タクトの剣がリリスの魔力の防御を打破した瞬間、彼女の身体がまるで豆腐のように崩れ始めた。リリスの体はひとたび魔力を失うと、まるで水に浸けられたかのようにふやけて、細かく散り散りになっていく。
その瞬間、タクトはただ呆然とその光景を見守った。リリスの体が溶けるように消えていく中で、かつての強大な存在感はもはや跡形もなく、ただ無力で、脆弱なものに過ぎなかった。
「これで、終わりか…」タクトは自分の手に握る剣を見つめながら、心の中で呟く。リリスの魔力が消え、彼女の姿が完全に崩れ去った。だが、彼女の顔が薄く浮かんでいるような錯覚に襲われ、タクトはまだ心の中で引き裂かれている感覚に苛まれた。
その時、背後から足音が聞こえた。タクトはすぐに振り返り、そこに立っていたのは――。
「遅かったな。」マデスの声が響く。彼の姿は堂々としており、その表情は冷徹に見えた。しかし、目の前のリリスの崩壊を目撃したことで、その表情に微かな驚きが浮かんでいた。
「マデス…お前が…ここに…?」タクトは目の前の状況を受け入れることができず、息を呑む。「リリスがこんなに脆かったなんて…」
「そうだ。」マデスは淡々と答える。「だが、リリスがいなくなったわけではない。彼女の力を引き継ぐ者が、今ここにいる。」
タクトはその言葉に疑問を抱いた。リリスの身体が崩れ去っているにも関わらず、マデスが何を意味しているのかが全く理解できなかった。
「俺がリリスを倒した。全てが終わったと思ったんだが…」タクトの言葉は途切れ、思考が混乱する。
マデスはその答えを待っていたかのように言った。「リリスは、ただの駒に過ぎない。彼女を使役する者がいる。お前たちが倒すべきは、リリスの本当の支配者だ。」
その瞬間、タクトは心の中で感じていた不安が増していくのを感じた。「本当の支配者…?」
「リリスの力を借りて、世界を変えようとした者がいる。」マデスは冷静に話しながら、リリスが崩れた場所をじっと見つめる。「今、彼女はただの破片に過ぎない。だが、彼女を完全に消し去るには、もう少し時間がかかる。」
タクトは目の前の状況が理解できなかった。リリスがどれほど強力で危険な存在であっても、崩れた今、それに対抗する力が残っているのだろうか?
だが、その答えを出す間もなく、マデスは続けた。「今は、ここに来るべきではなかったのだ。だが、リリスが崩れたことに意味があるとすれば…それは、私が力を得るための準備が整ったということだ。」
タクトはマデスの言葉を無視するように、リリスの崩れた姿に再び目を向けた。彼女の存在は確かにもうなく、まるで過去の幻のように消えていった。しかし、マデスが何かを企んでいることは確かだった。
「リリスが消えたところで、俺たちの戦いは終わらない。」タクトは心の中でそう決意を固めた。「だが、これでマデスの真意を暴かなければ、何も変わらない。」
その時、マデスが突然歩き出し、タクトに向かってゆっくりと近づいてきた。「お前が立ち上がっても、何も変わらない。リリスの力を引き継いだ者を倒すには、もっと強力な力が必要だ。」
タクトはその言葉に耳を傾け、次に何が起きるのかを感じ取ろうとした。だが、マデスの言葉通り、まだ戦いは終わっていなかった。何か、大きな力が背後に潜んでいることを確信した。
「お前もリリスのように崩れるだけだ。」タクトは剣を握り直し、マデスに向けて再び進み出した。その目に、決して退かないという強い意志が込められていた。
だが、マデスはその目をじっと見つめ、冷ややかに笑った。「やれるものなら、やってみろ。だが、お前の力ではまだ足りない。」
そして、次の瞬間、マデスの姿が消え、東京の夜空に一筋の光が走る。タクトはその瞬間、すべてが新たな戦いの始まりに過ぎないことを悟った。
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