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現実世界――
ないこの声はまだ細く、確かな力を持つわけではなかった。
だけど、その小さな声が、彼女自身の心の壁を少しずつ溶かし始めていた。
ないこ(心の声):
「声が出せなくても……気持ちは伝えられるかもしれない」
ないこはゆっくりとスマホを手に取り、グループチャットを開く。
そこには、いれいすのメンバーたちの温かいメッセージが溢れていた。
りうら: 「無理しなくていいから、待ってるよ」
いむ: 「焦らず、ゆっくりでいい」
初兎: 「いつでも話したくなったら、ここにいる」
いふ: 「ずっと味方だからな」
悠佑: 「戻ってきてくれて嬉しいよ」
ないこは震える指で返信を打とうとするが、うまくいかない。
言葉が指先に届かない。
ないこ(心の声):
「まだ、うまく伝えられない……」
そんな時、部屋の扉がノックされた。
開けると、いむがゆっくりと現れた。
いむ: 「声がまだ出ないなら、無理に話さなくていい。俺が話すよ、代わりに」
いむは静かに、ないこのスマホを受け取り、グループチャットにメッセージを送った。
いむ(メッセージ): 「ないこが戻ってきた。ゆっくりだけど、確かにここにいる。みんな、待っててくれてありがとう」
メンバーの返信はすぐに飛んできた。
温かく、そして安心できる言葉たち。
ないこはその様子を見て、小さく涙を流した。
自分の声が出なくても、仲間は変わらずそばにいてくれる。
それだけで十分だった。
*
深層――鏡の裏側。
闇ないこは、自分の涙が止まったことに気づいた。
それは、ないこの存在が持つ“希望”の光だった。
闇ないこ(呟く):
「声がなくても……お前は、叫んでいるんだな」
鏡のひび割れはゆっくりと広がり、闇の世界と現実の境界が少しずつ曖昧になっていく。
闇ないこはその変化に戸惑いながらも、どこか安堵の表情を浮かべていた。
*
現実世界――
ないこはギターを抱きしめ、ふと立ち上がった。
声はまだ出ないけれど、その手が紡ぎ出す音は、確かに“生きている”証だった。
ないこ(心の声):
「声がなくても……音がある。私の心の声が、ここにある」
その音色は、闇に立ち向かう小さな光となり、これからの道を照らしていくのだった。
次回:「第二十話:音に込めた想い」へ続く