テラーノベル
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#恋愛
#長編
ペルニーア小国での一件を早々に片付け、私とルティは王城では気が休まらないからと言う理由で、高級ホテルを手配して貰うことに。
王城にいれば否が応でも貴族たちが接触してくると思ったからだ。今や私もルティも貴族でもない穏やかな日々を過ごしている。今さら華やかで煌びやかな場所で暮らしたいとは一ミリも思って居ないのだ。
(とはいえ豪華なホテルに泊まるのはウキウキしちゃう……。しかも貴賓室っぽい場所をとってくれるなんて……)
「シズク、落ち着かないならホテル変えましょうか?」
「ううん。とっても素敵な場所だから、ルティと一緒にお部屋でのんびりお茶をしましょう」
「一緒にお茶! ……シズクとお茶のお誘いとはとても嬉しいです」
ルティは耳や角、尻尾を隠しているが、部屋の中では九つの尻尾を出して私の腰や腕に巻き付いていた。可愛い。モフモフ。
受付に連絡を入れると、スッキリと飲みやすい紅茶とシナモンの粉がかかったアップルパイを用意してくれた。さすが王家御用達のホテル。しかも窓の外が見えるサロンを貸し切ってのお茶会と、ちょっと贅沢な気がする。
「雪景色に、オレンジ色のイルミネーションの光が煌めいて綺麗!」
「シズクが喜んでいる。可愛い」
「ルティ。外のちゃんと見ている?」
「ええ。シズクが見ている雪景色と祭りの灯りも綺麗ですね。網膜にしっかりと焼き付けておきます」
(発言が重い)
ルティは嬉しそうだが、どこか少しそわそわしている。尻尾もフワフワしているが、小刻みに震えているようにも見えた。
(何かを警戒している? ううん、不安な感じが近いかも? でもなんで?)
「シズクはなにか欲しい物はありませんか? もしなにかほしいのなら、せっかくですしなんでも買って差し上げます」
贈物を渡したい、だけじゃないのだろう。言いたい本音はもっと別で、でもそれを言うには勇気がいる、あるいは怖いと思っている。
(何を?)
「シズク」
どうして泣きそうな顔をしているのだろう。分からないことが胸を締め付ける。言葉にして尋ねたい。でも私が急かすようなことはしたくない。
「それなら街の観光を一緒にしてほしいわ」
「え」
「お揃いのティーセットも増やしたいし、ほら、記念に。旅行に行ったねーって、あとで見返せるようなものを家に飾ったり、日常的に使うものがもっとあってもいいと思うの。季節に合わせて使うお皿も買えてみるとか、ランチョンマットや、カーテンも気分転換に変えるのだっていいでしょう」
そう提案してみると、ルティは目をキラキラと輝かせていた。尻尾もふわふわで大きく揺らいでいる。
「素晴らしい提案です。一緒に、家に帰って……一緒に住む」
(あ、もしかして私の故郷だから、その街並みを見て帰りたくないと言わないか不安になったとか?)
そんな考え一ミリもなかった。普通に今回のことはカミシロ殿下の件もあるが、旅行として来ている。旅行なのだから、もちろん帰る場所は別だ。それを図らずも引き当てたことでルティは少し安心していた。
「アップルパイを食べたら、街の観光スポットを受け付けさんに聞きに行きましょう」
「ええ、そうですね」
和やかで素晴らしい提案だと我ながら思っていたのだが、それを潰す非常識な客人がこの後来るなんて想定外だった。
***
「え、王女?」
「はい。正確に言えば先の王の一人娘であり、現国王から見れば従妹にあたります」
ホテルの支配人からアポなし訪問したあげく、現在は客室で待っているという。ペルニーア小国の王ディアスの娘、キャサリン王女は既に王女の地位を剥奪されたものの処遇は一端保留となっているらしい。
「カシミロ殿下の従妹? でも先の王の一人娘が何の用なのでしょう」
「さあ、そんなことなどどうでもいいので、さっさと追い返してください」
「え!?」
「謝罪にしても一方的すぎるからです。そういう輩は基本的に自分都合のことしかしないので、会うだけ無駄です。なによりシズクとの時間が一秒でも損なわれるのは我慢できません」
(相変わらずの私基準!)
どさくさに紛れてルティは私を抱きしめて、頬擦りしてくる。尻尾もしっかりと私のお腹を掴んで固定していた。
尻尾のモフモフを堪能しつつ、「要件だけは聞いてもらったら?」とダメ元で提案してみる。
「どうせ私の庇護下に入りたいとか妻になりたいと言い出す気しかしません。それか王族を抜けたので縋りたいのかも二択でしょうね」
(言い切った!)
「かしこまりました。では用件だけを聞いてまいります」
(支配人決断早っ!)
支配人はどちらを優先するか即座に判断し、恭しく一礼した。確かに元王族よりも上位種族の怒りを買うほうがまずいと思ったのだろう。その英断は正しい。
だが往々にして話は通じない、自分の意見を通そうとする輩はいる。
「ここにいたわね!!! 大賢者様ルティ!」
(わあああ! 話が通じない代表者格がきちゃった!!)
ノックなしに煌びやかな衣装を身に纏った女性が部屋に飛び込んできた。従者やホテルマンが止めようとしたようだが、押し切られたようだ。
金髪で肌は陶器のように美しい。しかしなんというか絢爛豪華というか装いが華美すぎる。
「遠目で見たけどすごく素敵じゃない!! 私の夫になってくださいませ。ペルニーア小国は元々クレパルティ大国だったのよ! そして貴方様の片翼だったブリジット王女と同じ血が流れている。そんな私こそが貴方様の片翼に、妻にふさわしいわ」
(確かに王家には他にも兄妹が居たから、血筋なのはあるかもだけれど……)
豪胆というか愚かというか怖いもの知らず過ぎて、恥ずかしい限りだ。何より王族としての矜持が360年で変わってしまったのかと疑うレベルだ。
「そもそもクレパルティ大国が小国になったのはルティ様のせい。さらに片翼というのは本能で選んでいるのでしょう? それなら生理現象で傍に置きたいだけで本当の愛なんかじゃないわ。本当の愛を知らないから、片翼こそが唯一の愛だと勘違いなさっているのでしょう? 昔、ブリジット王女の話を聞いたときに可哀想だと思いましたの! でも大丈夫ですわ、ルティ様。私が本当の愛を教えて差し上げます!」
(すごい。前世の私が言いたかったことを!)
「シズクかブリジット本人に言われるならともかく、お前のような喚く者などどうでもい」
(それもそう! そして私はもう言いたいことは全部言ったのよね)
「──ッ!?」
そこでキャサリン元王女は言葉を飲み込んだ。ルティの顔を見たからだろう。その鋭い眼光と敵意がキャサリン元王女に突き刺さる。
「支配人、摘み出せ。それともこの場で殺してもいいのなら、私がやるが」
(ぎゃあああああ! 激おこじゃないですか)
「とんでもございません!! 衛兵!」
「ハッ!!」
「え、ちょ、私は王族よ」
「元王族だと伺っております。そしてこちらにおわす方は、国王陛下より上の立場の方。何の身分もない者が取り合うなど許されることではないのです」
コメント
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わあ……第21話、読み終えました! ホテルでのんびりお茶をするシズクとルティの時間、すごく温かくてほっこりしました。 でもルティが泣きそうな顔をしてたところ、胸がぎゅっとなった……シズクの「一緒に観光しよう」って返しが優しくて、二人の空気感がすごく好きです。 そこにキャサリン元王女がズカズカ入ってきて「私が本当の愛を教える」って……わあ。ルティの激おこ、当然だと思います。シズクとの時間を邪魔するなんて許せないですよね。 続き、気になります!