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言ってしまった。彼の名を。
主様は、一瞬、納得したような顔をした後、すぐに鋭い目つきになった。
「そうか…。だからか。お前にとって植村圭一は、洗脳を解いてくれた、自分を見つけてくれた人だから、殺したくないんだな。___残念だ。」
“ボゴッ” ”“ドスッ”“ ”“ドガッ!””
強い衝撃を受けたあと、僕の意識は暗い闇の中へ沈んだ。
最後に見えたのは、薄ら笑みを浮かべ、目を見開いて頬を紅潮させた主様だった。
目を覚ますと、視界の端に主様を見つけた。
「起きたか。どうだ、気分は。」
気分はどうだって、主様に殴られたんですけど。なんて思いながら答える。
「大、丈夫…です。ごめん、なさい。」
実際、何も大丈夫では無い。殴られた所はまだ痛むし、頭痛も吐き気も治っていない。
「ごめんな。梓。こんな風にしかできなくて。」
………え?
「でもな、お前に近づくやつは、必ず間違ったことを教えるんだ。だから、お前は、俺が言う事だけ聞いてればいい。」
間違った、こと?ケイが?僕に?
「本当にごめんな、梓。」
主様が僕にハグをする。
あったかい。優しい。心地良い。
これが、”愛”というものなのだろうか。
「俺は、梓のことを殴りたいわけじゃねぇんだ。お前のことを想っているからこそ、手が出るんだ。分かってくれ。」
僕のことを、おもって…?
「俺が殴ったところ、痛いよな。ごめん、梓。でも、俺はお前のこと、誰よりも愛してる。」
“愛してる”…。主様は、僕のこと、愛してる…。
やっぱり僕は、主様のもの。主様だけの、特別な犬。主様がいないと生きていけない。
「主様……主様、あるじさまっ!♡」
主様、大好き。僕の飼い主。僕だけの、たった一人の、僕を愛してくれる人。
「アズサ、俺の言う事聞けるか?」
主様が僕に問う。答えはもちろん、
「はい。なんでも聞きます。どんなものでも、主様のためならば、なんでもやります。」
それを聞いた主様は、小さく微笑む。
「”Good dog”(いい子だ)」
その言葉が脳に響き渡る。ゾクゾクして、すごく気持ちがいい。
「ありがとうございます。主様っ…!♡」
主様大好き。もっと褒めて。
「____……♡♡♡」
今、主様が何か呟かれたような…?
まぁ、そんなことはどうだっていい。
「主様っ、僕も愛してます♡ 誰よりも♡」
僕は一生、この御方について行く。絶対に。何があっても。