テラーノベル
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「なあ、ちょっといい?」
昼休み、教室の隅で声をかけられた。
振り向くと、クラスの中心にいるやつらが集まってる。
なんとなく、嫌な予感がした。
「最近さ、いるまと一緒にいるよな」
ストレートに言われる。
「まあ、隣だし」
いつも通り軽く返す。
でも、相手は笑ってなかった。
「正直、やめた方がよくね?」
空気が、一段階冷たくなる。
「なんで?」
わかってて聞く。
「危ないって」
即答だった。
「この前も見ただろ?上級生に手出してたやつ」
「いや、あれは――」
言いかけて、止まる。
説明しようとしても、うまく言葉にならない。
「ほらな」
ため息混じりの声。
「そういうとこだって。あいつ」
周りも、なんとなく頷いてる。
「関わっててさ、何かあってからじゃ遅いじゃん」
一見、正論っぽい言い方。
でも――
(なんか違ぇ)
「別に、お前がどうするかは自由だけどさ」
少し間を置いて、
「こっちに迷惑かけないでくれよ」
その一言で、はっきりした。
ああ、これ。
ただ怖いから、遠ざけたいだけだ。
「……迷惑って何?」
少しだけ、声が低くなる。
自分でもわかる。
「もしまた何か起きたらさ、クラスの問題になるじゃん」
「だから?」
「だからって……」
言葉が詰まる相手を見て、
なんか急に、どうでもよくなった。
「それ、あいつが悪いって決めつけてる前提だろ」
教室の空気が止まる。
「は?」
「見てたけど、あいつ先に手出してねぇし」
静かに言う。
でも、ちゃんと聞こえるように。
「でも実際、やり返してたじゃん」
「そりゃあの状況なら――」
「ほら」
かぶせられる。
「やっぱ危ないって」
(……ああ、無理だなこれ)
「じゃあさ」
一歩だけ前に出る。
「お前ら、あいつとちゃんと話したことあんの?」
沈黙。
「ないだろ」
それが答えだった。
「噂だけで決めて、勝手に避けて」
「それで“危ないから”って」
少しだけ笑う。
「そっちの方がよっぽど怖ぇよ」
空気が、完全に変わる。
「……は?お前さ」
苛立った声。
でも、もう止まらなかった。
「別に仲良くしろとか言ってねぇよ」
「でも、勝手に悪者にしてんのは違ぇだろ」
誰も何も言わない。
言えない、って感じだった。
「……もういいわ」
誰かが小さく吐き捨てる。
空気がばらけて、その場は終わった。
教室に戻ると、
いるまが席に座っていた。
たぶん、今の会話は聞こえてない。
でも、なんとなくこっちを見る。
「……何かあったか」
ぼそっと聞かれる。
「別に」
カバンを机に置く。
少しだけ間を置いて、
「ちょっと面倒だっただけ」
「……そうか」
それ以上は聞いてこない。
でも、少しだけ。
ほんの少しだけ、
いるまの視線が長く残った気がした。
「なあ」
今度はこっちから。
「放課後、ヒマ?」
いるまが少し驚いた顔をする。
「……まあ」
「じゃ、どっか寄って帰るか」
沈黙。
たぶん、断られると思った。
「……いいけど」
小さな声。
でも、ちゃんとした返事。
「お前、変なやつだな」
ぼそっと言われる。
「今さら?」
そう返すと、
ほんの一瞬だけ、
いるまが、少しだけ笑った気がした。
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