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反乱軍の本拠地がある孤島は都のある島とはだいぶ離れていて、時間が掛かるため船の乗員達は皆それぞれ別の行動をしていた。
ノアは、自室のベッドの上で考え事をしていた。なぜシヴェルはあんなに焦りながら彼を助けたのだろうか。シヴェルの性格故の行動だったのか、それとも別の理由があるのか。そんな事を考えていると ドアをノックされ扉を開けてみると、シヴェルが連れてきた彼が立っていた。
「はじめまして、怪我して倒れてたところを君達の団長様に助けてもらった迅だ。よろしくな、ノアくん」
「はい!よろしくお願いします」
「ちょっとお話したくて、邪魔してもいい?」
「どうぞ!」
二人はノアのベッドに腰掛け話し始めた。
「にしても君…何歳?両親は?一緒に来たの?」
「えっと…」
ノアはなぜ龍宮に来たのかを一から話し始めた。記憶喪失の事も、記憶喪失の原因を探るために色々な国に行く予定だと言うことも。
「そうなんだ…ごめんね。分からないこと一気に聞いちゃって」
「でも、なんか自分、ちょっと親近感湧いたかも…」
「俺もちっちゃい頃の記憶一切無くてさ」
迅は十歳の頃に反乱軍に拾われたらしい。ただ、拾われる前の記憶は一切無く。反乱軍側は迅の地元が反乱軍と都軍の紛争に巻き込まれ、ショックで記憶がなくなったんだと考えたらしい。
それからノアは迅に龍宮の話をしてもらった。そんな話をしていたらあっという間に時間が過ぎ、船が止まった。反乱軍の本拠地の島に着いたのだろう。
「迅さん。行きましょう」
「あぁ、分かった」
雪󠄁鳴島。反乱軍の本拠地がある島。本拠地までは迅が案内してくれる。ノア達は迅の後ろについて行った。
都とは違い、一面銀世界で口を開けると白い息が漏れた。初めて見る景色にノアは目を輝かせた。一番後ろをついて行っていたシヴェルは隣のノアの様子を見て口を開いた。
「…君は十代の子供にしては大人びていると思っていたが、ちゃんと子供らしい所もあるんだな」
「褒め言葉として受け取っておきます…?」
「…すまない、褒めるのが下手で」
「いやいや!そんなことないですよ!」
「気を遣わなくて大丈夫だ。マリンに何回も言われているからな」
「…マリンさんに?」
シヴェルは1回だけゆっくり首を縦に振った。
「『アンタさ、もっとなんか…言い方無いの?』とか、『それ褒めてる…?』とかな…」
「あははっ!マリンさんの真似、似てますね」
シヴェルのマリンの真似はとても似ていた。長年一緒にいるからだろう、喋り方も声も、その特徴をちゃんと分かっていた。
「皆さん着きましたよ!」
林を抜けると、そこには小さな村と反乱軍の本拠地があった。
「あっ迅の兄ちゃん!帰ってきた!」
「よかった…。心配したんだよ…」
「後ろの人たちだぁれ?」
村の入り口近くで遊んでいた子供たちが迅に一斉に喋りかけた。迅はしゃがんで子供達に喋りだした。
「後ろの人たちはお前らの大好きな迅の兄ちゃんを助けてくれた人達だ。反乱軍に協力してくれるって言ってくれたんだぞ?この人達とも仲良くしろよ」
迅がそういうと子供達は元気に『はーい!』と返事をした。迅と沢山喋ったその後、子供達は遠くに走り去った。
「おい迅!反乱軍で数時間任務から帰ってこない奴らは居たが、5週間経っても帰ってこなかったのはお前が初めてだ!はっはっは!」
太刀を背中に背負った恰幅の良い男が大笑いしながら迅の背中を勢いよく三回程叩いた。そして 遠くから金魚の柄が描かれた傘を小柄の赤毛の少女が迅に駆け寄った。
「迅〜!生きとったのか〜…!われはお主が心配で心配で…夜も眠れなかったぞ〜!」
「す、すみません…心配かけちゃって」
迅は落ち込んだ犬の様な顔をした。
「あっ、紹介しますね。反乱軍の影尉さんと、|緋織さんです!」
恰幅の良い男の方が影尉、傘を持った赤毛の少女が緋織と言うらしい。
「あんたらが協力してくれる人達か?」
「はい」
「詳しいことは焔さんから聞いてる。ついてきてくれ。反乱軍の本拠地に向かう」
ノア達は雪の少し積もった道を歩き出し、本拠地へ向かった。