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にゃーにゃ
その日から佐久間くんとご飯を食べに行ったり、どちらかの家で飲んだりする回数が増えた。
佐久間くんは変わらずあの人が好きで、寂しそうな笑顔で「嬉しそうに相手の話をされるの、結構きついよな」と呟いていた。
そうだね。その気持ち、痛いほど分かるよ。
一緒にご飯を食べに行った帰り道、俺がお酒を飲めるように今日は佐久間くんが車を出してくれた。
「いつも俺の愚痴に付き合わせてごめんな。迷惑だったらちゃんと言えよ?」
「俺なら大丈夫。佐久間くんが元気がない方が心配」
なんて、そんなの嘘。大丈夫なわけない。
それでも佐久間くんの恋の話を聞き続けてるのは、ただ側にいたいから。
その気持ちごと全部、佐久間くんが好きだからだよ。
そんな想いを上手に隠して、佐久間くんの話を聞いてる。
「俺さ、いつもそうなんだよな。俺が一番好きな人は、俺のこと好きになってくれない。何でかなぁ…」
「きっとまだ、出会ってないだけだよ。佐久間くんを一番に想ってくれる人は絶対いると思う」
「…そうなのかな。いつか、そんな日が来たりすんのかな」
「佐久間くんが幸せになれないなんて、そんなの有り得ないから」
「ふはっ、さすがにそれは言い過ぎだって」
佐久間くんはそう言って笑うけど、絶対有り得ないよ。
だって、こんなに佐久間くんの幸せを願ってるやつがここにいるんだから。
そんな話をしてると、不意に佐久間くんが思い出したように口を開く。
「そういえば、蓮の好きな人ってどうなったんだ? 告白とかしないのか?」
「…しないかな。望みがないの分かってるから」
「蓮が? 国宝級イケメンだぞ?」
「顔は関係ないよ。その人はちゃんと、相手の中身を見ることが出来る人だから」
「…そっか…蓮の好きな人って、どんな人?」
「そうだな…可愛い人。でも気持ちは男前ですごく強い。あと、優しくて…優しすぎて損をする人、かな」
「ふぅん…そう、なんだ…」
そう呟いたきり、佐久間くんが黙り込む。
何かまずいこと言ったかな。それが佐久間くんだってバレるようなことは言ってないつもりだけど。
心配になって信号待ちの時に佐久間くんの顔を覗き込む。
目が合って、佐久間くんがはっとしたように顔を上げた。その頬が少し赤い。
びっくりさせちゃったかな。
「あ、ご、ごめん。ちょっと考え事してた」
「謝らなくていいけど。大丈夫? 疲れてる?」
「ち、違うよ、大丈夫。ただ、その…その人のことを話してる蓮の顔がすごく優しかったから…びっくりして」
「え、そうだった?」
自分では意識してなかったけど、そんな顔してたのか。
思わず自分の頬を触る。
「してたよ。だから、さ…その人は自分がどれだけもったいないことをしてるか、それすら知らないんだなって思ったらさ…」
そこまで言って、佐久間くんは困ったような顔で「こんなこと言ってごめんな」と言って笑った。
その佐久間くんが言う『もったいないこと』をしてるのは、佐久間くんだよ。
そんな風に言えたら楽なのかもしれない。けど、言えない。
失恋の辛さを知っている佐久間くんに告白なんてしたら、俺が悲しむことを考えちゃって断れないかもしれない。
そこにつけ込むのも有りなんだろうけど、佐久間くんに自分の気持ちを曲げて欲しくない。無理をする佐久間くんを、俺が見たくない。
「…そんな風に言ってくれてありがとう。でも、好きだから言えないんだ」
「好きだから、かぁ…」
「うん、佐久間くんと同じかな。好きだから困らせたくないし、迷惑になりたくない。だから、言えない」
「…そんなに蓮に想われて、その人は幸せだな」
そういってふわりと微笑んだ佐久間くんの表情が悲しそうで。もしかしたら自分と重ねてるのかもしれない。
そんな顔、俺だったらさせないのに。
好きだって言いたい。けど、言えない。
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届かない想いの描写が好きすぎて…また読み返してしまいました…続きが楽しみです(ㆆᴗㆆ)♡