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にゃーにゃ
お店を出て佐久間くんの家まで送り届ける。
車の中ではさっきまでの雰囲気を払拭するように、何でもない話で盛り上げてくれた。
佐久間くんのマンションの前。目立たないところにこっそり停める。
「今日はありがとな、蓮。ご飯も美味しかったし、また行こうな!」
「うん、そうだね。こっちこそ、一緒に来てくれてありがとう」
「じゃあ、またな」
「…ねえ、佐久間くん。俺で良かったら話聞くから。また何か吐き出したくなったら呼んでよ。どんなことでもいいよ」
「迷惑、だろ」
「そんなことない。佐久間くんが悲しそうな方が嫌だよ、俺。佐久間くんは俺に元気をくれる人だから」
じっと俺の顔を見上げていた佐久間くんが、少し泣きそうな顔で微笑んだ。その笑顔がすごく儚くて綺麗で、出来ることならその場で抱きしめてしまいたかった。
「…ありがとう、蓮。そう言ってくれるの、すげぇ嬉しい」
「ずっと佐久間くんに助けられてきたのは、本当だから」
「うん…蓮がいてくれて良かった…」
最後にふわりと笑って、佐久間くんは車を降りる。ドアを閉めた後に運転席側に回って、手を振ってくれた。
佐久間くんの声を直接聞きたくて窓を開ける。
「今日は本当にありがとな。おやすみ、蓮。気を付けて帰れよ」
「うん、ありがとう。おやすみなさい」
振り返って手を振りながらエントランスに入っていく姿を見送る。その姿が無事に中に入ったのを確認して、ほっと息を吐いた。
同時に、どこか張り詰めていた気持ちも緩んでいく。
ハンドルに顔を伏せて目を閉じた。
俺だったら、あんな顔させないのに。
真綿で包むみたいに大事にして絶対に離さない。惜しみない愛情を常に注ぎ続けるのに。
俺のこと、好きになってくれないかな。
いっそあの人の代わりでもいいから。
ねえ佐久間くん。大好きだよ。
佐久間くんが自分を嫌いでも、その分俺が佐久間くんを愛すから。
だから、少しでいい。俺のことも見てくれないかな。
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