より眩しいよ。
というか、さりげなく刺した釘、なんの意味も無かったよ。
「ボク、佐伯先輩みたいに、素敵な先輩になりたいです! 佐伯先輩みたいな先輩になって、人を救いたいんです!」
ああ、これはもう、何を言おうが止まらないやつだ。詰みです。
だって、ミキちゃんはここに来る前から、私の事を神格化してたんだから。
「うん、佐伯さんなら出来るよ! 佐伯さん、いつも私たちの事、助けてくれるもん!」
このみちゃんまで、キラキラお目々で援護射撃してくる。
このみちゃんに関しては、私が救ったと言えなくもないけど、話が上手く行ったのは、朝倉くんの主人公力と、アナタのチョロさが主因だと思うの。
私は、せいぜいきっかけを与えただけよ。
「佐伯先輩! ボクを舎弟にしてください!」
しゃ……舎弟……。無邪気なワンコみたいな娘だけど、そういう所はヤンキーの妹だなぁ。
ミキちゃん的には、子分とかそういう意味じゃなくて、普通に友達みたいな感じで言ってるんだろう。流石にこればかりは、訂正しないと不味い。
「私を慕ってくれるのは、非常にありがたい事ですが、舎弟というのはいけませんね」
ミキちゃんの顔が、少し曇る。舎弟になることを拒否されたという事は、仲良くしてもらえない事だと、誤解したのだろう。
「舎弟を持つのは、お断りします。ですが、対等な友達としてなら、喜んで受け入れま__
私が言い終わるより前に、ミキちゃんが両手を広げて、こっちに突っ込んで来た。
なんなら『友達としてなら』のあたりから、もう飛びつく準備をしてた。
あまりにもワンコ、でっかいワンコ。甘えん坊のゴールデンレトリバー。
マヤちゃんの人懐っこさにも、結構驚かされたけど、この娘はそれ以上だ。対象は私だけかもしれないけど。
「やったあ! ありがとうございます、佐伯先輩! これから、よろしくお願いします!」
満面の笑みで抱きつきながら、頭上からハートマークを量産してる。それはもう、カップル成立のリアクションじゃないの。
「こちらこそ、よろしくお願いしますね」
そんな勢いで来られたら、こうとしか言えないよ。
このみちゃん、そんなにニコニコしないで、ああ、マヤちゃんまでニコニコしちゃって。
これはもう、完全に既成事実を作られちゃった。