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子狸が手になにか持っているのに壱花は気がついた。
箱と箱の隙間に落ちていたものを拾ったようだ。
カラフルなチョコの入ったメガネ型のお菓子。
はい、というように壱花に渡してくる。
そうだ、と思った壱花は、ラムネ付きの笛とそれを買った。
倫太郎たちが店をどうするか話している間、壱花はレジにあるセロテープで、メガネを半分に折り、笛をひっつけて、お玉っぽいものを作った。
「どうですっ? これっ。
穴あきお玉に見えませんかっ?」
と掲げて見せたが、
「穴、あきすぎだろっ」
と倫太郎に言われる。
やはり駄目でしたか……と思ったが、
「貸せっ」
と言った倫太郎は、
「この穴部分にネットを張って、柄を割り箸かなにかと取り替えろよ」
と作り替え始める。
ビー玉の入っている黄色いネット状の袋を切って、半分にしたメガネにひっつけている。
自分で言い出しておいてなんなんだが。
こんなものでいいのだろうか、と思ったとき、高尾が何故かハラハラした感じでこちらを見ているのに気がついた。
「高尾さん?」
と壱花が呼びかけたとき、ガラガラッと店のガラス戸が開いた。
白い発泡スチロールを手にした斑目が生活に疲れた部下っぽい人を連れて現れる。
「壱花っ、今日は牡蠣を持ってきてやったぞっ」
「斑目!」
丸椅子に座って作業していた倫太郎が立ち上がる。
珍しく斑目を大歓迎して言った。
「いいところに来たっ。
お前なら、たぶん大丈夫だっ。
あやかしより、化け化けっぽいからっ。
お前を一日店長に命じよう。
冨樫っ」
と倫太郎が振り向くと、察しのいい冨樫はおもちゃコーナーの隅にあった小さな飴つきのタスキを持ってきた。
一日店長と書いてある。
まさか、こんなときのために用意してたんじゃないだろうな……と思ったが、たまたまだろう。
たくさんあるタスキのうちのひとつのようだから。
一日宴会部長、とかもあるな。
二日に渡る宴会部長とかあるのだろうか……と思ったとき、なんだかわからないままタスキをかけられた斑目が言った。
「何処に行くのか知らないが、牡蠣焼いとくから早く帰ってこいよ」
「すまないな、ありがとう。
ところで、お前のヘリを貸せ」
「……あの、もう斑目さんに行っていただいた方が早いんじゃないですかね?」
いろいろ斑目に要求する倫太郎に、壱花はそう呟いた。