テラーノベル
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目が覚める。
いつの間にか深く眠っていたらしい。魔鳥の姿はすでになく、食べ終えたはずの皿の中には小さな赤い果実が盛られている。
「はは…毎回量が多いと言っているのに律儀だな魔鳥たちは」
餌のお礼のつもりなのか魔鳥たちはどこからともなく赤い果実を取ってきて皿に置いていくのだ。
外は日が落ちかけ夕焼けが広がり部屋の中を紅く染めている。
あの頃の夢を見たからなのか、傍らの皿には赤い果実。紅く染まる部屋。
クオールの髪と同じ、彼を象徴する色が広がっている。
「……クオール」
囁くような呟くような小さな声。けれど、きっと、扉の外で待機している彼の耳には届いている。
執事でありながら、騎士のような在り方をするから。きっと。
「はい」
扉が開き、1歩前に出る。
「お呼びでしょうか、マリノアル様」
自分より低い声と表情はいつだって喜色と緊張が混じっていて。
自分よりずっと高い上背は背筋が伸びていて気品がある。
マリノアルの前まで歩を進めた後、片膝をつき頭を垂れる。真っ赤な髪が揺れた。
「…魔鳥たちが持ってきた赤ベリーが多くて1人では処理しきれない。お前も食べろ」
「は、え、赤ベリーですか」
「ここに座れ」
マリノアルは立ち上がり、そのまま机の上に座り直し自分が座っていた椅子を指さす。
「え、あ、いっいえっ主が座する物を私が使うなどっそれと机の上に座るのは如何なものかと」
「背を俺に向けて座れ。命令だ」
クオールに赤ベリーが乗った皿ごと渡す。
「っ…承知いたしました…」
失礼しますと一礼し背を向けおそるおそる椅子に座る。
「クオール、もう少し下がれ」
「は、はい」
赤ベリーを落とさないようしっかりと抱きかかえ、クオールは言われた通り下がる。
マリノアルは引き出しから櫛を取り出し1つに束ねられたクオールの長い髪を手に取った。
「…マリノアル様…?」
背を向けている所為でマリノアルが何をしようとしているのか分からない。
「食べながらで良い。質問に答えろ」
「かしこまりました…」
緊張が、走る。赤ベリーが乗った皿を持つ手にも力が入る。
「そう緊張するな。世間話低度の認識で答えてくれ」
そう言われても。普段事務的なやり取りだけで会話らしい会話はしてこなかったのだ、緊張しないわけがない。
何を聞かれるのか分からない。答えによっては不敬とも受け取られ、最悪死罪にまで発展することもある。
マリノアルが倒れる前だったならここまでの緊張感などなかったのだろうけれど。
束ねられた髪に櫛を当てゆっくりと梳けば絡まることもなくさらさらと流れていく。
「…そうだな……先ず、何歳だ」
「17です」
「身寄りは」
「ありません」
「いつからこの家にいる」
「7年前です」
たったこれだけの簡単な質問。マリノアルはそのまま黙ってしまった。
クオールは赤ベリーを口にする。
水分が多くとても甘い。解れない緊張から口の中がどんどん渇いて、赤ベリーを口にするたび潤いが戻る。
それが分かっていたからマリノアルは赤ベリーを渡してくれたのか真意は定かではないがとても助かった。
質問は再開されることなく沈黙が続いたまま髪を櫛で梳く動きは止まることなく繰り返される。
少しずつ確実に紅く染めていた部屋の中はその色を失い薄暗くなっていく。
窓を閉めて明かりを付けなければ。
そう思うのにマリノアルの手を止めたくなくて赤ベリーと共に言葉を飲み込んでいく。
緊張はいつの間にか解けていた。
「…クオール、部屋の明かりを」
「かしこまりました。」
立ち上がり、持っていた皿を机の上に置き扉の近くにあるスイッチを押す。
薄暗かった部屋を温かく照らしている。
マリノアルは眩しかったのか目を細め顔を背けた。
その先には赤ベリーが乗った皿。
「(あまり減っていない…二人では消費しきれないか…)」
ふと影が被さる。視線を上げればすぐ目の前にクオールの姿。
クオールは左手の手套を外し、赤ベリーを1つ手に取りマリノアルの口元へ運ぶ。
マリノアルは一連の動作を目で追い口元まで運ばれた赤ベリーに一瞥をくれ、クオールの方を見やれば
視線が、交わる。
一瞬の交わりにマリノアルは目を伏せ差し出されている赤ベリーを口に含んだ。
赤ベリーを掴む指にマリノアルの唇が僅かに触れた直後、薄く開かれたその隙間から赤い舌が覗く。
知らずクオールは生唾を飲み込んだ。
再びマリノアルと視線が交わり指でその形の良い唇を薄くなぞれば
外されることのない視線をそのままに、引き寄せられるように顔が近付いていく。
唇同士が一瞬、軽く触れた。
外されなかった視線はゆっくりと閉じられ今度はしっかりと深く口付けを交わした。
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#溺愛
植まどか
1,039
#死に戻り
青空美空
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陽星☀️🎧☄️🩷
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コメント
1件
わあああ第7話、めっちゃ良かった…!!😭💕 魔鳥が持ってくる赤ベリーから始まる日常のワンシーンが、こんなにエモくなるなんて思わなかったよ…!クオールが緊張しながらもマリノアルの髪を梳かせてる時間、静かで温かくて、ずっと見ていたかった…♡ 最後の口づけ、自然な流れでドキドキが止まらなかったよ…!二人の距離がゆっくり縮まっていく感じがたまらなく好きです🌸✨