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話終わった後、数分の沈黙が私たちの間に通り抜けた。
二人の顔を見るのが怖かった。おそるおそる顔を上げて二人を見ると、泣いていた。
「そ、そんな事があったんだね。ごめんね…私達三人が辛い時側に居られなくて……」
私達が話したことを全部信じてくれて、涙まで流してくれた。
歩夢と、蓮と、目を合わせて安心した。どんなことがあっても私たちは信頼されているんだと実感がわいた。
「ありがとう…そんな辛いこと話すの勇気がいったよね、話してくれてありがとう。私達で良ければなんでも力になるから!!」
「「本当にありがとう。私達の話を信じてくれて。」」
感謝しかなかった。
五人が揃ったところで、情報交換をすることにした。まず、昨日のあの一件があった以外にあのようなことは島では起きていないということ。死暗神社から赤い煙が出ていると言う通報があったこと。島の警察が見に行ったがその人はその日から行方知れずとなっている。
まだ不思議なことはある。お父さんとお母さんが居なくなった事、警官が行方知れずになった事、お父さんたちが吸い込まれたあの黒い物体の事、赤い煙のこと、私と歩夢が見たあの爆発の事。深い謎に包まれていくばかりだった。
五人で頭を抱えて悩んだ。そしたら急に蓮が
「三人も大人が消えてるって事だよな? そうしたら島以外の警察が来てもおかしくない。何故いまだに来ない?」
四人とも確かにと言い深く頷いた。
そうだ、警察は何故いまだに来ないのか。それが五人とも気になり今回はそのことを調べに行くことにした。
今日はもう暗いのでこのくらいで解散した。明日に体力を温存しなければ。
明日午前八時に高校前集合だ。私も少しでも睡眠とって体力つけないと。
少しでも寝られるように私は眠りについた。明日は、何もありませんように。そう願いながら。
「おーーーーーーきーーーーーーーろーーーーーーー」
耳元で蓮の声が響く。うるさ!! なんで、こんなイラつく起こし方するんだ。
「おーーーー……」
「もういいよ‼︎ 起きたよ‼︎ どうも‼︎」
あーーーーーーーもう‼︎ 本当に朝から嫌な気分になった。いい加減にしてほしい。
でも、気が紛れた……蓮も気を遣ってくれたんだろうなと思って今日は見逃してやる。
私が少し不機嫌な顔つきでリビングに下りた。
「超不機嫌な顔www」
「笑い事じゃない! ほんとこの人どうにかしてよ!!」
「まあまあ、いいじゃないか、兄妹仲良しで何より!」
「そうそう!」
「あんたが開き直るな‼︎」
「ほらほら、着替えて身支度してきな、行く時間なるよ〜」
だんだん歩夢が彼氏と言うより、お母さんになってきた。これは喜んでいいのか……
歩夢の言う通りに洗面所で身支度を整えて、蓮が作ってくれた朝ごはんを食べて三人で一緒に家を出た。
十分前くらいに高校の前に到着した。愛菜と真里も少し遅れて到着した。
どんなことがあっても、なにがあっても、もう、覚悟を決めた。
まずは、島の交番に行く事にした。高校から十分程度のところにポツンと立っている。昔からある交番なので古びていて少しかび臭い……。島の警察の人は、多くて三人だ。住民が多くないこの島では警察がする仕事は少なかった。だからなのか年々と警察が島を離れて行ったのだ。
私達はその古びた交番に入った。
「こんにちはーー」
歩夢が声を上げると、奥から一人の男の人が出て来た。
「おお! 佐原のところの坊主じゃねぇか! 大きくなったなぁ」
「翠くん⁉︎ ええ! 島に戻って来てたのかよ!」
「おう! 久しぶり!」
「久しぶりすぎるよ! 小5以来じゃん⁉︎」
歩夢が驚いて翠くんと叫んでいるこの人は、歩夢のお父さんの親友だ。警察を目指すと言って高校に上がるときに東京に上京したのだが。それから音信不通だった。
「なんで島に?」
「ああ、急にこっちに帰りたくなってさ、で、丁度その時にこっちに転勤の話が来たってわけ」
「超偶然だねw」
偶然? 偶然にしても色々と重なりすぎてる……。なにかおかしいよ。
「で、歩夢は友達引き連れて交番になんのようかしらぁ?」
「あ、そうだ。聞きたいことがあって来たんだよ」
「ん〜? どしたん? 強盗か‼︎」
「違う違うw あのさぁ、この前ここの警察が一人死暗神社に調査に行ったところ行方不明になった件なんだけど……」
「ん? ここの警察はみんないるよ?」
「「え」」
え? そんなはずがない……だって、島であんなに噂になった。死暗神社から赤い煙が上がっているって言う通報があって、一人島の警察が行ったところ、その人はその日から行方知れずとなっているはずだ……。
「そんなはず無いです! たしかにここの警察のはずです‼︎ ちゃんと調べてみて下さい‼︎ お願いします……」
「んー それは構わないけど。前からここの交番では一人足りないって言われていたから、俺が来たんだけど〜」
なんで……島ではちゃんと三人いたはずだ。人が足りないなんてそんなこと聞いたこともない…。
翠くんが奥からパソコンを持って来て何かを調べてくれる。
「ん〜 うん。ないよ。今いるのは先輩二人と昨日派遣された俺だけだねぇ」
みんながものすごく不思議な顔をする。なぜ? なんで? たしかにみんな聞いた話だ。
たった二日で忘れられる? あの一件と関係があるのだろうか……。
わからない…何一つ繋がらない。このままじゃ前に進めないよ…どうすれば…。
「本当にいないんですか?」
蓮が心底不思議そうに翠くんに聞いた。
愛菜と真里も恐怖で引きつった顔をしていた。無理もない、一人の人間が知っている人達の記憶から忽然と姿を消した…。そんなことあるはずがない…あってはならないことだ。
「何回聞いてもいないもんはいないんだぞ〜 夢でも見ていたんじゃないのか?」
「そうですか! 忙しい所すみませんでした。ありがとうございました。失礼します。ほら、みんな行こ」
「え、ちょ、蓮。」
「すまんなー」
蓮が強引にみんなを交番から出させた。
「ちょっと! 蓮! なんであそこで引いちゃうの‼︎ 信じられない‼︎ なんか隠していたらどうするの⁇」
「羽沙、少し落ち着こ?ね?」
「真里が、言うなら…ごめん…」
「蓮、なにか思いついたのか? 俺も翠くんが嘘をついているようには見えなかった」
「うん。翠くんはなにも嘘はついていない」
「でも…。島の警察が消えたのは事実でしょ? なのに…存在しないなんて… おかしいよね」
「愛菜の言う通り、島の警察が一人消えたのは事実だ。でも、その事実を知っている人が一人もいない…、これも事実だ。誰に聞いても返ってくる言葉は同じだ。それなら、先に他のこと調べた方がいいかもしれない」
「で、でも。お父さん達以外にも消えた人がいたから、それを調べたらお父さん達にたどり着くかもしれないって…」
「うん、最初はそう思った。でも、その人を探れない以上何しても意味がないんだ。とにかく、もう一回考えよう。」
「そうだな、もう一度考えよう。それが今最善かもしれない。」
「「うん」」
蓮の言葉にみな同意した。
私もちゃんと、わかっている…だけど、また手がかりから離れたしまった気分だ。どうしてもわからない難関の迷路をやっているかのように拗れていく。
五人で歩いて図書館に行き作戦を立て直す。
蓮と、愛菜でコンビニに腹の足しになるものを買いに行った。歩夢と、真里と、私で今までのことを紙にまとめる。
「これまでもことを考えると…、遠回りして考えるのはやめよう。まず羽沙達のお父さん達が消えた。これだ。まずこの件を調べないとなにも始まらない気がする…。」
「そうだよね、まずそこをしっかり確かめないといけないよね。なんであの日色々と重なり羽沙達の家だけが停電になったのか、羽沙のお母さん達を飲み込んだあの黒い物体は何だったのか。そこを探さなきゃだよね! それで大丈夫?羽沙」
「うん! 大丈夫だよ。そうなったら二人にも伝えなきゃだね!」
「羽沙、本当に大丈夫? あれ以来寝れてる?」
「歩夢も真里も心配性だなぁ、私は大丈夫だよ! 絶対に見つけようね!手がかり!」
「うん!見つけよう!」
歩夢と真里は勘がいい、すぐに考えてることがバレてしまう。
二人には大丈夫と言ったが、やっぱり、大丈夫なんかじゃない。凄く怖い。事実を知るのが怖い。
どんなことがあろうと前に進もうと決心したけど。不安ばかりが積もっていく。
「お待たせー」
「お、おかえ…、え、どしたん?w ずぶ濡れじゃんw」
「うん……。海に落ちた。」
「何で?w」
「私を助けようとしてくれて…、蓮、本当にごめん…」
「別にいいよ、愛菜は悪くないから」
愛菜が足を滑らせて、それを助けようとして変わりに蓮が落ちたみたいだ。
「そんなんじゃこれから色々調べられないじゃん」
「そうなんだよねーどうしよ」
「でももう夕方だし、みんなでまとめて明日にしない? 蓮も早く着替えないと風邪引くかもだ
し」
「そうだね! とりあえずまとめて今日は解散しよ!」
「「オッケー」」
「真里と歩夢とまとめたことをまず話すね。結局遠回りに調べても、私達が本当に調べたい所に
は行けない。だから、最初から蓮と私の親が消えた件を調べようということになったんだけど
二人はどう思う?」
「俺は大丈夫だよ。そこを最初から調べていけばよかったかもな」
「うん、私も大丈夫」
「よし! だったら、明日今日と同じ場所で同じ時間に集合な!」
「「うん!」」
図書館で話がまとまって。解散した。蓮と歩夢と一緒に家に帰る。
帰り道歩きながらふと思った。一人の警察が消えたことはみんな覚えていなかった。だったら、私達のお父さんお母さんが消えたことも忘れられているのだろうか?
そのことが気になってしょうがない。
「歩夢!蓮!」
「ん? どした羽沙」
「あのさ、ちょっと気になることがあってさ、寄りたいところがあるんだけど。いいかな?」
「大丈夫だよ。気になることって?」
「あの、今日交番に行って、警察が消えた事みんな覚えていなかったでしょ? だったら、お父
さん達が消えたことも忘れられているのかなって…思って…。」
「……俺も、気になってた…」
私が気になることを言うと、さらに気になり始めて。私が寄る予定の所に三人で向かった。
お父さん達がきえたことで、私と蓮と同じように悲しんだ人がいる。おばあちゃんとおじいちゃんだ。お父さんの方の祖父母は東京にいるが、お母さんの方の祖父母はいる。
あの日最初に話しを耳にして、すぐに来てくれた。それ以来私達も会っていない。
だから、一番覚えているはずの人の元に行って確認したい。忘れないでほしい。忘れてほしくない。考えているうちに、家の前についた。
ピンポーン__
インターホンを鳴らす。奥から足音と、優しい声が聞こえてくる。
「はーい、どちらさまぁ」
「おばあちゃん、こんばんは。急にごめんね」
「あらあら、どうしたの?こんな時間に」
「ちょっと、おばあちゃんとおじいちゃんに聞きたいことがあって来たの」
「とりあえず、上がんなさい」
「お邪魔します」
おばあちゃんは少し不思議そうな顔をしたが、笑顔で中に入れてくれた。
三人で居間の方に案内されて、ソファに腰をかけた。おばあちゃんが台所からぶどうジュースを持って来てくれた。小さい頃毎回おばあちゃんの家に行くと冷たく冷え切ったブドウジュースを出してくれたのを思い出した。おばあちゃん達の家にいると我が家にいるみたいで凄く落ち着く。
「それで、話ってなんだい?」
「その、お母さん達の事なんだけど…、」
「陽沙と真人さんの事? まだ警察から連絡が無いんだよ。私達も頼み込んでいるんだけどね」
おばあちゃんのその言葉を聞いて。物凄く安心した。おばあちゃん達はお母さんのことを、お父さんのことを、忘れてはいなかった。
本当に…、よかった…。
昨日までの疲れが出たのか、おばあちゃんの言葉を聞いて力が抜けたのか。そのまま気絶するかのように眠りについた。
また、映像が私の頭の中に飛び込んできた。
目の前に広がったその映像は、昔歩夢の家族とよく遊んでいた野原だった。私がみている先には幼い私と、蓮と、歩夢の姿があった。三人で花冠を作ってる。懐かしい。この広場も。何もかもが懐かしく感じる。
『は……さ…』
奇妙な声が耳に入って来た。幼い私も死暗神社の方に目を向けている。『だれか私の名前を呼んだ?』幼い私が言った言葉に反応するかのように奇妙な声がまた返ってきた。
『みん…な…いな…なっちゃ……えば…いい…のに……ねぇ?』
不思議なその言葉。聞き覚えのある言葉。そう、それは私が昔死暗神社に言ったお願い事だ。
幼い私がなにか言っている。でも、それを聞く暇もなく映像はまたぶつんと切れた。
目を覚ましたら見覚えのある天井だった。体を起こすとおばあちゃんの家のソファだった。
ああ、私あのまま寝ちゃったんだ。外はもう暗くなっている。時間を見ると夜中の二時だった。床には布団を引いて、蓮と歩夢が寝ていた。二人も疲れていたのだろう。
お手洗いに行きたくなって、居間から出る。
お手洗いを済ませた後、手を洗って鏡を見たときだった。
鏡を見つめていたら、鏡の中の私が笑った。びっくりして思わず尻もちをついてしまった。
おそるおそるもう一回鏡を見たら。
『はぁ〜さ!』
「え……」
『こんばんは♪』
鏡の中の私が喋ってる……。恐怖どころか、驚きすぎて言葉が一瞬出てこなかった。
「あなたは…だれなの…」
『私? ふふ、だぁれでしょっ!』
意外と私も鏡の中の私が喋っている割に冷静だった。なぜか、前にも会ったようなそんな感覚。
不思議だ。私が動くと鏡の私も動く。これは普通だ。だけど、鏡の私も意思疎通が可能だ。興味津々でもっと喋っていたくなった。
「あなたは、私なの?」
『ふふ 私はあなた。あなたは私』
私は私と喋っている。
不思議な感覚に、不思議な感情に包まれた夜だった。